14・病気の原因
その後。
思う存分ラルフちゃんの毛並みを堪能した私達は、一旦ナイジェル達と謁見した場所まで戻ることになった。
「国王陛下。ラルフちゃんのかかっていた病、なにか心当たりはないのですか?」
私は国王に質問する。
すると国王は「むう……」と渋い顔をして、
「分からぬ。初めは軽い風邪だと思っていた。しかし徐々に衰弱していき、それを癒す薬も魔法もなくてお手上げ状態だった。一体なにが起こっているやら……」
と戸惑いを隠せないようであった。
私も聖女として、今まで何人もの人や動物を癒してきた。
その中でも今日ラルフちゃんに見えたオーラは、今までに見たことのないものであった。
でもあの濁った色をしたオーラ、一つだけ心当たりがある。
呪いだ。
——呪い。
他者への強い怨念が、それを可能とする。
それをかけられた者は呪いの内容によって様々な症状が現れ、今回ラルフちゃんに出たものもその一つだ。
この病気が呪いに関わっているものとするなら、困ったことになる。
なんせ呪いはただの治癒魔法では治らないからだ。
呪いを解くためには二つの方法があると言われる。
まず一つ、解呪師という珍しい専門職の方。
そしてもう一つは、女神からの加護を受けた聖女……つまり私だ。
解く方法はあるのだけれど、どちらも数は少ないことから一度呪いにかかってしまえば、なかなか厄介なことになる。
「陛下」
「なんだ?」
「これはまだ私の推測でしかないのですが……」
私は国王にラルフちゃんを癒した時に、感じたことを全て伝えた。
「むぅ……呪いか」
当然国王も呪いの厄介さを知っているようで、顔を歪ませる。
呪いは出る症状が多岐にわたるため、そもそも判別することが難しい。
私だって、まだ推測でしかものを言えないわけですし。
「もちろんまだ確定ではありませんが。一つの可能性として考えておく方が良いかと思われます」
「分かった、ありがとう。それにしても呪いか……早急に捜査しなければならないな」
国王が渋い顔をする。
いくらペットとはいえ、国王のペットに呪いがかけられたのだ。
国王に敵意を抱く者の仕業……でないとも限らない。
しかしそうだとしても、どうしてそれなら国王に直接呪いをかけず、ラルフちゃんを狙ったのだろう?
人にかけるには、まだ未完成の呪いだった?
……いやこれ以上は憶測になる。
あとは国王に任せておくのが無難ではないだろうか。
「さあて、暗い話はこのあたりで終わりにしようではないか」
国王は手を何回か叩いて、話を変える。
「エリアーヌ、今日はここに泊まっていくといい。市内に住むところを準備するのも、少し時間がかかるものでな」
「良いのですか?」
「もちろんだ。もっともあまり広い部屋は用意してやれんかもしれないが……出来る限りもてなそう」
市内の適当な宿屋に泊まろうと思っていたけど、正直これは助かる。
王国から持ってきたお小遣いは、ごくごく僅かなものだ。計画的に使わないといけませんからね。
「ナイジェル様もよろしいんですか?」
「僕もエリアーヌなら大歓迎だ。是非泊まっていくといい」
ナイジェルも国王の提案に賛成のようだった。
「でしたらお言葉に甘えさせてもらいます」
私は深く頭を下げるのであった。
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