238・竜の騎士
「──────ッッッッッ!」
悲鳴を上げるアルター。
ドグラスは宙に浮いたまま、胸元を貫いていた巨尾の残骸に手を当てます。それだけで巨尾は消滅し、彼の体の傷も癒えていきました。
「ドグラス、その姿は……?」
ファーヴが震えた声で、ドグラスに問いかけます。
「ああ? 今の我の姿はいつもと違うのか? ここに鏡があったら、見ておきたかったな」
ドグラスは自分の両手を交互に見つめ、そう答えます。
竜と人が融合したような──。
その姿を見て、私はそんな感想を抱きます。
人間らしい姿を基盤にしながら、雄大なドラゴンを形取るかのようなフォルム。
ドグラスが軽く右手を上げると、そこに槍が顕現されます。
勇敢に前を向き、誰も後ろに進ませず、彼の背中からはみんなを守るという強い意志が伝わってきました。
──竜の騎士。
続けて、そんな言葉が頭に浮かびます。
「今なら誰にも負ける気がせん──行くぞ、ファーヴ。フィナーレだ」
「ああ」
ファーヴも呼応するように、双剣を構えます。
さすがのアルターも危機を感じ取ったのか。
身をくねらせ、その場から逃げようとします。
しかし。
「許しません!」
「……聖女よっ! 儂の邪魔をするなあああああああ!」
すかさず、私はアルターの周りに結界を張ります。
アルターは暴れ、結界をすぐに破壊。
だけどその一瞬の足止めは、勝利の一撃を放つまでには十分すぎる時間でした。
「アルターよ──汝は弱き者だった」
「儂が弱い……だと!? 減らず口は死んでから言ええええええええ!」
瞳に焦燥感の色を濃く滲ませ、アルターは黄金のブレスを吐きます。
怒りの一声と共に放たれた息は、今まで以上の威力のもの。
私が結界魔法で防ごうとすると──、
「いらぬ」
ドグラスはそれを手で制して、短く告げます。
彼はそのまま軽く槍を前に突き出しました。
大気を切り、脅威を滅する。
迫り来る黄金のブレスに風穴が空き、霧散して消滅します。
「まあ、力だけならまあまあだったと褒めてやろう。だが、それでは我の求める強き者には至らぬ」
ドグラスが攻撃の矛先をアルターに向け、流星が空を切るように突撃します。
その隣にはドグラスの友、ファーヴがいました。
ドグラスとファーヴはアルターの心臓部分を貫くように反対側に抜け、周囲にはアルターの断末魔が響きました。





