168・黒白の花嫁
あれは確か、わたしが子どもの時だった。
街で結婚式が挙げられ、近所の人たちがこぞって教会まで足を運んだ。
その中にひっそりと混じって、わたしも結婚式を見学しにいった。
その時にわたしが目を奪われたのは、花嫁の幸せそうな表情。
純白のウェディングドレスを着て、新婦に寄り添う彼女の姿はとても美しかった。
「いいなあ……わたしも大人になったら、あんなにキレイになれるのかな」
花嫁を見て、わたしはついそう言葉を漏らしてしまった。
そんなわたしに──。
「おい、レティシアがこんなところに来てやがるぞ!」
「あいつ、知ってるぜ! 呪術師の娘なんだ。お父さんが言ってた!」
心ない言葉を浴びせてくる近所の子ども達。
小さい頃のわたしは今よりも少し太っていて、それが原因でイジメられていたのだ。
イジメっ子はわたしを指差し、ゲラゲラと笑っている。
「お前がどうしてこんなところに来てるんだ? まさか……お前なんかが、あんなキレイな服を着られると思ってんのか?」
「はっはっは! 呪術師のお前を好きになってくれる男子なんて、いるはずがないだろうが! お前は隠れて、一生一人で過ごしな!」
彼らはわたしに石を投げる。わたしは「やめて」とか細い声で言い返した。
しかしイジメっ子はやめてくれない。
わたしはしゃがんで頭を抱え、イジメっ子が飽きてどこかに行ってくれるのを、耐え忍ぶことしか出来なかった。
──そうだ。
わたしは呪いの一族の生まれ。
わたしの手では、普通の幸せなんか掴めるはずがない。
──どうして夢を見ちゃったんだろう。
夢を見たら、それが叶わないと分かった時に傷つくだけなのに──。
すぐに後悔の念が湧いてきた。
神様なんて信じていない。
そんなものがいれば、こうしてわたしがイジメられることもなかったはずだからだ。
しかし──もし神様が本当にいるのなら。
贅沢は言いません。
たった一度だけでいいから。
わたしにどうか、白いウェディングドレスを着させてください。
悲しい思い──消せない罪。だけどボクは君を離さない。そんな二人の愛はきっと永遠で──。
新章、今年秋頃に開始予定です。