真の聖女である私はトレジャーハンターになりました6
そして、日数が経過し──。
とうとう、私たち『真のトレジャーハンター団』は、伝説のお宝がある無人島に足を踏み入れました。
「草木しか生えていないような島だな。本当にこんなところに、お宝があるのか?」
周りをキョロキョロと見渡しながら、ドグラスが口にします。
「うん。宝の地図によると、この場所で間違いないみたいだ。もっとも、お宝がある島の位置しか書かれてないから、この島のどこにあるのかは分からないけどね」
「手分けをして、探しましょう。そんなに広くない島ですから、さほど時間はかからないはずです」
ナイジェルと私は、ドグラスにそう言葉を返します。
「じゃあ、わたしはあっちを探してみるわ。見つからなくても、夜になったら船の前に集合ね」
「ま、待ってくれ、レティシア! ボクも行く。ボクを置いてかないでくれ!」
レティシアはそそくさと草むらの方へと歩き出し、クロードが慌ててその後を追いかけます。
「では、私たちはレティシアたちとは逆の方向を調べてみましょうか。少々、時間がかかりそうですが──」
「なにを悠長なことを言っておる」
最後まで言い終わるより早く、ドグラスが腕を組んで不遜な態度で、こう告げます。
「我が空から探せば、早いだろう。エリアーヌたちは、そこで休んでいろ」
「……? 空から?」
首を傾げるバロックさん。
「なにを言ってんだ。どうやって、空を飛ぶつもりで……」
「決まっている」
ドグラスがそう言うと、体から光が漏れ、徐々にその姿を変貌させていきます。
そして──あっという間にドラゴンの姿となり、大空に飛び立っていきました。
「ド、ドラゴン!? どういうことだ!? 有り得ないくらい強いとは思っていたが、どうしてドラゴンに……」
「まあまあ、細かいことはいいじゃないか」
「これは細かいことなのか!? こうして付いてこさせてもらっている立場だが、あんたらには謎が多すぎる!」
朗らかな態度で口を動かすナイジェルに、バロックさんが慌てた声でツッコミを入れます。
「ドグラスが空から探してくれるなら、私たちの出番はないかもしれませんね。ですが──船の中で休んでいるのもドグラスとレティシアたちに悪いですし、私たちは私たちでお宝を探してみましょう」
「賛成なのー!」
とセシリーちゃんが元気よく右手を挙げました。
こうして、私とナイジェル。セシリーちゃんとフィリップ。バロックさんの五人で、島の中を探索することになりました。
「バロック……と言ったな。詳しくは聞いてこなかったが、君たちの間では伝説のお宝はどう伝わっている? 俺たちが知らない情報を知っているんじゃないのか」
歩きながら、フィリップがバロックさんにそう質問します。
「いや……あんたらと、ほとんど同じだと思うぜ。お宝がある島の位置は知ってるが……島のどこにあるかまでは知らない。ほかに、なにも知らないんだ」
うーん、残念。
期待はしていなかったですが、バロックさんが新情報を知っていたなら、すぐに伝説のお宝を見つけることも出来たでしょうに。
ドグラスも空から探しているとはいえ、簡単には発見出来ないはずですしね。
「確か君たちの島に代々、お宝の伝説が言い伝えられていたんだよね?」
次に、バロックさんにそう質問するのはナイジェル。
「ああ、そうだ。とはいっても、オレがそのことを知ったのは、つい最近のことだがな。そうじゃなかったら、もっと早くに探しに出かけている」
「不思議な島だね。どうして、君たちの間では言い伝えられていたんだろう? 僕たちは……特殊な立場だから、別だとして」
「さあな。分からねえよ。そんなことより、あんたらの『特殊な立場』って方が気になるけどな。まあ、聞いても教えてくれそうにないから、問い詰めたりはしないけどよ」
ぶっきらぼうな口調で、バロックさんが答えます。
「そういえば、君の住んでいる島の名前を聞いていなかったね。なんていう島なんだい?」
「オトノネ島だ。海に囲まれた島だが、裏を返せばそれしかねえ。少しでも不漁になったら、食べるもんにも困るような……な」
声に悲壮感を滲ませて、バロックさんが口にします。
「オトノネ……島……」
フィリップはなにか引っかかったのか、バロックさんから聞いた島の名前を反芻して、意味深な表情を作ります。
「フィリップ? どうかされましたか?」
「いや……どこかで聞いたことのあるような名だと思っただけだ。とはいえ、エリアーヌたちが来るまで、村の外にはほとんど出なかったしな。きっと聞き違いだろう」
フィリップは首を横に振って、考えを打ち切りました。
……?
一体なんでしょう。
特に気にする必要もないかもしれませんが、フィリップの表情を見ていると、妙な引っかかりを覚えました。
──私たちは草木をかき分けて、島の奥へ奥へと進んでいきます。
どこまで行っても自然しかなくて、お宝らしきものの気配すら感じません。
このまま、見つからないでは?
そもそも、やはり別の誰かがすでにお宝を取ってしまったんじゃ?
じわじわと不安が湧いてきていると──。
「……っ!」
異変に気付き、咄嗟に身構えるナイジェル。
「地震だ! みんな、伏せて!」
ゴゴゴ……!
地鳴りを立てて、大地が震えます。
突然の出来事に戸惑います。
そして、それは私だけではなく──。
「きゃっ! なの!」
「セシリーちゃん!」
セシリーちゃんがバランスを崩し、転倒してしまいそうになります。
私とナイジェル、フィリップはすぐに彼女の元に駆け寄ろうとしますが、ここからでは間に合わないくらいの距離感。
そのまま、セシリーちゃんが地面に倒れていく様が、やけにゆっくりと見え──。
「おっと」
──ですが、その瞬間。セシリーちゃんの近くにいたバロックさんが、彼女の体を咄嗟に支えてくれました。
「あ、ありがとうなの」
「別に礼なんて必要ない。お前は子どもなんだ。子どもを守るのは、オレたち大人の役割だしな」
そう言って、バロックさんはセシリーちゃんの頭を撫でます。
無造作な手つきでしたが、心地いい感触なのでしょうか、セシリーちゃんは気持ちよさそうに目を細めます。
いつの間にか地震も収まっていました。
「バロックさん、私からもお礼を言わせてください。ありがとうございました」
「いいってことよ」
「それにしても……子どもの扱いに手慣れているんですね。もしかして、お子さんがいたり?」
「ん……ああ。娘が一人……な。まあ、それはいいじゃねえか。お宝探しを再開しようぜ」
これ以上問い詰められるのも嫌なのか、バロックさんは強引に話を打ち切り、島の奥へと歩き出します。
子どもを置いて、お宝探しに来ているというのでしょうか?
だったら、バロックさんのお子さんは今頃、お父さんがいなくなって寂しがっているのでは?
……いえ、詮索はいけませんね。
人には人の都合があります。
バロックさんが喋りたくないなら、私がそれを探るのは行儀がよろしくないでしょうから。
──そして、日も暮れ始めた頃。
その一報は念話によって、ドグラスからもたされました。
『宝を見つけたぞ』





