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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
二章

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129・真の聖女は偽の聖女とお茶会を開く

新章開始です。

「それでね〜、クロードったら洗濯も出来ないのよ? 有り得なくない!? 洗濯物入れて、ボタン押すだけなのに……なーんで、あんなことも出来な──」


 レティシアは話をやめ、紅茶のティーカップをテーブルの上に置いた。


「なによ──エリアーヌ。なんで笑ってるの? わたし、おかしいこと言った?」

「いえいえ、仲が良さそうだなと思いまして。それに、洗濯魔導具の前であたふたしているクロードを思い浮かべたら、つい笑っちゃいます」

「はあ? あんた、今の話を聞いて、なんでそんなことを言えんのよ。ちゃんと聞いてた?」

「はい。一言一句逃さず」

「ん〜〜〜〜〜!」


 とレティシアは眉間に皺を寄せた。

 そうした彼女の仕草も可愛いです。


「それにしても──まさか、あんたとこうして話せるなんて……夢にも思ってなかったわ」

「それは私の台詞ですよ」


 私も紅茶を一口飲んでから、そう返した。



 ──今日はレティシアとのお茶会。



 ベルカイムの王城の中庭。

 そこで私達は紅茶やお菓子を口にしながら、他愛もない雑談に花を咲かせていました。


 以前までの私達を知っている人なら、ハラハラドキドキする状況でしょうね。

 何故なら私は──元々、ここベルカイム王国を追放された身なのですから。


 紅茶の味と香りを楽しみながら、私は今までのことを思い出していました。




 私はベルカイム王国の聖女でした。

 聖女として傷付いた人々を治癒魔法で癒し、この国に結界を張り、魔族やドラゴンが勝手に入ってこれないようにする役目を任されていました。

 だけど──ある日、私はベルカイムの第一王子であるクロードに、婚約破棄&国外追放を言い渡されてしまうのです。


 どうしていきなりそんなことを言われたのか?

 それはこの目の前の可憐な少女──レティシアが大きな原因を担っていました。

 彼女はクロードに私の悪口を吹聴し、さらに自分のことを『真の聖女』だと宣ったのです。


 しかしレティシアが真の聖女だなんて、とんでもありません。

 彼女は聖女どころか──一流の呪術士でした。


 でもそんなことも知らないまま、私は国外追放された後──隣国に向かう途中で、素敵な男性に出会います。


 それがナイジェル──ベルカイムの隣国、リンチギハムの第一王子。

 後に、私の人生の伴侶となるお方です。


 私は彼のご厚意で、隣国のリンチギハムに移り住みました。


 そこではナイジェルはもちろん、彼の妹のセシリーちゃん。フェンリルのラルフちゃん。そしてドラゴンのドグラスといった方々と賑やかな日々を過ごしていました。


 しかし楽しいだけではありません。色々と事件が起こります。

 その中で、印象深いものがいくつかあります。


 一つ目はレティシアが、リンチギハムに呪いのアイテムを流通させていた事件。彼女はそれだけに飽き足らず、SS級冒険者のアルベルトに呪いの剣を持たせ、私達を殺そうとしました。

 そして二つ目は精霊王フィリップのこと。彼は自分達が住む森が上級魔族によって瘴気で冒され、私に助けを求めました。

 だけどみんなの力もあって、二つとも事件は解決。私はこれらの事件を通して、自分一人で出来ることには限界があると悟ったものです。


 そして、最後に世界を揺るがすあの事件が起こったのです。

 私を追放したベルカイム王国は結界が消滅し、上級魔族が乗り込んできました。

 上級魔族達はベルカイムの王都で封印されている、魔王を復活させようとしていたのです。

 私はナイジェルやドグラス、騎士団の方々とベルカイムに赴きました。

 始まりの聖女の力を得て、世界全域に結界を張る。そうすれば魔王復活を阻止出来る──そんな考えを持って。


 でも一筋縄ではいきません。

 始まりの聖女の力を得よう──とするその時、ベルカイムに張っていた時限式の結界が破られてしまったのです。

 大量の魔族がベルカイムの王都に雪崩れ込んできて、魔王を復活させてしまいました。


 絶体絶命のピンチ。


 だけどベルカイムとリンチギハムの騎士団も力を合わせて、魔族に立ち向かい──さらにドグラスも上級魔族と戦った。

 今まで敵だったクロードとレティシアも味方に回ってくれました。

 そう──私一人の力では無理なことも、みんなの力があれば叶うのです!


 私は完全な女神の加護を、ナイジェルに付与し──彼は神々も使いし神剣で、魔王を打倒しました。

 世界は平和となり──その一年後、私は婚約者だったナイジェルと結婚式を挙げます。


 結婚式は楽しかったですねえ。

 私の作ったウェディングケーキを食べて、みんなは美味しいと言ってくれましたし……ちょっと緊張している様子のナイジェルも新鮮でした。




 ──というわけで、ベルカイムを国外追放された時はどうなることかと思いましたが、今はなんだかんだで幸せな日々を送っています。


「あなた、覚えてます? 昔のあなたは私のことを、『あの女は性悪女なんですぅ』ってクロードによく言ってたんですよね? 今と随分喋り方が違っていましたし、思い出すとおかしな気分になって……」

「うぅ……あの時は悪かったわよ。いくら謝っても許してもらえるとは思わないけど、昔のわたしは、ちょっとその……すっげえ嫌なヤツだったから……」


 頭を抱えるレティシア。


 だけど一年前、魔王復活の事件の際はたくさん力を貸してくれました。彼女の呪いの力がなければ、今みたいな平和な世の中は実現していなかったでしょう。

 そこから私達は仲直りして、今ではこうして定期的にお茶会を開く仲になりました。

 今日はそのお茶会のため、こうしてベルカイムの王城に足を運んだわけです。


「まあ、そのことはいいとして──クロードの話に戻りましょう。レティシアは今、クロードの正式な婚約者となったんですよね?」

「うん」


 と頷くレティシア。


 元々、レティシアはクロードのただの恋人でした。クロードはすぐにでもレティシアと婚約したかったそうだけど……それに反発する者は多く、なかなか上手いことにはいかなかったようです。


 だけどレティシアは生まれ変わりました。

 以前までの猫を被った性格を破り捨てたのはもちろんのこと……なんと彼女はこの一年で花嫁学校に通い、密かに牙を研いでいたのです!

 彼女がそんなところに通うなんて……以前までの彼女を知っている私からしたら、驚愕もの。


 しかもクロードはレティシアが花嫁学校に通っていることを知らず、彼女にフラれたと思い込んでいたみたい。

 花嫁学校を卒業し、レティシアがクロードのところに戻った時は、それはそれは大騒ぎだったよう。

 クロードは嬉しさのあまり、彼女に抱きついて泣き崩れたと聞きます。


「結婚式はいつ挙げられるんですか?」

「まだ決まってないわ。まだわたしとクロードの婚約に、顰めっ面をする人も多いから。まずはその人達に納得してもらわないっと。まあ……」


 レティシアは肩をすくめ、


「そりゃそうよね。この国の第一王子が、呪術士の女と結婚しようとしてるんだもん。普通は婚約すら許してもらえないわ」


 自嘲気味にそう言った。


 当初は呪術士ということを隠していた彼女ですが、今は特段隠していないみたい。

 さすがにもう隠し切れるものだと思っていないのでしょう。


 でも。


「きっとあなた達なら大丈夫ですよ」

「ありがとね。でもなかなか遠い道のりだわ」


 レティシアがくたーっと机に突っ伏す。


「そして……結婚式の日は絶対呼んでくださいね! 私、二人のためにとびっきりのウェディングケーキを作りますから!」

「なんでエリアーヌがそんなことをするのよ。分かってんの? あんた、王太子妃なのよ? それでなくても聖女なのに……ほーんと、お人好しね」


 とレティシアは呆れたように息を吐く。


「というか……わたしばっか話してるけど、そういうあんたはどうなのよ」

「わたし……ですか?」

「ナイジェルとどうなのかって聞いてんのよ」


 レティシアの目が輝く。


「いえ……ナイジェルは素敵な人で……喧嘩することもなく、仲良く暮らして……だからレティシアに言えることは、一つもないといいますか……」

「ないわけないでしょ。あんたは自分の話になったら急に喋れなくなるわね」


 私があたふたしているのを見たためでしょうか。

 レティシアがニヤァと悪い笑みを浮かべる。


「いいから話しなさいよ。ナイジェルは、あんたのことが大大だーい好きなんだもんね。彼からどうやって愛を囁かれているのか、言いなさい! それにあんただって、パートナーに不満の一つや二つはあるんじゃない? 全部吐き出しなさいよ」

「そ、そんな大好きだなんて……! そりゃあ、私もナイジェルの気持ちは分かっていますが、わざわざ他人に口にするほどでもないといいますか……」

「いいから! 早く話す!」


 バンッ!


 力強くレティシアがテーブルを叩く。


 ティーカップが一瞬だけ宙に浮いた。

 そのことに気圧されて、私は観念して口を開く。


「うーん……あっ、そうでした。先日、こういうことがありまして──」

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