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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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111/322

111・この先で合流しましょう

 階段を降りていくと、中は暗くじめじめした場所でした。


「どこまで続いているんでしょうか?」

「まだ階段は終わりそうにないね」


 私とナイジェルは隣り合って歩き、そう言葉を交わした。


 この地下空間に入ってから結構経つと思いますが……未だに階段が続いています。

 全体的にかなり古ぼけた場所で、いつこの階段が崩れてもおかしくないくらい……そんな感想を抱くくらい。


「他に罠はないみたいですけれど……気は抜けませんね」

「だね」


 ぴりぴりと張り詰めたような空気。


 辺りに警戒を怠らず、歩いていると……。



「レ、レレレレレティシア! 君のことはボクが絶対に守る! だから君は安心して、ボクの後ろに隠れておいてくれ!」

「……別にそういうのいいんだけど」



 後ろからクロードとレティシアの声。


 クロードはへっぴり腰ながらも、レティシアは背中で隠しつつ、私達に付いてきていた。

 当のレティシアは呆れ顔。

 戦闘の素人で、なんら魔法も使えないクロードに対して、レティシアは呪術のスペシャリストですからね。彼に守ってもらわなくても十分でしょう。

 なんならレティシアが彼を守らないといけない立場。


 とはいえ。


「なんか微笑ましいね」

「ええ」


 そんな二人の様子を眺めて、思わず笑みが零れる。


 クロードの両足は震えていて、今にも逃げ出してしてしまいそう。

 腰に携えている剣の柄を手でつかんでいる。

 でも護身用の剣でしょうし、とてもじゃないですが、それでまともに戦えないに違いありません。

 今にも逃げ出しそうなクロード王子でしたが、それでもレティシアを守ることで頭がいっぱいのようでした。


「お、おい! いつまで続いているんだ! 本当にこの先に魔王が封印されているのかっ?」


 クロードが声を荒らげる。


「この先になにがあるかは分かりません。ですが、わざわざ呪いで隠蔽され、魔法で施錠されていたくらいです。なにもないとは考えにくいです」

「エリアーヌの言うことも分かる。しかし……もしなにもなかったら?」

「その時はその時です。現状これしか手がかりがないのですから、仕方がないでしょう?」

「それはそうだが……」


 腑に落ちないクロードの表情。

 だが……私だって、その最悪の状況はなんとしてでも避けたい。


 そろそろ私がこの国に張った結界の効力がなくなってしまいます。

 だとするなら、待っているのは魔族との全面戦争なんですから。


「なんとしてでも私達は誰も死なずに、魔族との戦いに勝利する必要があります。そのためには魔王の復活は阻止し……きゃっ!」


 そう言葉を続けようとした時でした。


 クロードと話しをしながら歩いていたためでしょうか。

 そっちに気を取られて階段を踏み外し、転びそうになってしまう。


 しかし。


「おっと」


 すかさずナイジェルが私を支える。


「大丈夫かい、エリアーヌ。気をつけないといけないよ」

「え、ええ。ありがとうございます」


 礼を言う。


 ふわっとしたナイジェルの柔らかな手。

 こうしてナイジェルに触れられていると、幸せな気持ちになってくる。


 しかし幸せを噛み締めている場合でもありません。

 名残惜しい気持ちを抑えながら、彼の手から離れる。


「君にもしものことがあったら、僕はどうしていいか分からない」


 ナイジェルが眉毛をへの字の形にする。


「大袈裟ですよ。ただ転びそうになったくらいで……」

「なにを言うんだい。もしエリアーヌのキレイな顔に傷が付いたら、どうするんだ。どうやって責任を取ればいいか分からないよ」

「せ、責任って……! そもそもナイジェルのせいじゃないですし、やっぱり大袈裟です!」


 でもナイジェルの優しさが身に染みた。


 いつも優しいナイジェル。

 私の婚約者としてはもったいないくらい。

 まあもう今は「私は彼の婚約者にふさわしくない」と言うつもりはないですけれどね。


「…………」


 そんなやり取りをしていると。

 後ろからじーっとした視線を感じた。


「どうしました、クロード?」

「な、なんでもないっ!」


 ぷいっと顔を背けてしまうクロード。


「た、ただ! 仲が良さそうでなによりだと思ってな! ……ボクも君には罪悪感があったから」

「罪悪感?」

「その……なんだ。あの頃のボクはどうかしてたから。謝って許してくれるものとも思っていないが、こうして君を大切にしてくれる男の人を見つけられたようで良かった……と思っているだけだ」

「……クロード。変なものを食べました?」

「な、なんだと!? ボクの気遣いが変だと言いたいのか?」

「冗談です」


 くすくす笑う。


 魔族がこの国を攻め入ってから、クロードは大きく変わった。

 最初からこうしていればよかったんですけれどねえ。

 少なくとも()のクロードは、私に悪い印象を抱いていないよう。


 問題は……。


「……ふんっ」


 腕を組んで、私達を複雑そうな表情で見るレティシア。


 ……相変わらず彼女の考えていることが読めません。

 なにも仕掛けてこないですし、敵対しているわけではないんでしょうけれど……。


「とにかく先を急ごう。もう少しで階段も終わると……」


 とナイジェルが言葉を続けようとした時でした。



 ガラガラッ!



 そんな音を立てて、なんと私の足下が崩れ去ろうとしたのです。


「え、え。なにこれ!?」


 崩壊に巻き込まれ、下に落ちてしまいそうなのは私だけではなかった。


 レティシアも同じように、なにか近くのものにつかまろうとする。

 だが、なにかをつかもうとしてもそこが崩れてしまい、私達はにっちもさっちもいかなくなる。


「エリアーヌ!」

「レティシア!」


 なんとか階段が壊れるのに巻き込まれず、その場に踏みとどまるナイジェルとクロード。

 同時に声が聞こえる。

 二人が私達を助けようと、必死に手を伸ばした。


 しかし——それは寸前のところで届かず、私達はそのまま階段の残骸と共に落下してしまった。


「くっ!」


 ナイジェルがその場から飛び降りて、私達を救出しようとする。


 しかし。


「ナイジェル! 心配いりません!」


 私は声を張り上げる。


「魔法を使えば、落下の衝撃に耐えられます! この先で合流しましょう!」

「——っ——っ!」


 ナイジェルが口を動かす。

 でもその声は階段の崩れ去る音に混じって、聞こえなかったが……頷いているように見えた。



 ——やはり一筋縄ではいかないみたいですね。



 私は空中でなんとかレティシアの手を握り、そのまま落下していった。

真の聖女、書籍版が本日発売です!

よろしくお願いいたします( ´ ▽ ` )

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