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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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121/325

121・甦る災厄

 私達が地下の最下層に着くと、先ほどの魔族が魔王の前で祈りを捧げていた。


「させないっ!」


 ナイジェルが抜剣し、魔族に斬りかかるが……見えない結界のようなものに阻まれ、届くことはなかった。


「もう遅い! 指をくわえて見てみろ!」


 魔族から邪悪な魔力が奔流。

 そして魔力はそのまま魔王を包む。

 魔王の表層がパキパキとひび割れ、徐々にそれが姿を現す。


「成功だ!」


 魔族は腕を広げ、恍惚こうこつの表情を浮かべていた。

 私もなんとか魔族の妨害をしようとするが……彼の言った通り、少し遅かった。


 魔王の前に幾重にも結界を張る。

 しかし結界を作ると同時、それらが邪悪な魔力によって壊され、上手くいきません。


 ゆっくり四肢を動かす魔王。

 少し動くたびに周囲の壁や地面に当たり、地響きが起こった。


「我が名はペウィズ!」


 復活を遂げてしまった魔王を前に、ペウィズと名乗った魔族が語りかける。


「貴方様不在のもとで、魔族を統制していました! しかしこれからは貴方様の時代です。私はその下……で……?」


 しかしそこでペウィズの言葉は途切れる。

 巨大な魔王の右手が、ペウィズをそのままつかみ上げたからです。


「魔王様……一体なにを?」


 ペウィズの瞳に疑問が宿る。


 だが、魔王はそれに答えず、大きな口を開けた。

 そしてまるで子どもがお菓子を頬張るように——ペウィズを口内に放り込んだ。


 断末魔も聞こえません。それくらいあっという間の出来事でした。


「魔王のまとっていた魔力が……さらに増大していく?」


 復活した魔王の様子に、ナイジェルが訝しげな表情を作る。


 ペウィズを取り込んだ魔王は満足そうな笑みを浮かべた。

 さながらペウィズは寝起きの朝ご飯といったところでしょうか。

 上級魔族を取り込み、さらに女神の加護が付与されたナイジェルの魔力……それらを取り込んだペウィズは、良質な栄養源だったでしょうから。


「なんにせよ、魔王が復活してしまった……これを外に出すことは決して許されない。ここに閉じ込めておかないとっ!」

「しかしどうやって!」


 最悪の状況に、私は思わず声を荒らげてしまう。



 グオオオオオオオオオオ——!



 魔王が咆哮を上げる。

 覚醒の喜びに震えるかのように、魔王が両腕を振り回した。


 ドラゴン以上の大きさを誇る魔王は、動いただけでも最早大きな災厄でした。

 復活してしまった魔王を前にしては、私の結界魔法も無力。その証拠に結界をいくら張っても、そのたびに硝子を割るかのように魔王に壊されていった。


「一体どうすれば……」

「エリアーヌ。それは……?」


 愕然としていると、ナイジェルが私の胸元に視線を移す。


「これは……始まりの聖女の髪?」


 次の瞬間でした。

 胸元に忍ばせておいた始まりの聖女の髪が、ひとりでに動いて、魔王のところへ飛んでいったのだ。


 そして髪は長くなり、そのまま魔王を縛り上げる。



 グオオオオオオオオオオ——!



 悲痛な叫び声を上げる魔王。

 だけど私には「鬱陶しい虫だ」と言っているように感じた。


 魔王は自分を拘束している髪を、なんとか引きちぎろうとしている。髪がブチブチと切れる。


「あまり長くは保ちそうにない……ね」


 ナイジェルの言葉に、私も頷いた。


 魔王が拘束から逃れるために暴れているせいで、今にも地下室が崩れてしまいそう。

 立ってられないくらいの地震に、上から瓦礫も落下してくる。


「ここにいては生き埋めになってしまいます! ナイジェル、今はここから脱出しましょう!」

「だね!」


 藻掻いている魔王を眼下におさめながら、私達は元来た階段を今度は駆け上がっていきました。


「このまま魔王が生き埋めになってしまったらいいのですが……」

「まあそれは難しそうだね。仮に生き埋めになってしまったとしても、()()なら自力で這い上がってきそうだ」

「同感です」


 とうとう魔王を復活させてしまった。

 私の結界も効かない。

 他のみなさんも魔族との戦いで疲弊しているせいで、ろくに戦うことも出来ないでしょう。


 打つ手なし。

 状況は絶望的。



 ——このままでは世界は破滅してしまう。



 それでも私はなんとか活路を見出そうとすると……。


「ああっ!」


 声を上げてしまう。

 足下の階段が崩れ、私とナイジェルの体が落下に転じたからです。


「エリアーヌ!」


 空中でナイジェルが動き、私の手を握る。


「君の手は絶対に離さない!」






 ◆ ◆

 


 一方、ドグラスは突如闇に覆われた市内でなにが起こっているのか考えていると……。


「ドグラス!」


 大きな声。

 声のする方に顔を向けると、そこには精霊王のフィリップとヴィンセント。そして王城のペットであるラルフちゃんが、ドグラスの方に向かってきていた。


「一体なにが起こっているのだ?」


 ヴィンセントが問いを投げかける。


「分からぬ。魔族が国に攻め入り、我達がそれを防いでいたが……突如こんな状況になったのだ」

「エリアーヌは間に合わなかったのか?」


 次はフィリップの問いを口にする。

 しかしドグラスは顔を歪めて、首を左右に振るのみであった。


「それも分からない。エリアーヌと念話も繋がらなくなっているしな。しかしこうなっている以上、間に合わなかったと考えるのが当然だろう。それよりも、汝等は一体……」


 そこでドグラスはヴィンセントが持っている剣に気がついた。

 光り輝く一本の剣である。剣からは膨大な魔力が発せられ、ドグラスですらその全貌がつかめないほどであった。


(この剣……どこかで見たことが……)


 ドグラスが自分の記憶を遡っていると……。


「ああ。私とフィリップが城に立ち寄っていた時のことなんだがな。そこで保管していた剣が、突然光り出して、ちょっとした騒ぎになっていたのだ」


 ヴィンセントが答える。


「この剣は俺達、精霊の村で長らく保管されていたものだ。エリアーヌに託してたのだが……」

「ああ……あの精霊の村にあったサビた剣か? どうしてそうなっているのだ?」


 精霊達の間で代々伝わり、古ぼけた箱の中に入っていた剣だ。

 あの時はドグラスが力づくで箱を開けて、そのお礼にとフィリップが彼らに託したものであった。


(どうして今更それが……)


 ドグラスが質問を重ねるが、フィリップは首をかしげるのみであった。


「しかし……このタイミングで光り出したということは、なにか意味があると思ってな。その後、神獣フェンリルの背中に乗せてもらって、エリアーヌ達に渡そうと急いでここに来たわけだが……」


 フィリップが言った、次の瞬間であった。


 謎の剣がカタカタとヴィンセントの手元で震え出し、彼の手元から離れたのだ。


「どういうことだ!?」


 いつも冷静で落ち着いたように見えていたヴィンセントであったが、さすがに声を大きくする。

 謎の剣は少しの間、宙に浮き震えていたかと思うと——そのまま空へ飛んでいった。


(あれは……王城の方角へ?)


 剣はそのまま速度をぐんぐん増し、王城の方角へ一直線に向かっていった。


「なにがなんだか分からない。これは……」

「我も同じだ。しかしこうなった以上、あの剣——そしてエリアーヌ達に全てを託すしかないであろう。我達が出来ることの範疇を超えてしまっている」


 もし魔王が完全に復活してしまったとなったら……当初の計画から崩れる。

 ならば今は最悪の状況ケースといえるだろう。


 しかしあの謎の剣を見ていると、不思議と安心感が湧いてきた。

 剣はエリアーヌ達を救う使命を帯びたかのような──神々しい光を放っていた。


 その光はさらに強くなり、闇に覆われた街を照らした。

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