表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/323

227・かつての仇敵は、今では味方のようです

「レティシア、大事な話があるんだ」


 ベルカイム王国の王城。

 その一室でクロードが真剣な声音で、レティシアに話を切り出していた。


「なーに?」


 呆れ気味に、レティシアは返事をする。

 ちなみに、レティシアの視線の先はクロードではない。彼女はファッション雑誌を読みながら、クロードに対応していた。


「先日の結婚式、素晴らしかった」

「うんうん。色々と事件はあったけど、結局は上手くいってよかったわね。わたしも一生に一度の晴れ舞台を、ああいう形で迎えられてよかったと思ってるわ」

「だろ? だから、あらためて──君に言うことがあるんだ」


 コホンと一つ咳払いをして、クロードは両腕を広げる。



「レティシア! 愛している! これからも君のことはボクが守る!」



 ──と、散々もったいつけて、クロードは言った。


 言われることを大体予想していたレティシアは、ここで溜め息を吐く。


「なに、あらたまってんのよ!? ってか、それを言うのは何回目?」

「そうだったか? ボクが覚えている限り、結婚後は十回くらいしか言っていないと思うが……」

「十三回よ──あんたもよく飽きずに、そんな恥ずかしいことを何回も言えるわね」


 とレティシアはようやく雑誌から視線を上げる。


「ちゃんと覚えててくれたんだね! 君のためなら何度でも言うよ!」

「ああ、もう! うっさい!」


 感極まって抱きつこうとするクロードを、レティシアは右手で押し返した。



 クロードとレティシア。



 クロードはベルカイム王国の第一王子であり、このままいくと近い将来に王位に就くことになる。

 そしてレティシアは、そんな彼の結婚相手であり、王太子妃でもあった。


 元々はエリアーヌがベルカイム王国追放となった、きっかけを作った少女。

 一流の呪術士であり今までエリアーヌ達を苦しめたこともあったが、改心してからは彼女達の味方になっている。


(なんか結婚してから、さらに情熱的になったような……そういえば、ナイジェルもそうだったみたいだし、男ってみんなこうなのかしら?)


 呆れるレティシア。


 とはいえ、「愛している」と言われた回数を律儀に覚えているので、レティシアもレティシアでのろけているのだが──彼女にその自覚はない。


「レティシアはどうだい? もしかして、僕のしつこさに嫌気が差したんじゃ……」


 クロードが不安そうに、レティシアを見つめる。


「そんなこと思ってないわよ。結婚式で、あんたの頼もしいところを見たところだしね」


 再び溜め息を吐いて、先日の結婚式を思い出す。



 ──ボクはレティシアを絶対に離さない!



 かつての恩師、ディートヘルムに追い詰められて。

 レティシアは城の屋上から、自ら落下した。

 それは自分がクロードにふさわしくない女だと思い、彼の身を案じたからである。


 だが、そんなレティシアをクロードは追いかける形で自分も飛び降り、彼女を抱きしめた。


 心配ないよ、大丈夫。

 君を好きになって本当によかった。


 このままでは死という運命には抗えないというのに──。


 あの時のクロードは、そう言わんばかりの笑顔をレティシアに向けた。


 今まで、クロードのことを「ちょっと頼りないな」と思ったことは、一度や二度じゃない。

 しかし結婚式の一連の出来事にて、レティシアはクロードをあらためて見直したのであった。


「頼もしいところ? 結局、エリアーヌ達に助けられっぱなしだった気もするが……」

「そんなことないわよ。あんた、忘れたの? あんたがわたしの呪いの力に適合したことを」


 レティシアがクロードに呪いを付与することによって、彼は覚醒した。

 本来、呪いは女神の加護のように、誰かに力を与えるものではない──それなのにどうしてクロードが適合したのか。


(あとから思い出したけど……クロードって、前代聖女の子どもなのよね)


 ゆえに彼にも呪いの耐性が引き継がれていた──そう考えると辻褄が合う。


「まあ……ボクは最後の最後、ディートヘルムに隙を作っただけだ。ボクだけではディートヘルムを止められなかった」

「なーんで、あんたは急に自信をなくすのよ!? 昔のあんたはもっと……なんていうか、自己肯定感が高かったじゃないの」

「今思えば、昔のボクも取り繕っていただけで、本来はネガティブだった気もするし……」


 うじうじと言うクロード。


 捨てられた子犬のようなクロードを見て、レティシアは母性本能をくすぐられたのか、思わず彼を抱きしめた。


「いい? あんたは素晴らしい男よ。わたしなんかには、もったいないくらいにね。わたしが愛した男なのよ? もっと自信を持ちなさい」

「レ、レティシア〜〜〜〜〜!」


 クロードが情けない声を上げて、彼女の胸に顔を埋める。


(このやり取り……もう何度目になるか分からないわね)


 だが、さすがに恥ずかしさが増してきた。

 クロードを引き離そうとすると……。



「クロード殿下!」



 一人の騎士が慌てた様子で、部屋に駆け込んできた。


「ノ、ノックもなしに、いきなりなんだ!?」

「す、すみません」


 騎士の男が萎縮する。


 クロードも騎士の不躾な行為を嗜めているというより、単純にいちゃいちゃしているところを見られた恥ずかしさで、声を上げている節があるが。


「ま、まあいい。それで……なんだ? なにか報告があって、ボクのところに来たんだろ?」

「はっ!」


 彼は姿勢を正し、こう告げた。



「王都の上空にドラゴンが現れました!」



「そっかあ」


 切羽詰まった騎士とは対照的に、クロードは生返事である。


 一方。


(なんかこの光景、一回見たことがあるわね……)


 レティシアは結婚するより、ずっと前──エリアーヌを追放した日のことを思い出していた。


「君は確か、最近この城に配属された騎士だったな」

「そ、そうですっ!」

「なら知らなくてもしょうがないと思うが、それは多分、ボク達の友人だ。名をドグラスという」

「ゆ、友人!? クロード殿下はドラゴンと、友好関係を築いていたのですか! 素晴らしいですっ!」


 キラキラと目を輝かせる彼。

 クロードは「そ、そうか?」と、ちょっと得意げだ。


「さすがクロード殿下です。まさか一体だけでもすごいのに、()()もドラゴンを手懐けているとは!」

「……ん?」


 騎士の言葉に、クロードは引っかかった様子。


「おい。今、なんと言った? 二体と聞こえたんだが」

「はい。二体です。上空に現れたドラゴンは二体です。だからますますクロード殿下のすごさが際立ち──」


 彼が言い終わるのを待たずに、クロードは急いで声を上げる。


「ゆ、友人なのはドグラス一人だけだ! 二体目のドラゴンがいるだなんて、聞いてないぞ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

シリーズ累計145万部御礼
Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1103
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000355043

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新7巻が発売中!
hev6jo2ce3m4aq8zfepv45hzc22d_b10_1d1_200_pfej.jpg

☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ