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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

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221・不死身の竜

 光が次第に減衰し、その中から──。



「つまらぬ。女神の加護と言えども、この程度か」



 無傷のアルターの姿が現れました。


「どうして!?」


 思わず、驚きの声が飛び出してしまいます。


 間違いなく、ナイジェルはアルターを両断しました。これで勝負がつく──かどうかはともかく、無傷など有り得ません。


「なら、何度でも斬り伏せるのみだ!」


 しかしナイジェルに焦りはありません。

 再度、アルターと戦いを始めます。


 ですが、何度も何度も──それこそ、十回以上は即死の攻撃を放ったでしょうか。

 それでも、アルターの勢いは留まらず、皮膚には傷痕一つ刻まれていなかったのです。


 いえ──傷を負っていないのではなく、正しくは。


「体が再生している……?」


 ドラゴンという種族は自己治癒力に長けています。

 当然、アルターもその性質を継いでいるものとは思いますが──それにしては異常。

 いくら自己治癒力に長けていようが、治癒魔法を使おうが、死んでしまっては意味がないのです。



 不死身──。



 その言葉が脳内に浮かびます。


「儂がこの二百年間、時の流れに身を任せるだけで、なにもせずにいたと思っていたか?」


 混乱している私に、アルターはこう告げます。


「儂は世界を支配するため、この体に不死身の力を宿した。儂は不滅。何人たりとも、儂を倒せぬ」

「不死身!? そんなこと、有り得ません!」


 寿命の差はありますが、命あるものは必ず終わりが訪れます。

 アルターの言ったことは、その大前提を崩すことだったので、私は声を荒らげてしまいました。


「さすがは“真の聖女”。本来なら儂は十回以上、殺されていただろう。しかし不死身である儂は何度でも蘇る。そのためにこの二百年間──儂は同族の血を食らい、力を蓄えてきたのだからな」


 同族の血──。


 自らが力を得るためなら、仲間を利用することも躊躇わないアルターの執念。

 しもべとして行使していたアンデッドドラゴンも、元は彼を慕うドラゴンだったのでしょうか?

 そう考えると、私は胸が痛みました。


「そろそろ余興にも幕を下ろそう。おかげで、“真の聖女”の力もこの目で確認することが出来た。聖女の付属品には興味がない」


 そう告げて、アルターは素早く体をひねり、巨尾を水平に振りながら襲ってきます。


 ナイジェルはその打撃を剣で防ぎますが、次の刹那、アルターは黄金の息を放つ姿勢を取りました。


 結界魔法──間に合わない!?


 私は諦めず、今までにやったことがないくらいの速度で結界魔法を展開しますが──。



「なんとか間に合ったようだな」



 ナイジェルを抱え、その場から退避する男が現れます。


 そして現れたのは一人だけではありません。

 もう一人の人物は双剣を振るい、アルターの追撃を防ぎました。



「ドグラス! ファーヴ!」



 突如現れた救世主の名を叫びます。


「すまん。少し手間取った。来るのが遅れてしまった」


 ドグラスがアルターを見据えたまま、そう口にします。


「ご無事でなによりです」

「無論だ。我があんな死者にやられるわけがない」

「話は後だよ。まずは目の前のアルターを倒さないと。ドグラス、気をつけて。ヤツは不死身の力を有している」

「うむ、不死身か……」


 ナイジェルの言葉に、ドグラスは獣のような好戦的な笑みを浮かべます。


「さすがの我とて、不死身のドラゴンと戦うのは初めてだ。その力、確かめよう」


 そう言って、ドグラスはアルターに立ち向かっていきました。

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