280・勝利の剣はいつもここにあった
「エリアーヌ! ナイジェル!」
リンチギハムの地に足を着けると、真っ先にドグラスが駆け寄ってきました。
近くにはセシリーちゃんとラルフちゃん。さらにマリアさん率いる騎士団の方々も。
そして王都の中央に陣取るように、巨大な馬のような生き物が鎮座していました。
「なるほど……宰相っていう上級魔族は、これがあるからまだ勝てると思ってるんだね」
ナイジェルが謎の生き物を見上げ、そう声を零します。
「ドグラス、状況を教えてくれますか?」
「う、うむ。あれは魔獣ナイトメア。魔族達の秘密兵器だ。一度、我とラルフで倒したのだが……火の玉が現れたかと思うと、復活して……」
ドグラス、さらには周りの人達の表情。
ナイトメアから発せられる膨大な魔力から察するに、あれは魔王に次ぐ力の持ち主なのでしょう。
こうしている間にも、ナイトメアは待ってくれません。
炎弾が飛び、私達に被弾しようとします。
「あらあら、ちょっと暴れんぼのお馬さんみたいですね」
ですが、咄嗟に結界魔法を張り、ナイトメアの攻撃を防ぎました。
「さ、さすがだな、エリアーヌ。しかし……以前よりも力が増しているような?」
「そのことについては、あとで説明するとして──ナイジェル」
「うん」
ナイジェルが頷き、ナイトメアを見据えました。
「あれは僕が倒す。心配しないで」
「し、しかし……汝、剣はどうした? そんな状態で、どう戦うつもりなんだ」
とドグラスが震えた声を発します。
その声に気付き、周りの騎士も駆け寄ってきて、ナイジェルに剣を渡そうとします。
しかし彼は首を横に振って、
「悪いけど──いらない。神剣ならここにあるんだ」
と彼らを手で制しました。
「神剣……? あれは確か、魔王が復活した時に壊れたのでは──」
ドグラスが言い終わるのを待たず、ナイジェルは地面を蹴り、高く跳躍します。
「にぃに! 頑張って!」
『そなただけが頼りだ!』
セシリーちゃんとラルフちゃんも、必死に応援します。
それは周りの騎士達だって一緒。
みんな──手を組み、ナイジェルの勝利を願います。
「いくよ。おいで──神剣」
空中でナイジェルが天へ手を伸ばすや否や、雲の切れ目から巨大な剣が徐々に姿を現しました。
その剣は輝かしい光を放ち、街を照らします。温かくも力強い光です。
人々の心に勇気と希望がもたらされる──そんな感覚を抱きました。
「僕はみんなの理想の王子様から、みんなの理想の王となる。魔王から託された真の王──世界平和を実現するために、僕はみんなを守る!」
光り輝く剣──神剣を握りしめ、ナイトメアの頭上に力強く振り下ろします。
神剣の一閃に抗う術はなく、悲しい断末魔を響かせ、ナイトメアは討たれました。





