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六十八話


 アルリーフさんの背中にあるカルマブレイズの核と呼べる部分が光った様に見えた。


「それを愚かなんて、絶対に認めません!」


 それほどまでのアルリーフさんの示す意志は力強く辺りに響き渡る。


「ムウウウウ!」


 ムウもいつでも相手になると斧を振りかぶって構えて叫ぶ。


「邪教徒め……竜殺し達よ! 何を呆気に取られている! 早くドラゴンにトドメを刺せ!」

「くっそ!」


 物凄く体が重い感じがするけれど……俺はクロスボウを手に持っていつでも臨戦態勢に入る。


「コーグレイ……」


 未だに迷いのある表情をセリスさんはしている。


「セリスさん……」


 俺がセリスさんと話をしようとした矢先。


『汝……く、気をつけろ!』


 ヴェノの警告で辺りを見渡す、すると司祭の配下が先制攻撃とばかりに炎の魔法を放ってきた。


「ギガフレイムバースト!」


 アルリーフさんのファイアブリッドと匹敵するほどの大きな火の玉だ。

 ボルトで迎撃出来る様な代物じゃない!


「アクアショット!」


 反射的にアルリーフさんが大きな水の散弾を飛ばす魔法を放って相殺を試みる。

 ジュッと司祭達とアルリーフさんの魔法がぶつかって大きく水蒸気が発生、その水蒸気を貫いて炎が俺達に向かって飛んでくる。


「うおっと!」


 急いで受け身を取りつつ横っ跳びをしてどうにかみんなでかわす。


「小癪な真似を!」

「次はこれです。ファイアバット、アクアアロワナ、ウィンドスパイダー!」


 アルリーフさんが魔法を唱えるとそれぞれが形を作り出し、炎の蝙蝠、水で形作られたピラニア、そして風を纏う透明な蜘蛛が形作られた。

 ヴェノから教わった魔法をもう習得していたのか!

 炎の蝙蝠がアルリーフさんの近くで舞っていて火の粉が幻想的な光景を形作る。


「私の魔法は少しばかり我慢が出来ない子ですよ」

「奇妙な魔法を……! そんな魔法、私達が即座に消し飛ばしてくれる!」


 アルリーフさんと司祭が睨み合いを続ける。

 そして司祭が部下の魔法使いと共に魔法を放とうとした直後。


「司祭様!」


 ガツンと地面に剣先を付けて音を立て、セリスさんが司祭に殺気を向ける。


「これは私達とコーグレイ達の戦い! 今、横槍を入れる事を私は非常に不服に思う!」

「目の前にドラゴンがいるのだ! そんな感傷に浸ってどうする!」

「正当な決闘を私はこれから行おうと言うのです! コーグレイがドラゴンであっても、私は……正々堂々と聖世界樹教の教義に乗って一人の正当な戦士として、戦う! だがら余計な真似はやめてもらおう」

「く……」


 どうやら聖世界樹内での戒律的なものでセリスさんは司祭の横槍を防いだっぽいな。


「みんなもここで見ていろ! 私は……神聖な決闘のつもりで挑む!」


 周りの竜殺し達はセリスさんの言葉に沈黙を持って応じている。

 その様子には若干の迷いが見えている様に感じた。


「アルリーフさん、ムウ」

『時間を稼ぐ。まだ話し合いが出来る余地があるのでな……我が考えた、ここから脱出する方法を言うぞ』


 セリスさんに合わせて大人しく成り行きを見ていて欲しいと視線で合図を送る。

 ……セリスさんは俺と戦うつもりなのか剣を向けたまま動かない。

 いや――!?

 俺は咄嗟に大きくバックステップをする。

 すると俺がいた場所にセリスさんが大きく剣を振りおろしていた。


「セリスさん!」

「コーグレイ! 本当に貴殿がドラゴンであるのか?」

「……ここで『はい』と答える人がいますか?」


 それは聖世界樹教の敵としてここで絶対に殺される返答だ。

 俺にヴェノが本当に憑依されていなくても『はい』と答えるはずがない。


「だろうな。であるからこそ、私から提案する」


 凄い速度でバックステップをした俺の眼前まで近づいて語りかけて来る。

 くそ、俺達の実力差ってこんなにも離れているのか!?

 一体どこまでLvを上げたらセリスさんと戦える位まで行けるのか見当も付かない。

 俺はクロスボウからボルトを一本取り出し、毒付与をしてから自らの腕に突き刺す。


 最近、Lvが上がったお陰で少しだけ濃度を引き上げたアルリーフさんの毒料理の毒素と、鈍化毒のブレンド品をだ。

 カッと、低下した能力を超えて能力上昇が発生する。

 これで少しはセリスさんの動きに対処出来るはずだ。


「何をですか?」

「コーグレイ、私が責任を持って貴殿を捕縛して保護する。その元で貴殿が本当にドラゴンであるのか、正式な術式で証明をさせてほしい」


 ああ、やっぱり司祭が唱えた魔法に関して半信半疑だった訳ね。

 本当にドラゴンが変化した人物であるかをセリスさんは証明させたい……いや、違っていて欲しいと願っているんだ。


「こちらをとても尊重し、無実を証明したいというセリスさんの気持ち、痛いほどの感謝いたします。ですが……生憎と受け入れる事は出来ません」

「何故だ!?」


 まだ迷いのあるセリスさんは凄い速度で俺の腹目掛けて剣を面で叩きつけようとして来る。

 当たったら一発で昏倒しそうな攻撃だ。

 だけど、この程度の速度ならまだどうにか出来る!

 毒料理ブーストを舐めるな! サッと避けて横っ跳びしつつボルトを連射する。

 引き金が凄く軽い。

 ちょっと反動が強いけど、それもまたセリスさんの読みを外す助けになっている。


「わからないんですか?」


 ドラゴンかどうか、白か黒であれば黒だから、とは言えない。

 けれど、こんな状況だからこそ言える言い訳もある。


「セリスさん、貴方だってわかるでしょう? セリスさんを信じる事は出来ても他の方を信用する事は出来ません。ましてや最初から犯人だと思っている方々だ。セリスさんの目を盗んで如何様に答えを変える事が出来る」

「……」


 それがわからない程セリスさんも愚かではない。


「だが、それでも私は、信頼のおける者にしっかりと見極めてもらう。だからこそ、コーグレイ、私は力ずくで貴殿を捕らえる!」


 無実を証明する為に、とセリスさんの続く言葉が聞こえた気がした。

 うん。今にも殺されそうだけど、セリスさんが迷いながらもどうにか答えを絞りだそうと俺に挑んで来ているのが伝わってくる。


『……どうにか調査魔法を隠蔽して隠し通せれば捕まってもどうにか出来そうではあるのだがな』


 いやー……さすがにそれは難しいでしょ。

 どうして俺が狙われてるか、俺のやった実績だけを集めた結果がわかる。

 ニスア村に関しては関係ない。

 おそらくドラゴンフォールスチャールヂュの亜種を解除してしまった事に由来すると見た。

 権力を持った裏で糸を引いている奴からしたら非常に都合が悪い。

 白だとしても間違いなく黒にして来る。


『そうであろうな。だが、この竜殺しは信用の出来る者で、とも言っていたではないか?』


 そうなったら最悪だ。セリスさんまで何らかの方法で暗殺されるだろう。

 ドラゴンの毒牙に掛かったんだ! とかね。


 むしろ後ろで糸を引いている奴が何者であるのかを知る方が先だ。

 楽なのはあの司祭辺りを捕まえて白状させるのが楽そうだけど……セリスさんクラスの猛者がいるこの場でそんな真似が出来るはずもない。

 本当、ヴェノ特製の自白剤でゲロゲロ吐かせてやりたい位だ。


『ふふふ……それは良いな。本来、我の好みではないが、ああ言う者を苦しめるのは罪悪感が薄れる』


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