わりと本気で願ってました
今日は推敲が終わりしだい、あと二話投稿する予定です。
「今後のご活躍お祈り申し上げます」
「ご縁がなかったと言う事で」
「今後のご健闘をお祈り申し上げます」
冒険者となって早七年、種類は違えど、そんな言葉を僕は腐るほど聞いてきた。どれも事務的で、修道服を着ていれば良いってものではないと思う。しかし、それら冒険者パーティを恨む気持ちはこれっぽっちない……って言ったら嘘になるが、結局は自分の問題なので仕方ないと言えた。
僕のジョブは──ジョブとは冒険者の才能と基本的な役割を示す言葉──<魔法使い>であるのだが、いわゆる<火球>といった基礎的な攻撃魔法がほとんど使えないのだ。代わりに<毒霧><毒沼><麻痺霧>などの状態異常系や、敵のステータスを下げる<鈍足><防御低下>などのデバフ魔法を得意とする。デバフは強敵でない限りそこそこ役に立つのだが、状態異常系が問題であった。
それは味方も漏れなく巻き込んでしまう事だ。無駄に範囲が広いし、かと言って調整も出来ない。視界を遮る事も多く、遠距離役からも顰蹙を買う始末。強い耐性を身につけられる魔道具などがあれば良いのだが、そもそもそんな物を持っている時点で、僕の実力とは掛け離れているためパーティを組む事はない。さらに、状態異常にしたければ弓のスキルを扱える者が居れば、単体に付与する事が可能なのも使いにくさに拍車をかけていた。
つまり、デバフが必要なら攻撃魔法も扱える者を、状態異常なら<弓使い>のジョブを持っている者を、と中途半端な僕ではなかなかクランに入って固定のパーティを組む事が出来ない状況であった。
ここまで、状態異常は使いにくいなんてツラツラと述べてきたが、上手く扱えていた強者が居なかったわけではない。例えば、<巨像>を用いる事によって、状態異常を十全に扱った者がいる。強力な<巨像>であれば、猛毒の中でも、荒れ狂う雷の中でも、燃え盛る炎の中でも問題無く戦え、敵だけが苦しむ事になるだろう。しかし、僕には<巨像>を作り出す才能も、買う資金も無いのだ。
「……はぁ〜」
僕のため息が玉座の間に広がる。
玉座に腰掛け、力を抜いて炙られたスライムのようにだら〜っとする。
ん? 僕が居る場所?
魔王城だよ魔王城。文字通り魔王が使っていた城だけど、今では廃墟同然だし、<飛行>の魔法で来れるので僕は一人になりたい時に良く利用しているんだ。
取り壊されないのは既に防衛能力がなく、壊すのにも骨が折れるからだ。他にも訪問者や観光地化していないのは、立地の悪さと結局最終決戦に使われなかったためだ。ちなみに居たのは影武者。まぁ、素直に魔王が魔王城に居る必要は無いよな。居る方がおかしいってものだ。
……って、魔王城の事よりも今は自分の事だ。
どうしたものか……一応、諦めの悪い僕は攻撃魔法の習得を目指して私塾に通ってはいるが、成果は芳しくない。いっそ、<剣士>にでもなろうかと剣技を習った事はあるが、やはりステータスで才能があるとわかっている人との差は歴然であった。まだ状態異常を使っていた方がマシである。
「…………このままやってくしかないかぁ」
二つの特技を伸ばして、地道やっていけば何か突破口があるかもしれない。きっと、真面目にやっていけば報われるはず……報われる、よな?
「……はぁ〜、世界滅びないかなぁ〜……ん?」
そんな、冗談半分の言葉を口にした瞬間、僕の座っている玉座が動き始めた。
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