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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

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237・最後の勝つのはきっと正義だから

「これは──っ!?」


 アルターも異変に気付いたのか、驚愕の声を発します。

 その顔には、ここにきて初めて焦りの色が浮かんでいます。


「時の聖女の力が遠ざかっていく──っ。まさか貴様ら、時の聖女の力を封じる手段を見つけていたのか!?」

「ご名答です」


 勝利を確信し、私はアルターに微笑みました。


 立ち上った光はアルターに集結し、体を優しく包みます。

 そして光が消失した頃には、今まで彼が纏っていた『絶望』の空気もすっかりなくなっていました。


「成功か!?」


 ドグラスは大地に足を着け、ナイジェルを降ろしてから、人の姿に戻ります。


 アルターの不死身の力を封じた。

 これなら──。



「くっくっく……」

 


 堪えきれないといった感じで。

 アルターの口から、くぐもった笑い声が漏れていました。


「なんの準備もなしに、もう一度儂に挑むという愚かな真似はせんか。驚いた。儂がどれだけ探しても見つからなかった力の封印方法を、まさか貴様らが知り得ていたとは」


 ──精霊よ、貴様の入れ知恵か?

 そう言わんばかりに、アルターの巨大な瞳がフィリップを向きます。


「だが……それも時間の問題だ。おそらく、この島になにかを仕掛けたのだろう? いたるところから魔力の発生を感じる。それを潰せば、儂の不死身の力は蘇る」

「それを俺達が許すと思うか?」


 ファーヴが地面に着地し、剣を構えます。


 彼だけではありません。

 ナイジェルとドグラス、フィリップ──そして私も、アルターが変な動きをしないか、目を配ります。


「……一つ、貴様らが忘れていることがある」


 アルターの眼光が私達に降り注ぐ。


 それは見ているものを圧倒し、恐怖を抱かせるものでした。

「二百年前──儂は不死身の力を有していなかった。しかしそれでも、竜島を統治していた。どうして出来ていたか分かるか? 儂がどのドラゴンよりも強かったからだ」


 殺気が爆発し、アルターは告げる。



「不死身など不要っ! ここからは純粋な力で、貴様らを叩きのめしてやろう!」



 怒りの一声だけで、地面が震える。

 アルターの纏っている空気が様変わりします。

 賢者のような聡明さはなりを潜め、雄々しきドラゴンの獰猛さが顔を出しました。


「みんな、もうひと頑張りだ!」


 ナイジェルがみんなを鼓舞します。

 みなさんは一様に頷き、アルターに立ち向かっていきました。



「────ッ! ─────」



 声にもならない、悲鳴のような慟哭。

 なりふり構わなくなったアルターは時に巨尾を振り回し、時に黄金のブレスも吐き、私達を蹂躙しようとします。


「くっ……一筋縄ではいかぬようだ」


 ドグラスが戦いながら、声を上げます。



 不死身ではなくなったとはいえ、アルターの強大な力の前に、私達は完全に押されています。



 今度は私に焦りが生まれます。


 ──やっぱりダメなんですか?

 ──また私は間違ってしまった?


 すぐに考えを頭から振り払いますが、それで戦いに勝てるほど甘くはありません。


「ファーヴ! 危ない!」


 ファーヴの目の前に、アルターの振るった巨尾が迫ります。


 結界魔法を即座に張──いえ、間に合いません!? 結界は張る途中で壊され、巨尾はぐんぐんとファーヴに接近していきます。

 巨尾の先っぽは鋭く、死の予感を抱かせるものでした。


 当たる寸前──ファーヴの前に人影が現れます。



「ドグラス!」



 ドグラスが割って入り、アルターの巨尾を受け止めたのです。


 しかし両腕で巨尾を受け止めたわけではありません。

 巨尾は、ドグラスの胸元を貫いていました。


「ぐっ……!」


 ドグラスが血を吐き、苦悶の表情を浮かべるのが、地上からでも分かりました。


「ドグラス……っ! 俺をかばったのか!? そんなことをする必要なんてなかった! 死ぬのは俺で十分──」

「かばった? なにを言っている」


 ドグラスが顔をファーヴに向けます。


「これも我の計算通りだ。最後に勝つのは『正義』と相場が決まっているものでな」


 そう言って、次の瞬間、ドグラスは信じられないような行動に出ました。



 アルターの巨尾にドグラスが歯を突き立てたのです。



 巨尾から僅かな血が滴り落ちます。


「ふっ……どうしようもなくなって、原始的な攻撃か? バカか。そのような攻撃、儂にとったら虫に刺されたようなものだ」

「汝にとってはそうだろうな。しかし──()()()()()()()()()()ぞ」



『強力なドラゴンの血を直接体内に取り込む必要がある』



 リンチギハムを発つ前。

 ドグラスの体に流れるドラゴンとしての血が薄まっていることに気付き、ファーヴはそう告げました。


「まあ……本当に上手くいくかは、一種の賭けだったがな。一歩間違えればただでは済まん。だが、命懸けのギャンブルは、どうやら我に軍配が上がったようだ。汝の血は旨いぞ」


 ドグラスの体にアルターの濃密な血が流れ込むと、瞬く間に彼の周囲が眩い白光に包まれました。

 光は猛烈な速さでドグラスの体に浸透し、魔力の渦となって体内を駆け巡ります。


 そして光が落ち着き始めると、中から変貌したドグラスの姿が現れました。

 その姿は、彼の新たな力と存在を象徴するかのように──圧倒的なオーラを放っています。



「ほお……力がみなぎる。これが本来の我の力か」



 ドグラスはそう言って、手刀をアルターの巨尾に落とします。


 まるで柔らかい野菜に包丁を通すかのごとく、あっさりと巨尾は切断されました。

書籍6巻の発売が決定しました!

発売日は5/2(木)ごろになっています。ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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