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【アニメ化決定!】真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです  作者: 鬱沢色素
二章

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197・君の力は美しい

 再生する八本の触手を前に、私達は苦戦を強いられていました。


「エリアーヌ! 呪いは払えないのかい!?」


 ナイジェルが剣を振るいながら、私にそう質問します。


「は、はい! もう少し近付く必要があります!」


 しかし触手の猛攻は激しい。

 これ以上近付くことは不可能でしょう。


「神々からの剣があればともかく──そのような凡庸な剣では、決め手に欠けるでしょう。聖女にこれ以上近付けさせるつもりもありません」


 ディートヘルムの言葉が胸に突き刺さる。


 神々からの剣──神剣のことでしょう。しかしあれには魔王が宿っており、とてもじゃないけど、今の時点で使いこなすことも出来ません。


「舐め腐った態度だな! そんな余裕はあるのか?」


 ドグラスも触手を斬り裂き、ディートヘルムに接近しようとする。

 だけどその度に触手は再生し、彼の行く手を阻みます。


 ──ドグラスの言う通り、私達は決め手には欠けているものの、だからといって全く対処出来ないわけではありません。

 神剣がなかったとしても、さすがにナイジェルとドグラス二人を相手にすることは、ディートヘルムでも困難なのでしょうか。


「やはり計画の遂行のためには、聖女が排除する必要がありましたか」


 とディートヘルムが楽しげに口を動かす。


「あの暗殺者も、あなたの差金ですね。私達を暗殺しようとしましたか」

「あれで、あなた達の暗殺に成功出来るものとは思っていませんよ。ただ禁術の実験をしたかっただけ。まあ……失敗品ではあなた達に傷一つ付けることすら出来ませんでしたが──これはこれで良い音楽です!」


 そう言うディートヘルムの口元には笑みすら浮かんでいた。この戦いを心底楽しんでいるようです。


 しかし私達に楽しむ余裕なんてありません。

 あと一つ──あとなにかあれば、押し込むことが出来るのですが──。




 その時でした。




 救いは──思わぬところから現れました。


 私ですら、思いもしていなかった死角。


 ()はゆっくりとディートヘルムに歩み寄る。


「さあ──旋律を奏でましょう。あなた達の焦燥! 恐怖! 絶望! それら全てが音楽の土台となります!」


 八本の触手──いえ、()()()の触手が現れ、ナイジェルの背中めがけて伸びていきました。


「ナイジェル!」


 私は名前を呼び、即座に結界魔法を張ります。

 しかし九本目の触手は結界を破り、その勢いは止まる気配がありません。


 ナイジェルがようやく気付きますが、触手は既に目の前まで──。




「油断したな」




 サッ────。



 それは驚くくらい、静かな音でした。


 一瞬、私はなにが起こったのか分かりません。


 ナイジェルがやられた──かと思いますが、触手は彼の前でピタリと止まっています。彼は無事です。


 ならば──と思い、ディートヘルムに視線を移すと、


「な、なんだと……?」


 彼の胸元から剣が生えていました。


 ディートヘルムがゆっくりと顔を後ろに向けると──そこには救いの使者の顔があった。


「ボクをただの足手まといだと思って、意識の外に置いていたか? それが貴様の失敗だ」



 ──クロードです。



 彼は両手で剣を強く握り、ディートヘルムの胸を貫いていました。


「バ、バカな。このような凡庸な剣では、呪いを纏った私の体は貫けないはず──ま、まさか!」


 ディートヘルムは当初、なにが起こったか分かっていない様子でしたが──クロードが纏う黒のオーラに気が付き、愕然とします。


()()をその身に宿したというのですか!?」

「そうだ」


 とクロードは短く答える。


 クロードの後方には──レティシアが手をかざし、厳しい視線をディートヘルムに向けていた。

 だけどその表情には、少しクロードに対する心配の類が。


「……大丈夫、レティシア」


 クロードが視線を前に向けたまま、レティシアにそう語りかける。


「ほら、言っただろ? 君の力は邪悪なものじゃないんだ」


 と──柔らかく笑った。




 その笑顔を見て、私は全てに合点が付きます。




 本来、呪いというのは魔法のように便利な代物ではありません。呪いをその身に宿せば、レティシアやディートヘルムのように特殊な訓練を受けていなければ、正気を保つことは不可能でしょう。


 しかし──レティシアはクロードの体に呪いを付与した。

 ゆえにこうしてクロードが意識を保っているのは、有り得ないこと。




 ──ここで呪いの特性について、もう一つ言っておくべきことがある。

 強すぎる呪いは、それに触れただけで意識を持っていかれます。

 そして呪いは憎悪の感情から生まれ、発動しようとしていなくても、勝手に表出してしまうことがあります。

 封印されていたはずの魔王の体から、呪いが漏れていたのが良い例です。

 そしてレティシアは間違いなく、一級品の呪術師。




 ならば──どうしてクロードは、()()()()()()()()()()()




「そういうことだったんですね……」

「エリアーヌ、どういうことだ?」


 ドグラスが私に問いかける。


「クロードは元々、呪いへの耐性──そして対応力がずば抜けていたのです。だからこうして、呪いを付与されても、それを力に変えることが出来る」


 そして──結婚式の会場。

 一部の例外を除いて、あの場にいる者全員が禁じられた呪いに触れ、正気を失っていました。


 しかしこの中で正気を保っている例外──呪術師であるディートヘルムとレティシア。


 そしてもう一人──クロード。


「はああああああ!」


 ディートヘルムが怯んだ隙を見逃さず、ナイジェルが疾駆する。

 そして剣を一閃──ディートヘルムの体がゆっくりと床に倒れていく。


「エリアーヌ!」

「はい!」


 私は倒れているディートヘルムに近付き、解呪を施す。九本の触手も消滅し、彼が纏っていた黒いオーラも霧散しました。


「終わった……のか?」

「ええ。元凶を断つことによって、城に充満していた呪いも消えました。ですよね? レティシア」

「え、ええ。そうよ。禁術は未完成のまま止めることが出来たと思う」


 レティシアは戸惑いながら、そう口にする。


 彼女の戸惑いは──きっと、今でも肩で息をしながら剣を握るクロードの対して。


「あ、あんた、本当に大丈夫なの? なんにもない?」


 レティシアが恐る恐るクロードの肩に手を置く。


 クロードは振り返って、レティシアに微笑む。


「うん、もちろんだ。これが……君の使う力なんだね。なんて──」


 とクロードは剣を地面に落とし、彼女にこう言った。


「美しい力なんだ」

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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