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六十六話


 翌日。


「申し訳ないが私はこれから用事で旅立つ事になった」


 セリスさんがみんなで朝食を食べている最中にそう切り出した。


「そうか」


 ウェインさんはセリスさんに無骨な返事をした。


「それで、作ってもらっている剣に関してだが――」

「既に試作した一振りは作らせてある。加護などの調整が不満な所だが、それを持って行け。刃こぼれした剣じゃ仕事にならんだろ」

「だが――」

「良いから受け取れ」


 ウェインさんは新聞を読むように黙々と食事をしながら無愛想な感じでセリスさんに言いつける。


「……わかった。感謝する」

「コーグレイ、お前のも作ってある。キノコの方は弟子共が遊びで作っていたから完成するまではそれでも使っていろ」

「ムー!」

「あ、ありがとうございます」

「随分といろんな物を持ちこんで来たみたいだしな。腕が鳴る。じゃあ先に行かせてもらおう」


 そう言ってウェインさんは鍛冶場へ行ってしまった。

 ……日に日に筋肉が盛り上がって行くのが見えるのは俺の気の所為ですかね?


『いいや、少なくとも我の目からも昨日より膨らみが増しておった。宿屋のおかみと同じ体質だろう』


 一体何なんですかね。


『いつ病が再発するかを恐れて少しでも武具を作りたいのか、それとも良質の鉱石を得たから一刻も早く仕事をしたいのか、汝はどっちだと思う?』


 出来れば後者であってほしいなぁ。

 元気過ぎるって言うのはわかった気がする。

 そんな訳で俺達は朝食を食べ終えてからその足で鍛冶場に向かった。

 すると鍛冶場の人達が俺達を見るなり、ウェインさんが作り上げた武具を持ってきてくれる。

 セリスさんは一振りの綺麗な剣だ。


『む……よく出来た剣だ。我の宝センサーが反応しておるぞ!』


 ヴェノがなんかセリスさんが受け取った剣の方に意識を向けているけど、俺の方はっと。


 ラピッドエルバオリハルコンクロスボウ+6 品質 高品質 必要装備Lv 最低Lv基本職45~

 付与効果 連射 オートリロード 魔力増加 弾速上昇 威力向上 毒矢装填&威力向上 命中補正(中) リミッター

 連射性と威力、汎用性に重きを置いたクロスボウ。

 やや重量が増したがそれを差し引いても驚異的な連射性と軽さを誇る。

 威力の問題点も解消されており射程も伸びている。使用者の意志に合わせて矢に自動で毒を付与可能であり、ボルト以外の物も発射可能。

 難点はボルト以外を使用した場合、連射性が落ちる。構造の簡略化を測り、メンテナンス性も向上しているがその分、魔力に頼っている所がある為、使用者にはそれなりの魔力が必要となる。

 優秀であるがその分、持ち手を武器自体が選ぶ傾向があり、真の力を発揮できるかは所持者次第。


 いや……何この化け物性能。

 貸し与えられていたマジックアイアンクロスボウが玩具って言える次元の代物なんだけど。


『確かに、これも中々の業物へと変貌しておるぞ。提供した金銭以上の一品であるのは間違いない。だが……ちょっと汝が使用するにはステータス的な厳しさがあると我は判断する』


 そうなのか? と、思ってクロスボウを持って見る。

 う……なんか重い。

 いや、物理的な重さではなく何か精神的な過負荷が掛かっている様な気がする。


『必要Lvと言うよりも最低ステータスが足りておらんのだろう。小娘の料理を食べてやっと自由に振りまわせる位か……付与効果のリミッターは汝の強さに合わせて解除される面倒な物だ。だが、無ければ使えぬ』


 ロマンがこれでもかと詰め込まれている一品だね。

 こんなの使えてやっと上級冒険者って事なのかもしれない。

 しかもその冒険者になってもヴェノクラスには足元にも及ばないとか……人間ってかなり弱いんだって思い知らされる。


『そう卑下するな。ここまでの一品を使いこなせるようになればサーフクリムやエルバトキシンクラスの雑魚など造作も無く狩れるぞ』


 まあ、そうだろうけど。


「ムー!」


 そこでムウの声が聞こえてクロスボウから目を離してみる。

 するとそこにはムウが新しい斧と、兜、それと鎧を着させられて嬉しそうに弾んでいた。

 鎧と言うか……プロテクター? 兜はキャップと言うか盾を被っているみたい。

 コスプレ感があるけれど似合ってはいると思う。

 で、ガチャガチャと音を立てている。


「ムウウ?」


 小首を傾げて、アルリーフさんにムウは似合うかどうかと尋ねている様に見える。


「似合いますよ。重くないですか?」


 アルリーフさんはお姉さんの様にムウの調子を確認している。

 まあ動きが悪くなってしまったら困るもんな。


「ムー!」


 割と平気っぽい。


「この子が動きやすい範囲での重さに拘りました」


 ルリカさんがムウが装備する事を前提に金属製の鎧を作ってくれたんだっけ。

 なんか戦士って感じが増した気はする。これで俺達はいっぱしの冒険者になったのかな?

 ああ、そうそう、昨日の段階で既にウェインさん達には下水道で見つけたヤバそうな装備は提出済みだ。

 修理はさすがに厳しいけれど改良の素材に使えるとの話だ。


「さて……」


 セリスさんが剣を鞘に納めて腰に吊るす。

 どれだけ良い剣を作ってもらえたのか確認する暇が無かった。

 けどヴェノが反応するって事はかなり良い品なのは間違いない。


「あ、見送りしますよ」

「む? そうか?」

「すみません。私はおじいちゃんの手伝いをしないといけなくて……」


 と、ルリカさんは同行を断られてしまった。


「気にしなくて良い」

「ええ、俺達でセリスさんを見送って行きますね」

「はい。今まで本当にありがとうございました。おじいちゃんが元気になったのはセリスさんのお陰でもあります」

「私がしていたのは焼け石に水の様な薬の寄付でしかないさ」

「いえ、それは違うと、私は思っています。セリスさんも良き出来事がありますように、聖竜様の祝福を……」


 と、ルリカさんは祈り始める。

 それを見届けるセリスさんは若干苦笑いだ。


「では、失礼する。また会える様に努めよう」

「はーい。さようならー」


 と、セリスさんはルリカさんと別れの挨拶を済ませて歩きだした。

 俺達はそんなセリスさんの後に続く。

 そんな訳で俺達は鍛冶場を後にしてリフエルの町にある馬車の発着場へと向かった。

 活気のある町並みを見つつ新しい武器を使う時が早く来る事をちょっと楽しみにしている自分がいる気がした。


『新しい魔法を覚えた際の試射をする時の気持ちは我もわかるぞ。その楽しみを早く味わいに狩りへ行くが良い』


 はいはい。まずはそんな事よりもセリスさんを見送らないとね。

 たぶん、彼女の故郷ってセントユグド国だろうし、俺達が一番近づいちゃいけない所だ。


「色々と世話になった」

「それはこちらの台詞ですよ。色々とありがとうございました」

「いや、私から礼を言わせて欲しい。とても有意義な時間を得られたと思う。初心を思い出し、それでありながら目的へと大きく前進出来た。今までの冒険の中でも飛び抜けて素晴らしい思い出となった」


 なんかべた褒めされると嬉しいものがあるね。


「一刻も早く、セリスさんの願いが叶う事を願っています」

「?」


 アルリーフさんが俺達のやり取りを見て首を傾げている。

 とは言っても心当たりはある様な顔をしているけどさ。


『こやつの家族が呪われていて、その解呪が出来るのだ。一刻も早く家族の元へと行きたいと言う事だ』


 アルリーフさんはヴェノの言葉を聞いて納得の表情へと変わる。

 こう言う時、ヴェノの声が聞こえるって便利だ。


「ああ、それでは事が終わった後、何かあったら私を頼ってくれ。出来る限り力になろう」


 そう言ってセリスさんは俺に手を差し出す。

 俺はその手を握り返して握手をしていた。

 そんな清々しい一時をしている最中……ザッザと妙な旗を掲げた全身鎧やローブを羽織った団体が俺達の方目掛けて……早足で足並みをそろえて、且つ取り囲むように群がってきた。


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