熱砂戦線・油田の嫌いな女子なんていません!
「やったー!大当たりー!この油田の運営会社の株価と原油市場の乱高下って、すごーい!」
部屋は小さく、普段から片づけはしているものの、部屋には男子同士の恋愛を描いた、いわゆるBL系漫画やコレクションだったり、そうでなくとも少しマニアックな、いわゆる絶版モノの本とかが大量に収められた本棚、そして高性能な最新鋭ハイエンドモデルのデスクトップパソコン。それを収める部屋はいわゆる億ションとかいう風に言われる高額な分譲マンションの最上階丸々1つを、その少女は手にしていた。
その少女は人と少し変わっていた。人と変わっているゆえにアニメやゲームといったものを愛し、それを仕事にしたいと思っていたが、大学入学してすぐにドロップアウトした後、始めたのはこのディトレーディングや先物取引といったギャンブルだった。
最初の軍資金は高校時代同人誌即売会で有名サークルに参加しての作品が評価され、イラストを描きはじめ、プロのイラストレーターになれるというレベルのイラストの力で手に入れた100万が切っ掛けだった。
吸収合併されるかどうかという委任状争奪戦で市場価格よりも破格の高値で買い取る株があったり、地味な工作機械メーカーが突如評価されたり、逆に評価されなくなったアニメ制作会社が逆転の作品が劇場公開と同時に株価が跳ね上がっていくとか、ビギナーズラックを成し遂げれば、気が付けば平均的な生涯年収の3人分ぐらい稼いでいるという状態だった。
サークル時代でのイラストも評価され、今でも人気の小説などのイラストを描くプロになってもやはり投資はやめず、今度は石油関係の会社と原油先物取引を始めてみた。
結果、直感はどんどん当たり、安定的に儲けを出すという状態だったりする。
「うんうん、荒れているときってスゴイから、勝っても負けても楽しー。油田が嫌いな少女っていないよね!」
ゴスロリ服を着ている少女はそういうとパソコンで市場を見ていると電話がかかってくる。
「はい、あ、いつもお世話になってます。えっと、今度の新作の書き下ろしイラストですよね?色を付けてないサンプルは完成しましたよ。やだですよー。いくら油田少女なんて煽られても顔出しはNGですからー。取材は覆面でお願いしますー」
そうやって儲けている少女は知らない。
彼女が買い付ける原油は紛争で奪い合う聖地から掘り出されたもの。
彼女は知らない。
その石油を巡って同じ国の者たちが血で血を洗う戦いをして、砂漠に血が流れている。
彼女は知らない。
石油利権を巡って民間軍事会社が介入し、混沌を導いていることを。
彼女は知らない。
その混沌こそが彼女が売買する石油の差額となり、乱高下する原因だと。
そう、彼女以外の人間も知らない。
知っているのは現場で戦う兵士たちばかりだからだった。
今回、油田大賞に応募出来てよかったですよ。
乗りと勢いとマニアックな思いで書いてみた作品ですが、いかがでしょうか?
このイベントを紹介してくださった 江本マシメサさん
企画の立案、運営をなさっている やしろ慧さん
このご両名と企画に賛同して作品を書いているすべての戦友に感謝を。