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真の聖女である私は追放されました。だからこの国はもう終わりです【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

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108/321

108・男同士の友情

「やはりここにいましたか。ドグラス」


 この街の時計塔。

 王城の次に高い建物で、ここからだったら王都全体を見渡すことが出来る場所。

 そこの最上階にドグラスはいました。


 ふちに腰掛けて空を眺めるドグラスに、私は話しかけた。


「どうした? 魔王が封印されている場所を、無事見つけ出すことは出来たのか?」


 ドグラスは私の方へ振り返って、そう問いかけてきた。


「いえ……全く分からずじまいです。だからドグラスともう一度話がしたくって」


 私はドグラスの隣に腰を下ろす。


「我か? 残念だが、我も知らないぞ。大昔の戦争とやらは我が生まれる前だった。我には封印場所など見当付かん」

「それでも……です。こうして言葉を交わしていたら、なにか閃くかもしれないでしょう?」

「ガハハ。まあそうかもしれぬな。しかしそうなら、念話を飛ばしてくれればすぐに汝のところに向かったというのに。わざわざここまで来てくれたのか」

「ええ。ドグラスの手を煩わせるのも悪い気がしましたし、私もここから街の風景を眺めてみたかったので」

「我は別に——まあ汝がそう言うなら問題ないが」


 とドグラスは前を向いた。


「風が気持ちいいですね」

「うむ。随分涼しくなってきたしな。王都で見つけた、我のお気に入りの場所だ」


 ドグラスがそう言うのも頷ける。


 こうして王都を一望するのは、何年ぶりのことでしょうか? 

 少なくとも聖女になってからは一度もありませんでした。


 街は魔族に蹂躙された爪痕が、未だに残っている。人々の不安も拭えない。


 しかし……それでも、国民は力強く復興しようとしている。

 潰されかけても、何度でも立ち上がろうとするのが人間の良いところかもしれませんね。

 この風景を見て、なんとなくそう感じた。


「あら、ドグラスの肩に鳥が……?」


 横を向くと、ドグラスの肩に小鳥がとまっていた。

 その小鳥の口にドグラスは指を近付ける。


「ここで休憩していると、よく来るのだ。くすぐったいったら、ありゃしない」


 ドグラスはそう口では言うものの、ちっとも不快そうにはしていなかった。

 それどころ、口元にはうっすらと笑みが浮かんでいるくらい。

 小鳥も安心しきっているのか、ドグラスが指を近付けても逃げようとすらしていなかった。


「ふふ。きっとあなたのことを信頼しているんですよ。あなたなら、害を与えないって」

「そうか? 鳥も休憩したかっただけだろう。こいつにとって都合が良かっただけだ」


 照れているんでしょうか。

 ドグラスが頬を掻いて、そう答えた。


 私は小鳥ではない。鳥視点のことは分からない。

 でも……こうして鳥達の気持ちを考えると、私の意見もドグラスのものも間違いではない気がした。

 鳥は喋ってくれないから分かりませんけれどね。


 ……ん?

 待てよ……。


「鳥視点……?」

「どうした、エリアーヌ」


 考え込む私の顔を、ドグラスが覗き込む。


「……今まで私は視野が狭くなっていたかもしれません。自分達のことしか考えられませんでした」


 それは二週間というタイムリミットのせいかもしれません。


 しかしこうして王都を一望し、鳥達の気持ちを考えることによって、私に別の視点が生まれていた。


()()()()で考えたら?」

「なにをぶつぶつ言っているのだ」


 ピンときていないのか、ドグラスが首をひねる。


「クロードから聞いたんです。上級魔族のバルトゥルは、本来国王陛下が座っていた玉座に座り、あまりそこから離れようとしなかった……と」


 フィリップ達のところへ攻撃を仕掛ける前は……ね。


「それがなんなのだ? ただ支配者ぶりたかっただけだろう、ヤツ等は」

「その通りかもしれません。しかし……もしなにか理由があるなら? そこから離れようとしなかった理由があるなら?」


 それは小さな小さな引っ掛かりだったかもしれません。


 バルトゥルはこの世界を支配しようとしていました。それは狭い魔族界ではなく、もっと広い世界を欲したからに違いありません。

 それなのに、わざわざそんなに広くない玉座の間に閉じこもる必要性がどこに?


「うむ……もしかしたら、バルトゥルはなにかを怖がっていたかもしれぬな。そこになにかがあって、それを守ろうと……あ」

「ドグラスも気付きましたか」


 ドグラスもハッとした表情になる。


()()になにかがある……と」

「ええ。まだ分かりませんが、調べてみる価値はありそうです」


 私はその場からゆっくりと腰を上げる。


「調査も行き詰まっていたところです。クロードにも言って、今から玉座を調べてみます」

「ふむ、それが良いかもな。エリアーヌ、我は行かなくていいのか? そこにもしなにかあるなら、危険に……」

「いえ、ドグラスは引き続き王都の警備をお願いします。なにかあればすぐに念話を飛ばしてください。結界はまだあるものの、時間が経って効力が薄れています。魔族が攻め入ってこないとも限りませんから」

「分かった。上手くいくように祈っているぞ」


 そう言って、ドグラスは拳を突き出した。


 一瞬なんのことか分からなかったが、私も拳を作って彼のものとカチンと合わせた。


「お任せください。ドグラスも頼みましたよ」

「ああ」


 こうしていたら、心と心が深く繋がった気がした。

 男同士の友情……ってこんな感じなんでしょうかね?


 ドグラスと一旦別れ、私は再び王城に戻った。

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