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真の聖女である私はトレジャーハンターになりました1

コミカライズ10巻が、本日発売となりました!

これはその記念の番外編です。


話の時系列としては、【原作四巻〜五巻の間】。

【WEBだと「167・私の理想の王子様」〜「168・黒白の花嫁」の間の話】になります。

原作四巻、または167話まで本編を見られていない方はネタバレを少し含みますので、ご注意くださいませ。

「どうして我がこんなことを……」


 王城の宝物庫。

 ドグラスがぶつぶつと文句を呟きながら、持っていた箒をクルクルと回します。


「ダメですよ、ドグラス」


 そんな彼に苦笑して、私はこう続けます。


「みなさんも頑張っているのに、私たちだけがサボるわけにはいきません」

「だが……」

「だが──ではありません。それに掃除って、楽しくありませんか? 心が洗われるようといいますか……」

「我はそう思わん」


 断定するドグラス。

 不満そうな彼の顔を見ていると、おかしな気持ちが込み上げてきました。



 ──今日は、王城の大掃除の日。



 みんなで手分けをして、王城中を掃除しているのです。


 とはいえ、それも主に使用人の方々の間での話。

 本来なら王太子妃である私や、ドラゴンのドグラスが大掃除を手伝う必要はないのですが……だからといって、なにもせずにじっとしているのも私の性に合いません。


 私は宝物庫を掃除することになりましたが、重いものも多く、一人でやるには労力がかかりすぎます。

 そこで、ドグラスにも手伝ってもらうことになりましたが……ドグラスは先ほどから文句ばかりで、ろくに手を動かしていません。


「ドグラスがそんなことを言うなら、私一人でやります。ドグラスは休んでおいてください」

「待て、どうしてそういう話になる。ねるな」

「拗ねていません」

「そもそも、汝一人では危ないからと我も付き添っているのではないか。掃除には不満があるが、それとこれとはまた別の話だ」


 むーっ。

 文句の多いドラゴンです。


「いいんです。まあ、見ていてください。これでも私、ベルカイムで聖女をしていた頃は、力仕事もやらされていたんですから」


 そう言いながら、私はいろいろなものが山のように積み重なった一箇所の前で足を止めます。

 ……これらも、全部貴重なもののはずなんだけれど、どうしてこんなに扱いが雑なんでしょうか?

 理解に苦しみます。 


「これくらい私一人でも──」


 まずは手前にあった本を山から引き抜こうとしました。

 でも──それが間違いでした。


「おい、エリアーヌ──」


 ドグラスの呼ぶ声。


 本を引き抜くと──宝の山が、音を立ててガラガラと崩れ去ります。

 すぐさま、その場から離れようとしましたが、そんな私の頭に大きな壺が落下してきます。


 為す術なく、大きな壺は私の頭に直撃し──。


「おっと」


 ──しかし、その瞬間。

 あわや大惨事になる寸前で、ドグラスが片手で壺を受け止めてくれました。


「だから言っただろうに。危ないと」

「あ、ありがとうございます」


 お礼を述べる。


 ……いけない、いけない。

 私も意気地になっていたみたい。

 結局ドグラスの力を借りることになってしまいましたし、心の中で反省です。


「どうやら、一つ一つが絶妙なバランスを保っていたようですね。そうしているうちに、誰も動かせずにいて、山のように積み重なっていたわけですか」

「そうみたいだな。まあ、今となっては崩れてしまったし、ある意味では整理がしやすく──ん……?」


 反省していると、ドグラスはあるものに気が付きます。


「おい、エリアーヌ。あれはなんだ?」

「あれ?」


 壺を床に下ろし、ドグラスが床を指差します。


 床に散らばっている──一見、ただのゴミにも見えますが──宝たち。


 ドグラスが指を刺した方には、一枚の紙切れが落ちていました。

 黄ばんでいて、いかにも年代物の紙という感じです。

 どうやら、いろいろなものが積み重ねっていた奥に、ひっそりと紛れ込んでいたみたいですね。


「ですが、ここには他にもっと高級なものがあります。わざわざ、それ一枚に目を付けるほどのことではない気がしますが……?」

「まあ、待て。これは我の勘だ。ここにあるどんなお宝より、これは貴重なものの気がするぞ。なになに……」


 そう言いながら、ドグラスは床に落ちている紙を拾って、それを広げました。

 私も彼の隣から、その紙を覗き見ます。


「地図……でしょうか? リンチギハムだけではなく、ベルカイムの地形も描かれています」

「かなり広範囲の地図のようだな。ん……エリアーヌ、ここを見てみろ。ぽつりとある『×』の印だ」


 ドグラスの言う通り、大陸から少し外れた──海の中に、赤字で『×』が刻まれていました。


 どういう意味があるのでしょうか?

 これではまるで──。


「お……埃が被っていて、すぐには気が付かなかったが、地図の余白になにかが書かれているぞ。なになに……」


 ドグラスがその一点を見つめて、こう口を動かします。


「宝の地図……?」




 ──この時の私は予想だにしていませんでした。


 これがきっかけとなって、あんな大冒険が始まるだなんて──。

松もくば先生による、コミカライズ10巻が発売中です!

とうとう10巻ですね。感慨深いです。

全国の書店、電子書籍などでお楽しみくださいませ。

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☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

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