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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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109/321

109・偽の聖女は仮面を外す

書籍版が2月2日に発売されます。

活動報告とこのページ一番下部に表紙画像を貼っていますので、ぜひご覧くださいませ!

 早速クロードと国王陛下に頼んで、私は玉座を調べることになった。


「やはり……ここになにかが巧妙に隠されているようですね。妙な違和感を感じます」


 玉座を触りながら、私はそう結論づけた。


「じゃあエリアーヌ。ここに魔王封印のなにかがある……と?」

「ボクにはなんら代わり映えのない玉座にしか見えないがな」


 ナイジェルとクロードが口にする。


 現在——玉座の間には私、ナイジェル。そしてクロード……さらには国王と何人かの騎士もいる。


 彼等は一様に私に目を向けていた。


「ええ。ただ……かなり巧妙に隠されているようです。おそらく魔法かなにかでロックされていると思うんですが……」

「エリアーヌでも分からないのかい?」


 私は首を縦に振る。


「おそらく、これを仕掛けたのは魔族でしょう。ここをあまり調べられると、都合が悪いので、このように隠蔽したと考えられます」


 私でも、よくよく注意して見てみないと分からなかった。

 今まで誰も気付けなかったのも、不思議ではない。


「しかし……エリアーヌでも無理だったら、もうお手上げじゃないか」


 クロードが肩を落とす。


「ああ、クロード王子の言う通りだ。現状、エリアーヌ以上に魔法に長けた者はこの国……いや、世界にもいないんだろうから」

「時間をかければ分かるかもしれませんが、みなさんご存知の通りあまり時間がありません。せめてこの違和感の正体だけでも分かれば、話は別かもしれませんが……」


 みんなで頭を悩ます。


 だけど、やっと見つけた手がかり。

 ここで諦めて、また振り出しから……というのは避けたい。


「ですが、悩んでいる暇もありません。私はもう少しここを調べてみます。クロードと国王陛下には、宮廷魔術師の方をお呼びして……」


 と言葉を続けようとした時であった。



「その必要はないわ」



 玉座の間に、強気な女の子の声が響き渡る。

 みんなは一斉に声の方を振り向く。


「レ、レティシア!」


 クロードが真っ先に駆け寄り、こちらに歩いてくる女性——レティシアのもとに駆け寄る。


「レティシア。もう体調の方は大丈夫なのかい? 顔色は随分良くなったみたいだけど……」

「エリアーヌ。ちょっとわたしにも見せてくれるかしら」


 レティシアがクロードの言葉を無視し、私に問いかける。

 私が頷くと、レティシアは玉座に近寄り、そこに手を当てた。


「……やっぱりね。これは魔法じゃなくて()()。それによって、入り口が封鎖されている」

「入り口が封鎖?」

「ええ。わたしの見立てでは、その呪いが鍵になっている。これを解除することが出来れば、地下に続く道は開かれるはずよ」


 レティシアは迷いない口調でそう言った。


 なるほど……呪いですか。

 私は呪いについては専門家ではありません。どうしても、呪術師の方に比べて劣るのです。


 だけど……アルベルトの一件から分かる通り、レティシアは呪術師。

 しかもその中でもかなり優秀な部類。

 だからこそ、玉座に仕掛けられた呪いも看破することが出来るのでしょう。


「レティシア……その喋り方どうしたんだ?」


 後ろからクロードが恐る恐る問いかける。

 確かに……私の記憶では、レティシアはもっと砂糖をふんだんに使ったお菓子のような、甘ったるい喋り方をしていた。


 でも……今はそのことを追及している場合でもない。


「わたしの力じゃ、呪いを解除することは不可能だわ」


 レティシアはクロードの問いを無視して、続ける。


「呪いを仕掛けてきたのは、この国を支配していた魔族……とも考えられるけど、きっとそれは違う。ヤツ等に、死んでもなお発動し続けるような呪いを作ることは出来ない」

「ということは……?」

「きっと、もっと強大な存在。その怨念が封印場所を人間達に悟られないように、これを仕掛けた……んだと思う」


 もっと強大……上級魔族以上となれば、後は始まりの聖女か魔王?


 でも始まりの聖女が呪いを使えるものとも思えないですし、魔王の線が固そうですね。

 だんだん核心に近付いていくような感覚でした。


「ともかく、これはかなり強力なもの。わたしでは解除することが出来ない。でもエリアーヌなら……」

「ええ」


 そうと分かれば話は早い。

 私は目を瞑り集中して、一瞬で呪いを解除した。


「よし、これで呪いは……あら? 床のこことここが不自然に色が変わっています。まるで後から付け足したみたい。もしかして……」


 私は試しに、床に手を当て魔力を送り込んでみる。


 するとなんてことでしょう。

 床が光を放ち、やがてそれがなくなった時には地下へ続く階段が現れたのです。


「当たりだったようですね」


 覗き込んでみると中は暗く、階段は長く続いているようでした。

 さらに奥から今まで感じたことのない魔力や怨念も感じる。


 足がすくんでしまいます。

 でも……この中になにかがあることは間違いなさそうです。


「レティシア、ありがとうございました。あなたに言われなければ、呪いだと気付かなかったでしょう」

「どういたしまして」


 レティシアが素っ気ない様子で、ぷいっと私から顔を背けた。


「どういうことだ……? レティシア、どうしてエリアーヌでも気付けなかったものに君が気付ける? しかも呪いって……」

「ああ、簡単よ。だってわたし、()()()だから」


 どうするんでしょう……と見守っていると、レティシアはあっさりと口を割った。


「……は?」


 クロードはぽかーんとした表情。

 どうやら理解が追いついていないようです。


「ふふふ、どうしたんですか。あなた、その様子だと呪術師だということは隠していたのでは?」

「もうどうでもよくなったのよ。それに……そんなことを言っている場合でもなくなった」


 そう口にするレティシアの表情を見ると、以前とは様変わりしているように思える。

 前はもっと子どもっぽい表情だと言うんでしょうか……でも今は覚悟を決めた大人の顔になっていた。


「私はそちらの方が好きですよ。最初からそうしておけばよかったのに」

「……ほーんとにね。わたし、なにを考えていたんだろう。こっちの方が楽なのに」


 と苦い表情のレティシア。


「まあ……あなたが言った通り、でも今はそんなことを言っている場合でもありませんね。早速この中を進んでみましょう」

「エリアーヌ、僕も行くよ」


 一歩前に踏み出すナイジェルを見て、私は頷いた。


「……正直、儂にはなにが起こっているか分からぬ。しかし大事なことであることは間違いなさそうだ。良ければ、王国自慢の騎士も何人か連れて行った方がいいのではないか?」


 国王はそう提案してくれるが、


「いいえ、結構です。心遣いは嬉しいですが、中でなにが起こるか分かりませんから」


 と丁寧に断る。


 ……とは言ったものの、本当のところは足手まといになると思ったから。

 さすがに私、そしてナイジェルでも、みなさんを守りながらは難しいのです。中は狭そうだし、動きにくくなる可能性もありますしね。


「じゃあナイジェル。早速……」

「待って」


 私が地下へ進もうとすると。

 レティシアが胸に手を当て、真っ直ぐな言葉でこう言った。


「わたしも連れて行って。足を引っ張らないようにするから」

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「第二の聖女になってくれ」と言われましたが、お断りです
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