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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

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233/323

224・ハッピーエンド以外は認めないんですから!

「アルターに挑む前──その時間まで、私が時を戻します」



「そ、そんなことが可能なんですか!?」


 思わぬ提案に、私は前のめりに問いかけます。


「時の聖女と呼ばれた私には、時を操る力があるとされていました」


 時を操る力──。

 それはファーヴからも聞きました。


「ですが、私は聖女として落ちこぼれ。今まで、一度もその力を発動することが出来ませんでした。今回も時を戻せたとしても、ほんの数時間だけ。しかもたった一度きりです」

「汝がそういう力を持っているなら、どうしてもっと早くに力を発動しなかった。落ちこぼれだかなんだか知らないが、そのせいで我々は追い詰められ、ファフニールは死んだ」

「力の発動条件は二つありました」


 とシルヴィさんは指を二本立てます。


「まず一つ目。エリアーヌ──あなたの神聖な魔力。あなたがファーヴに花冠を被せた際、私の力があなたのものと反応し、少しだけ私の意思が漏れました。とはいえ、力の完全発動には至らなかったですけどね。

 そしてもう一つは──それはファーヴの死亡。私はかつて、ファーヴに約束しました。彼に死ぬような危機が訪れれば、私が彼を助ける──と。たった一度きりしか使えない力。それを私はファーヴの最大の危機によってトリガーが引かれるように、仕掛けました」

「最大の危機──すなわち、ファーヴが死ぬ時ですね」

「その通りです。私にはこれが限界でした」


 奇しくもファーヴの魔核爆裂は、時間を稼ぐだけではなく、シルヴィさんの力を引き出す要因になったということですか。


 愛する人が死んだ時に、初めて発動する力──それは悲しく、そして儚く尊いもの。


「本当は私自身の手でファーヴを救いたい。だけど……私はここから動けない」


 寂しそうに言ったのち、シルヴィさんの声は力強いものとなって、こう続けます。


「時間はもう残されていません。エリアーヌ──問います。あなたは時を遡り、アルターを打倒してくれますか? 私の代わりに──ファーヴを救ってくれますか?」


 その問いかけに対する答えは、とっくに持っています。


 私はこう即答します。



「──もちろんです!」



 あんな終わり方だなんて、あんまりすぎる。


 私、ハッピーエンド以外は認めないんですから!


「ありがとうございます」


 安心したように微笑むシルヴィさん。


「……エリアーヌに任せるのが最善だな」


 ドグラスも表情を柔らかくし、そう口にします。


「ドグラスも時を遡らないんですか?」

「我はファフニールを未だに信じきれていない。我が行っても、足を引っ張るだけだ。それに……そこの聖女の顔を見るに、時を遡れるのは神聖な魔力を使えるエリアーヌだけなんだろう?」


 ドグラスの問いに、シルヴィさんは答えることが出来ません。

 その沈黙が肯定だと感じました。


「ならば、どうして我がこの空間に来れたのだろうな。不可思議だ」

「それはきっと、あなたに後悔があったからですよ」

「我がか?」

「はい。あなたがファーヴに抱いている悔い──もっと他に方法があったんじゃないか。やり直したい。そのような強い想いが反応して、ここに来られたんじゃないでしょうか」


 ファーヴのことを信じきれていないとドグラスは言います。

 しかしファーヴが死んだ際のドグラスの表情を思い出すと、実は彼と仲直りしたかったんじゃないかと思えてきます。


「ふっ……面白いことを言うな。だが、答えはそれくらい単純なものかもしれぬ」


 ドグラスは自重気味に笑い、


「あいつはバカなドラゴンだ。一人で大事なことを抱え込み、アルターに利用されてしまう。我が一番軽蔑するタイプだろう。だが、それでも──我の友であったことには変わりない」


 私の顔を真剣に見つめ──。



「頼む、エリアーヌ。我が友を救ってやってくれ」



「はい、任せてください」


 と私は力強く答えます。


「エリアーヌ、手を」


 シルヴィさんが私を呼ぶ。

 私は彼女の真正面に立ちます。

 そして両手を握り、魔力を交じあわせました。


「私はあなたに全てを託すことしか出来ません。無力な私を許してください」

「なにを言うんですか。あなたのおかげで、私はやり直すことが出来ます。もし、()()()の世界でもあなたと出会えたら、私と友達になってくれますか?」


 私が言うと、シルヴィさんは一瞬きょとんとした表情。


 だけどすぐに柔らかな笑みを浮かべて、



「喜んで」



 そう答えてくれました。


 今度は間違えない。

 ファーヴ──そしてシルヴィさんを救ってみせる。


 強い決意を抱き、私は交わる魔力をさらに強いものとしました。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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