表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/306

12・もふもふしました

 私は国王とナイジェルと一緒に、城の敷地内にある庭に向かった。


「えっ……」


 そこで私はとんでもないものを目にしてしまうのである。



「フェ、フェンリル!?」



 そう。

 真緑の芝生が生い茂る庭の上で、大きいフェンリルが寝そべっていたのだ。


「ペットというのはフェンリルのことだったんですか!?」

「その通りだ。言ってなかったか?」

「言ってません!」


 本当にこの親子は……どっちも説明足らずなんだから。


 フェンリルというのは魔物の一種である。


 しかし比較的温厚な魔物で、人間を見かけたとしても無闇やたらに襲いかかったりはしない。

 こちらが敵対する意志を見せたら別だけどね。


 そのため、こうしてペットとして飼う人もいるんだけど……そもそもフェンリルは相手のことを認めない限り、その人を『主人』として認めない。

 買うにしても多額のお金が必要となり、そんじょそこらの庶民では手を出すことも出来ないのだ。


 そういった理由から、フェンリルなんて飼っているお家は珍しいんだけど……。


「随分元気がなさそうですわね」


 私はフェンリルの様子に心配になった。


「むう、そうなのだ。先ほど説明した通り、どんな治癒士に見せても、ラルフが一向に回復せん」


 ラルフ……このフェンリルの名前だ。


「そうですか。まあ一度診させてもらいますわね」


 私はフェンリルに近付こうとする。


 しかしそんな私をさっとナイジェルが手で制した。


「エリアーヌ、僕も行こう」

「あら?」

「ラルフはなかなか人に懐かなくてね。君を攻撃する……なんてことはないが、迂闊に自分の体を触らせることもない。僕が一緒に行けばあるいは……」


 随分人見知りの激しいフェンリルなのですわね。


 でも。


「大丈夫ですわ。だってあんなに可愛いですもの。きっと触らせてくれると思いますので」

「エ、エリアーヌ!」


 ナイジェルの制止を聞かず、私は堂々とフェンリルの目の前まで行く。


「可愛い子ね」


 私が話しかけても、フェンリルは一瞥するだけでなにも口を開かなかった。

 喋らないなんて……相当症状が酷いみたいだ。


「じゃあ……失礼します!」


 私は意を決してフェンリルに手を当てる。

 意を決して……と言ったが、「噛まれるかも」と思ったわけではない。


 だってこんなにもふもふしているんですわよ!


 柔らかそうな毛並みは触っただけで気持ちよさそう。

 大柄な体は抱きついても優しく受け止めてくれそうだ。


「わあ」


 その私の予想は当たっていたみたいで、フェンリルはとってももふもふしていました。


 気持ちいい……。


「……はっ! いけない、いけない。私としたことが一瞬我を忘れてしまいそうでしたわ」


 早く治してあげよう。


 私は集中して、フェンリルに治癒魔法を発動する。


「おお! 神々しい光だ……!」


 と後ろから国王の声が聞こえた。


 んん。

 これはなかなか厄介な病のようですわね。


 私は集中して治癒魔法を使うと、相手のオーラを見ることが出来る。


 なにもなければ無色透明。

 これに色が付いていたり、濁っていたりすればするほど症状が酷いわけだ。


 そして……フェンリルのオーラは濁った赤色?

 見ているだけで不安になってくるような色合いだ。


「こんな色のオーラ……初めて見ますわね」


 じゃっかん戸惑いながらも、私は治癒魔法を使い続ける。

 すると赤色だったオーラが、徐々に無色透明へと近付いていった。


 やがて。



「終わりましたわ。これでもう元気になったと思います」



 私はフェンリルの治療を完了し、振り返って国王とナイジェルにそう告げるのであった。


「も、もう終わったのか!?」


 国王からは驚きの声。

 ナイジェルも唖然としているようであった。


「はい。ねえ、フェンリル……じゃなくてラルフちゃん、もう動けるわよね?」


 私は優しく語りかける。

 するとフェンリルのラルフちゃんは、ゆっくりとその場で立ち上がった。


 しかし……久しぶりに立ち上がったためなのだろうか、ラルフちゃんが少しふらついた。


「あら、危ないですわ」


 私はすかさずラルフちゃんを支えてあげる。


 わあ……もふもふ。

 やっぱり気持ちいい。


 そして……ラルフちゃんは以前の感覚を取り戻したのだろうか。

 そう時間はかからず、私の支えがなくても立つことが出来るようになった。


 威風堂々とした佇まいである。でも可愛い。


「な、なんてことだ!? 今までどんな治癒士に見せても、全く回復しなかったというのに……こんな短時間でラルフが元通りになった!?」


「ラルフが立っている姿なんて、久しぶりに見るよ。それにラルフが初対面の人間に、体を普通に触らせるなんて……!」


 その様子に二人はさらに驚いているようであった。


 これくらいならお安いご用なのである。えっへん。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

シリーズ累計145万部御礼
Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1103
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000355043

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新7巻が発売中!
hev6jo2ce3m4aq8zfepv45hzc22d_b10_1d1_200_pfej.jpg

☆新作はじめました☆
「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ