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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

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229・光の聖女の力を借りて

 そして私達は急いでリンチギハムの王城に戻ってきました。


 さっきからバタバタです。

 だけど弱音を吐いてはいけません。

 刻一刻と、タイムリミットが近付いているのですから。


 だからこそ、私は()()を急いで探します。

 幸運にも、彼女はまだ中庭にいました。



「エリアーヌのお姉ちゃん?」



 彼女──セシリーちゃんが私達に駆け寄ってきて、首をかしげます。


 彼女の後ろにはラルフちゃんとアビーさんもいます。

 どうやら、ラルフちゃんの声を聞くため、特訓を続けていたようです。


「あっ、探してた人は見つかったんだね」

「ええ、おかげさまで」

「でも、どこかに行ってたんじゃ……? ドグラスに乗って、ここを出発するのを見てたの」


 目をクリクリさせます。

 愛らしい顔。

 彼女の顔を見ていると、つい抱きしめたくなってしまいます。


 しかし──彼女はただ可愛いだけではありません。二人目の聖女として、魔王を封じる一助となっているのです。



『しなければならないこと? もしかして、なにか事件なの? セシリーの助け、必要?』



 数時間前──私がドグラスと話をしようと、中庭に通りがかった時。

 セシリーちゃんは、私にそう言ってくれました。


 彼女を巻き込んではならない──そう考えた私は「私達で解決しますから」と、その申し出を断りました。

 でも一度目では、私達でシルヴィさんを救えず、アルターに敗北したのです。


 だから──。


「セシリーちゃん」


 彼女と視線の位置を合わせるため、私はその場にしゃがみます。


 私は生来、一人でものごとを解決しようとする悪い癖がありました。

 そのせいで、ナイジェルにご迷惑をかけたことも多々。

 もしかしたら、私もファーヴと似ているところがあるかもしれません。


 だけど──私は一人では無力。


 みんなの力を借りて、ようやく戦いの舞台に上がれるのです。


 迷いを振り切り、私はセシリーちゃんにこう頼みました。


「お願いします。あなたの力を貸してください」




 王城内には特別に設けられた宝物庫があります。

 その中心に鎮座するように──神剣は床に刺さっていました。


「僕がここに来るのは初めてだ」


 宝物庫に入るなり、ナイジェルが声を発します。


 神剣はナイジェルとの親和性が高い。

 だからこそ、魔王に体が乗っ取られてしまう可能性を考え、ナイジェルは宝物庫に近寄ろうとすらしなかったのです。


 しかし今回はそれを逆手さかてに取ります。


「もし、魔王に体を乗っ取られても、我が汝の目を覚まさせてやる」

「俺もその力になろう」


 ドグラスとファーヴも緊張感を募らせます。

 ファーヴは神剣を両手に顕現し、いつでも戦えるように構える。


「にぃに、心配する必要はないの。魔王なんて、セシリーとお姉ちゃんの二人で『めっ!』してあげるから!」

「うん、セシリーもありがとう」


 ナイジェルはセシリーちゃんを見て、柔らかく微笑みます。


 魔王に話を聞くため、一時的に封印を解く必要があることは、避けられません。

 そのためにまず、ナイジェルが神剣を握り、わざと魔王の魂をその体に降臨させます。


 しかしそれだけでは、ナイジェルが魔王に完全に乗っ取られてしまう可能性があります。なのでそうならないように、聖女の力で魔王の動きを制限しなければなりません。


 魔王の恐ろしさは、身をもって実感しています。

 私だけで十分──と過信出来ません。


 だから私は、二人目の聖女──セシリーちゃんの助けを借りることにしました。

 彼女の力は不十分ながら、光の力によって邪悪なものを浄化し、制御する力に秀でています。

 それは《白の蛇》の事件の際、セシリーちゃんは魔王を神剣に封じ込め、ナイジェルを救ったことからも分かります。


 そんな彼女と一緒なら、なにも怖いことはありません。


「じゃあ、いくよ」

「お願いします」


 私がそう答えると、ナイジェルは神剣の前に歩み寄りました。


「……っ」


 そして覚悟を決めて、神剣を引き抜きます。

 その瞬間──神剣から闇が発生し、ナイジェルの体にまとわりつく。


「く……っ!」


 ナイジェルの顔が苦痛で歪みます。


「セシリーちゃん!」

「分かったなの!」


 私とセシリーちゃんは手をかざし、ナイジェルに光の魔力の矛先を向けます。

 光と闇が衝突し、せめぎ合う──。


「強い……っ!」

「なの……」


 闇に押し込まれ、光がジリジリと後退。

 ナイジェルから這い出た闇は触手のような形となり、私達目がけて飛んできます。


 すぐに結界を張ろうとする──しかし。


「おっと」

「ここから先は行き止まりだ」


 ファーヴとドグラスが私達の前に立ち塞がり、闇の触手を払いました。


「魔王の残り滓なら、こんなものか──エリアーヌ、セシリー、これは魔王の力の片鱗が、漏れ出たものだ」

「こいつらは俺達に任せて、君達は闇を抑え込むのに集中してくれ」

「はい!」

「分かったなの!」


 セシリーちゃんも元気よく返事をします。

 ただ、漏れ出ただけだというのに、なんという力──あらためて魔王の恐ろしさに戦慄しました。


 私達は二人に言われた通りに、さらに集中力を高めます。


 ナイジェルの体を、光の鎖で闇ごと拘束します。彼はしばらく鎖を引きちぎろうと暴れていましたが、唐突に静止し、顔を伏せます。


 そして彼が顔を上げた時には──瞳には光が宿っていなかった。

 ゆらゆらと揺れる体の動きは、夏の陽炎を思わせます。



「──妾を目覚めさせたのは、貴様らか。なんの用だ」

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