表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

234/323

225・二度目

 時が遡り、私が見たのはいくつもの時計の針が巻き戻っていく情景。


 次の瞬間。

 私は王城にいました。



「……? どうした、エリアーヌ。似合っていないか?」



 目の前には私の作った花冠を被ったファーヴの姿が。


「ここが分岐点だったということですか」


 どういう仕組みかは分かりませんが。

 あの時に見た緑色の光は、やはりシルヴィさんのものでした。


「分岐点……? なにを言っている。不思議なヤツだ」


 沈黙し考え事をしている私を見て、ファーヴはなにも分からずに目を丸くします。


「まあ、いい。そろそろナイジェルが戻る頃ではないか? 早く竜島に向かおう。こうしている間にも、シルヴィは一人寂しく待っている」


 そう言って、ファーヴが私に背を向け歩き出そうとします。



 シルヴィさんがくれた、もう一度のチャンス──。



 こうしている間にも、ファーヴがどんどんと離れていく。

 抗えない運命の大きな唸りを感じました。


 時を遡ってきたと言っても、ファーヴは信じてくれるでしょうか?

 そして仮に信じてもらえたとして、本当にアルターを倒す術を思いつくことが?


 様々な懸念がありましたが、咄嗟に私は──。



「ダメ──ッ!」



 服の袖を掴み。

 私はファーヴを引き止めていました。


「なんのつもりだ……?」


 ファーヴが怪訝そうな顔つきで、振り返りました。


 一度息を吸い込んでから、私はこう告げます。


「お話があります」




 その後、先ほど朝食を取った食堂まで戻り、私達は一堂に会していました。

 メンバーは私とファーヴ──そしてドグラス、ナイジェルの四人です。



「長命竜アルターは生きています」



 私がみなさんの前でそう告げると、ファーヴは椅子からガタッと立ち上がります。


「……っ!? 一体、なにを言い出す?」

「そういう演技はいりません。私はこの先に起こることを知っていますので」


 慌てるファーヴに私が言葉を投げかけると、彼は絶句していました。


「……ファフニール、汝は我らを騙していたのか?」


 静かな怒りを押し込め、ドグラスはファーヴに鋭い視線を向けます。

 ファーヴは「くっ……」と声を漏らし、申し訳なさそうに伏し目がちになります。


「す、すまない。長命竜アルターが生きているのは事実だ」

「どうして、その情報を伏せていた?」

「アルターに命令され、私達を竜島に誘き寄せる必要があったから……ですよね?」


 私が問いかけると、ファーヴは少し悩んでから首を縦に振りました。


 ドグラスはとうとう我慢しきれなくなったのか、ファーヴに詰め寄ろうとします。


「ドグラス、落ち着いて」


 しかしすかさずナイジェルがドグラスを制止します。


「ナイジェル、離せ! 我は裏切ったファフニールに断罪を下さなければならない!」

「ファーヴが嘘を吐いたことを、問い詰めるのは後だよ。エリアーヌ、まだ話は終わっていないよね?」

「はい」


 ナイジェルの言葉に、私は頷きます。


 私もまだ混乱しています。

 だって時を遡るだなんて行為は、夢にも思っていませんでしたから。


 頭の中で情報を整理しながら、私はゆっくりと語りだします。


「私は時の聖女──シルヴィさんの力で、時を遡ってきました」


 一度目の私達はこのまま竜島に向かいました。

 そこではシルヴィさんの形をした黄金が残っており、アルターとそのしもべ──アンデッドドラゴンが待ち構えていたのです。

 そして、私達はアルターに「時の聖女は既に死んでいる」と告げられました。



「アルターの言ったことは、今でも全て覚えています。彼はドグラスのことを半人と称していました。混ざっている……とも」

「半人……」



 私の言ったことに、ドグラスはなにか引っかかったのか考え込みます。

 説明は続く。


 不死身のアルターを前にして、手も足も出ずに。

 ファーヴは自らの命を犠牲にし、魔核爆裂を起こすことによって、私達が逃げる時間を稼ごうとしました。


 ですが、奇しくもそれがきっかけとなり、シルヴィさんの力が発動。

 アルターを倒すための術を見つけるために、私だけが時を遡ってきたのです──。


 そういうようなことを語り終えると、みなさん一様に驚いた様子でした。


「そんなことが……たった一度きりで数時間前とはいえ、時を戻せるのはすごいことだね。さすが時の聖女と呼ばれているだけあるよ」

「我らが長命竜アルターに敗北するというのは本当か? エリアーヌの言うことだから、信じるしかないが……」


 ナイジェルとドグラスが口々にそう言います。


 半信半疑といったところでしょうか。

 とはいえ、真摯に説明した甲斐もあって、二人は私の言葉を信じているようでした。


 だけど。


「俺は君の言うことを信じられない」


 ファーヴは頭を押さえ、首を左右に振りました。


「確かに、シルヴィには時を操る力があったのは本当のことだ。だが、エリアーヌにはさっき言ったと思うが──彼女は自分のことを『聖女として落ちこぼれ』と言っていた」

「それはシルヴィさんからも直接聞きました」

「今まで一度も力を発動することが出来ていなかったんだ。それが俺のピンチに発動する? 信じられない。そしてなによりも信じられないのが──」


 ファーヴが辛そうな表情をして、さらに続けます。


「シルヴィが既に死んでいる──という話だ」

「…………」

「他のことは信じたとしても、それだけは信じられない。シルヴィが死んでいるなら、俺はなにと戦っている? なんのために戦っている? なにを犠牲にしてでも、シルヴィを救おうとした俺の想いは? もし死んでいるなら、俺はもう戦う理由が──」

「ファーヴ」


 話を遮り、私はファーヴの名前を呼びます。

 なにを言われるのか見当がつかないのか、ファーヴはきょとんとした表情をします。


 彼だって辛いのは分かります。

 ファーヴはシルヴィさんを救うために動いていました。シルヴィさんが死んでいるなら、彼の行動原理そのものが否定されます。


 だけど私は過去──いえ、()()の出来事を経験して。

 ファーヴに、ある想いを抱いていました。


 淡々と私はこう問います。



「あなたは本気でシルヴィさんを救おうと思っているんですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

シリーズ累計145万部御礼
Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1103
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000355043

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新7巻が発売中!
hev6jo2ce3m4aq8zfepv45hzc22d_b10_1d1_200_pfej.jpg

☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ