第2話 決死の覚悟
やっハロー♪蘭丸です^^*
ここまで書いてみて、やっぱりファンタジーなら、常識を覆す程の事をしなければ、誰もが知ってるただの夢物語などになってしまう。
だからこそ、僕は常識にとらわれず、だけどどこかありそうな話を描いていきたいと思ってます^^*
ですので、これから先も皆様と楽しんでいけたらいいかな?なんて思ってますので是非読んでいって欲しいにゃんฅ^•ω•^ฅ♪
「ハァ……ハァ……。こっちは前見るだけでも精一杯だってのに! 全く距離が広がらねぇ! くっそォォォォ!!」
青年は、洪水にでもあったかの様に、身体中に汗や冷や汗など大量に水分を流して、背後から迫り来る死の恐怖から息を切らし、胃から逆流しそうな酸の苦味と痛みを喉元に感じ、目も霞んできても決して立ち止まる事なく走り続けていた。
それでもーー。
「グルァァアア!!」
天をも引き裂く様な轟音の咆吼と、刃物より強靭な剥き出しの牙を光らせ猛威を奮って襲いかかって来る。
もはや神獣を目にした者は肉食獣なんかはかわいく見えると誰しも口を揃えて言うだろうーー
さらに、人間は精神的に脅威や恐怖に晒され続けると、ある一つの行動に辿り着く時があるのだーー。
今の彼の精神状態を例えれば、説明する間でもないのだろうが、これ以上逃げ続けても体力が切れるのが先か、追いつかれるのが先かという危機的状況で、たいていの人なら隠れるか泣きわめくかするだろう。
しかし、この青年は意を決して立ち止まったのだ。
そうーー。
「もういい。これ以上はただの時間の無駄だ。どうせ喰われるくらいなら、一か八かに賭けてやる! 来いよ、化け物!! 獲物を襲う事しか脳のないテメェに、人様の力がどれだけ最強かって事を、その体にたっぷり刻み込んでやるよ!!」
例え、自分の能力が死の恐怖に到底叶わないと分かっていても、ここぞと覚悟を決めて本気で立ち向かうという決断をくだすのだーー。
「グルルァァァ!!」
覚悟を灯した青年の強い眼差しと正面衝突した巨大神獣は、再びけたたましい咆吼と獲物を殺す様な冷徹な眼光で覇気を全身にぶつけてきた。
決して、互いにどちらも引くことなく、大気が張り裂けそうな緊迫した真っ向勝負の戦闘態勢へと突入するーー。
「くっそ! やっぱ、手足どころか身体中が震えてきやがる……」
巨大神獣の咆哮を正面から受けただけで感覚や神経が隅々までちぎれ飛びそうになった挙句、全身に覇気を浴びせられた青年は、心底震えが止まらなくなった。
『一瞬でも早くこの恐怖から逃げだしたい!』
「でもな……。俺はこの恐怖を乗り越えて、絶対に生き延びてやるって決めてんだよ!」
ここで退くという事は、つまり確実に死を意味する行動となるため、まだ歳にして18という若さの青年は、死の恐怖と闘う事を自らの意志で選択したのだ。
「すぅーっ……フゥ……。よしっ! 覚悟しろよ化け物! ここでてめぇをぶっつぶして……!!」
青年は、しっかりと呼吸を調え、震えを武者震いに変えて拳を握りしめ、巨大神獣ケルベロスに渾身の一撃をぶち当てようと駆け出したその矢先ーー
「って……うぉわぁぁぁぁああ!!」
巨大神獣は見計らったかの如く巨大な両腕で地面を叩きつけたのだ。
大地が割れる様なひしめきと共に、なんと彼の立っていた足場が崩れ、森の破片ごと真っ逆さまに落っことされた。
まるで異物を軽く叩き落とすかの様にーー。
俺を散々追い回し、恐怖のどん底まで落とされた事以上に、闘う前から恥をかかされたアイツだけは絶対に許さない! と青年は薄れゆく意識の中で、確かにそう誓ったのだった。
どれだけの時が経過しただろうかーー
やがて、真っ暗だったこの地球に、眩しい朝やけが希望の光の様に、そっと世界を照らし始めた。
時を同じくして、森の破片ごと墜落させられた青年は、崩れ落ちた足場の上で暖かく優しい朝陽に抱かれる様に、心地よさの余韻を残して再び目を覚ました。
「うぅー……もう朝か。あれからどうなったんだ?」
『よしっ! 覚悟しろよ化け物! ここでてめぇをぶっつぶして……って、うぉわぁぁぁぁああ!!』
「そっか……。俺、あそこから落とされたんだ。ったく! これは悪運冥利に尽きるな」
彼は、身体に受けた痛みを引きずる様に、肩に手を当てて冷静に状況判断を済まし、落下時の回想を思い出していた。
「それと、ここはどこなんだ? 見た限り静かで穏やかな街みたいだけど」
目の前に広がる賑やかだが、どこかのどかな暮らしを匂わせる街並みに目をやった。
この街の建物は茶色の屋根に、クリーム色の壁、多種類の形の家屋がずらりと建ち並び、街の中央には噴水広場、ところどころに小さな花も咲き誇り、小鳥がさえずり渡る街だった。
「へぇー。お店はこじんまりとしてる割に、なかなかの客の数だな。年齢層にもあまり偏りはないみたいだし。この街なら、あんな地獄絵図なんかさっさと忘れて、のんびりと平和に暮らせそうだ!」
青年は、森の中での出来事を胸の奥にしまい込んで、平和な街の風景に平穏と安らぎを感じつつ、スイングドアの個人店が建ち並ぶ大通りをずっと真っ直ぐに進んでいくーー。
やがて、大通りの突き当たりに、眩しい陽光の差し込む出口を通ると、そこには辺り一面に心を落ち着かせる風景が広がっていた。
なんと、風が吹き抜ける度に、青々とした草原が、耳を優しく撫でる様にささめき合い、水車や風車までが元気に回り始める農場へと辿り着いたのだ。
まるで、大空と大地が一蓮托生して、一つの光景を創り出しているかの様にも見えたのだ。
『なんて綺麗な風景なんだ』
青年は、街はずれにこんな穏やかな場所がひらけていたなんて、思いもしていなかったため、瞳を輝かせて景色を見渡した。
すると、1本の大きな広葉樹の下でカーキ色のロングパンツに、純白の白衣を身に纏った高身長の女性が、草原の上で気持ち良さそうに眠っているのを見つけた。
「こんな所で昼寝なんて、間違いなく気持ちがいいだろうな。 それにあの人、白衣を着てるってことは研究者かなにかか? なら、この街についてもっと聞いてみたい!」
他に目的もなかった彼は、草原の上で横たわっている女性が、この街の研究者なら、もっと詳しくこの平穏な街を知りたいと思うと、すぐ傍まで駆け寄ってしまっていた。
『これが全ての始まりになるなんて、誰が予知できただろうかーー』
「綺麗な人だなぁ。まるで……女神みたいだ」
彼は、白衣姿の女性の寝顔に釘付けになってしまい、しばらく眺めているとーー
「ん、うぅー……ん。この世界は、ほんとに綺麗で優しさが溢れてる! まだこんな素敵な場所が残っていただなんて。全ての世界がこんなに穏やかで、平和になってくれたら、争い事さえ起こりもしないのに。ねぇ? あなたもそう思わない?」
すべすべした白肌の女性が、ゆっくりと目を覚まし、気持ちよさそうに伸びをした後、青年に不思議と自然に共感出来るこの世界についての問を語りかけてきた。
次の瞬間、草原を横切る様な風が通り過ぎると、白衣の女性は目を瞑り、さらりと長い銀色をした、陽射しを浴びて湖が反射しているかの様に、美しく煌めく髪を耳にかけていた。
「えっ……と、ごめんなさい! そんなつもりじゃなくて……」
その光景を見た青年は美女の麗しさに見惚れて聞かれたことすら忘れていた。
ふと我に返ると、なにを喋ればいいのか分からず動揺して、ふいに謝罪をしていた。
『俺はなにを謝ってんだ!』
「え?ふふっ、あなたっておもしろい人ね。世界の選んだ希望の光があなたみたいな人なら私も嬉しいわ。」
一瞬、不思議そうにあどけない表情でこちらを向くと、女神のような笑顔でくすりと微笑んだ。
まるで意味あり気な言葉を言い残してーー。
「待てよ? 世界、争い、平和、希望の光……!? この人はさっきからなにを言っているんだ?」
そう言い終えた途端、青年の瞳は丸くなり呆然と立ち尽くすと、瞬時に彼の表情は青ざめていき、俯いてしまった。
『なんなんだよ、これじゃあまるでーー』
「さてと、自己紹介がまだだったわね。私の名前はグレース=ネイトよ! 気兼ねなくグレースさんって呼んでね!」
「もし良かったら、あなたの名前も教えてくれるかしら?」
でも、そんなのお構いなしに、彼女はにこやかな笑顔で話を進めていく。
「俺の名前は……」
「あっ、いっけない!大事な事を言い忘れてたわ」
青年は、俯いたまま小声で呟くも彼女に聞こえている様子はない。
『そんな事より、この女は一体何者なんだ!?』
「これから私もあなたの女神として、守護者にさせてもらうからよろしくねっ!!」
『そういうことかよ!』
これで、今まで起きていた不可思議な事象の理由が全て解明された。
そして、"現実”ではなく、"異世界”という新たな仮説が証明されたのだ。
その途端、これから進む先の未来に、不安や焦燥感という大きく口を開けて立ちはだかる壁が、彼には何重にも見えたのだったーー。
「おもしれぇ!!」
その途端、青年は全身震えているようにも見えたが、口元だけ噛み締めながら、どれ程の恐怖が待ち構えているのかという事で頭がいっぱいになり、胸騒ぎで苦笑いになり一言呟いたのだった。
いやぁ、次から次へと新たな出来事が起こっていくのは多分、皆様も、誰しも思う事なんじゃないかなぁ?
かく言う僕もそんな展開にドキドキハラハラしながら書いてますので^^*
これから、青年はどんな未来を作っていくのか凄く楽しみですにゃんฅ^•ω•^ฅ♪