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187・聖女、頑張ります

「こうなっては仕方ありません。今は最善を尽くしましょう。私も作るのを手伝いますので」


 私はそう腕まくりをして、みんなに発破をかけた。


「せ、聖女様がですか!?」

「はい。これでも、自分の結婚式でウェディングケーキを自作したこともあるんですよ? もちろん、あなた方には劣るでしょうが……料理ならお手のものです」

「あのケーキは見事なものだったね。また食べてみたいよ」


 とナイジェルも太鼓判を押してくれる。


「それとも……私では足手まといでしょうか?」

「い、いえいえ! 聖女様がご一緒してくれるなら、こちらも心強いです。なあ、みんな!」


 コックの彼はそう言って、周りの人にも聞く。

 するとこの場にいる全員が頷き、やる気を激らせていました。


 ふう……みなさんが希望を取り戻してくれて、一安心です。いくら料理の腕があったとしても、希望を持てなければ前に進めませんから。


 そう思いながら、私は早速作業を開始しようとすると、


「ナ、ナイジェル殿下」


 別の騎士が慌ただしく厨房に入ってきて、ナイジェルに話しかけた。


「どうしたんだい?」

「じ、実は……渡り廊下で暴れている者がいまして。それを今はカーティス騎士団長が抑えているものの、苦戦しているようです。他の騎士が戦っても、まるで歯が立ちません。そこでナイジェル殿下のお力を借りたく……」


 申し訳なさそうに騎士はそう口にする。


「暴れて……もしかして、また呪いかな?」

「その可能性は高いと考えています。目は血走り、まるで魔物のような強さでしたので」


 騎士の言葉を聞いて、私とナイジェルは顔を見合わせる。


「た、大変です。すぐに向かわなければいけませんね。怪我人はいませんか?」

「幸い渡り廊下には来客者もおらず、今のところはいません。渡り廊下へ続く道は通行止めをしているものの、正直それも追いついていません。いつそこを通りがかる人が現れても、おかしくない状況です」


 焦った様子で騎士が言う。


 騎士団長のカーティス本人が対処するくらいです。。

 相当、人手が足りていないのでしょう。


「我が行こうか?」


 ドグラスがそう問うと、ナイジェルは首を横に振る。


「いや……ドグラスは手加減出来ないだろう? それで人が寄ってきて、騒ぎになってしまうかもしれない。僕の方が適任だと思う」

「それもそうか」

「私も行きます──と言いたいところですが」


 と私はコックの方々を見渡す。


 みなさんは心配そうな表情。

 自分で言うのもなんですが、私は彼ら・彼女らの精神的支柱となっていたのでしょう。

 そんな私がいなくなりそうだから、不安を覚えている……と。


 その空気を察したのか、


「いいよ。エリアーヌはウェディングケーキ作りに集中して。これくらいなら僕一人でも片付けられるから」


 とナイジェルは私の肩をポンと軽く叩いた。


「ありがとうございます。ケーキ作りが終われば、すぐにそちらに向かいますので」

「いいんだ。暴れている人を抑えるのも大事だけど──ウェディングケーキを作り、無事に結婚式を終わらせることも重要だ。どちらの要素が欠けても、いけないよ。式が始まる前に、そう決めたんだしね」

「我はエリアーヌの護衛に回る。コック長が呪いにかかったし、また同じことが起こってもおかしくないからな。用心だ」


 私がお礼を言うと、ナイジェルとドグラスが順番にそう口にしました。


「では……すぐに行動に移りましょう。ナイジェル、お手を」


 さっと差し出てきたナイジェルの右手を、私はぎゅっと握る。そして女神の加護を付与した。

 彼の体から光が漏れたことに、周囲から驚きの声が上がる。


 聖女というのは女神の代行者。そんな私は女神の力を、他の人に付与することが出来る。

 とはいえ、ナイジェルといった女神の加護に適用した数少ない人にだけですけれど。


「エリアーヌも頑張ってね。僕はそれ以上に頑張るから!」

「もちろんです!」


 そう言って、ナイジェルは駆け足で厨房を後にした。

松もくば先生による、当作品のコミカライズ5巻が明日発売日となっています!

よろしくお願いいたします。

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

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