六十話
「その毒性を生成出来れば応用の幅もありそうではあるが……」
「一応……その、セリスさん達が使う物にも混じっているかもしれませんよ?」
「何?」
「安値で売られている……魔物避けの一部に希釈した物を入れてます。地元の名産品です」
そう答えるアルリーフさんにセリスさんが若干青ざめて苦笑いを始めた。
「まさか……あの安くて高性能の魔物避けで有名なアレの材料にあるのか。ハハ……なるほど、むしろ納得が行った」
あ、受け入れちゃうんだ。
「アルリーフ殿、その料理の腕前は世界でも希少な才能だ。是非ともその才能で人類の未来を切り開いてほしい。そう私は願っている」
「あの……あまりアルリーフさんをいじめないで上げてくださいね。誇れる物じゃないと思っているので」
「その力を存分に振るえるコーグレイ殿が言ってもな……わかった」
そんな訳で俺達はそのままダンジョン内を周り、素材を十分に集めた所で帰還する事にしたのだった。
ツルハシとか初めて振ったのがちょっと感動的だった。
道中もかなり楽に戦えたって印象だな。Lvも48まで上がった。
使える毒も結構増えたし軽度ではなく、中度などの上位の毒や生成速度上昇が掛かる様になった。
あ、ダートセンスとかアルリーフさんと同じ物やアサシンセンスとか物騒な代物も発現している。
魔法系のセンスがいい加減欲しい所だな……。
『レンジャー寄りなのだから出てきそうではあるのだがな……仕掛けに魔力を用いた罠もあるのでな。レンジャーと魔物の半々みたいな性質がある事は認める』
ヴェノのお陰なのか、ヴェノの所為なのかわからんけど、俺の能力は独特だもんな。
後は毒吸収が……猛毒吸収にパワーアップした。
これでよりアルリーフさんの料理を効率的に食べられるようになったのかも知れない。
『もはや小娘の相手は汝以外居ないと我も思うぞ。いい加減覚悟を決めたら良いのではないか?』
ヴェノの台詞が聞こえたのか、アルリーフさんがこっちを見て若干照れるような顔をして下を向いた。
うん、可愛らしい反応で俺も嬉しくは思うよ。
だけど……うん。良い子だからこそ、大切にしたい。
せめて……何があっても守りきれると思えるまで待ってほしいな。
「その……うん。すぐに強くなるから」
「はい……」
なんかちょっと照れくさい。
まあ、アルリーフさんの毒料理の効果で短い期間でサクサクとLvが上がってきているのが幸いか。いい加減上位職の転職とかしたいもんだ。
「ムウウ!」
「ムウちゃんもセリスさんのお陰でLvがしっかり上がりましたね」
ムウはLv41まで上がった。超小型の収納魔法が使えるようになったらしく、斧をヴェノみたいに納めて戦闘直前に出せるようになったらしい。
何だかんだ言って上位職まで後少しって所かな?
帰り道、毒ガス溜まりは俺が気付けたし、罠に関してもハンティングセンスの影響とヴェノの感知能力の高さでどうにかなった。
で、ダンジョンを出るとセリスさんが背伸びをする。
「ふう……ここまで快適な少人数でのダンジョン探索は珍しい。コーグレイ一行には無数の可能性が眠っている。これから是非ともがんばって欲しい」
「いえいえ、セリスさんのお陰ですよ」
「そう思ってもらえるのは素直にうれしいものだ。さて……一旦下山して休憩をするか。それともウェイン殿へ素材を一度持って行って装備を新調してから再度来るか……悩ましい所だな」
「もう少しダンジョンの奥に行くとどうなるんですか?」
「うーむ……コーグレイ達とならある程度まではどうにかなるかも知れんが……この先となると少し厳しくなる。装備を新調するか、全員が最低でも上位職に就いてからでないと命の保証は出来かねん」
そんなに難しいのか。
『魔力の流れから見て、深い所では更に空間が歪んでおったな。ああなるとサーフクリムの巣とは別の縄張りを持つ魔物の空間と繋がっておるかも知れん。危険なのは間違いない』
「それくらい深い所にいる珍しい大物を倒せたのだがな。連戦は厳しかろう」
一度帰還して装備を整えるのが良いって所か……。
楽に戦えた分だけ行けそうと思って行くと油断するのだろう。
ここは経験者の言葉を信じて帰還した方が良いか。
「じゃあ一度帰りましょう」
「それでは……ウェイン殿の所へ戻るとしようか」
「はい」
そんな訳で俺達は来た道を帰る事になったのだけど、丁度行く馬車が無くて少しだけ迂回する馬車に乗らざるを得なかった。
まあ、そんなに差は無いとの事で馬車に揺れながらの旅を楽しんで行く。
結構収穫のある冒険だった。
『そうだな。汝のLvを上げる助けになった。後少しで小娘のLvにも追いつけるだろうし、実りが多かったと我も思うぞ』
ところで俺達ってもう中級冒険者って所まで来ているのかね?
『どうであろうな。あくまで基本職の高Lvを一つ持っているという段階とも言える。他の職業の経験を視野に入れるとまだ足りんかも知れんぞ』
奥が深いのかそれとも何かしらの要素があるのか……どちらにしても冒険者業を楽しみ続ける事は出来ない状況だな。
『スリルを楽しむと小娘の先祖に言っていた覚えがあるぞ。そして何があっても自身のペースを維持出来るようになって一人前だともな。そう言った意味では汝は既に中級冒険者なのかもしれん』
色々とツッコミを入れたいけれど気にしない事にした。
そうして馬車で立ち寄った村で……。
「む? すまん。ちょっと待っていてくれ」
セリスさんがそう言って道行く冒険者風の人の方へ声を掛けに行った。
その冒険者もセリスさんの事を知っていたのか、親しげな様子で話をしている。
やがて相手が少しばかり暗い顔をしたかと思うとセリスさんは頷いた。
そうしてセリスさんが俺達の所に困った顔で戻ってくる。
「もう少し時間が掛かりそうだ。申し訳ないが先に行っていてくれ」
「何かあったんですか?」
「ムウ?」
アルリーフさんが尋ねるとセリスさんはとても言い辛そうに視線を逸らしながら答える。
「いや、共に戦う仲間の故郷がこの村でな。それで話をしていたのだが……仲間の家族の見舞いをしたいと申し出たのだ」
うわ……本当に聖人か? って位セリスさんって善人だな。
『一時的とはいえ仲間がいるにも関わらず、我等を放って見舞いを優先するのにか?』
いや、だって俺達はこの後ウェインさんの所へ素材を納品しに行くだけじゃん。
作ってもらっている間に追いついて来るでしょ。
むしろ次の馬車が出発するまでの時間の範囲で帰って来れるかもしれない範囲だし。
この程度でギャーギャー騒ぐ程か?
『いいや。しかし、その様な矮小な考えをする者も世にはいるだろうと思ってな』
ヴェノの中で人間ってどう言った認識になっているのか定まっていない気がするなぁ……。
「その位なら大丈夫ですよね。ユキヒサさん」
「うん。むしろ俺達も一緒に行っちゃダメですか? それに病なら俺達が何とか出来るかもしれませんし」
セリスさんの仲間って事は良い人なんだろうし、お見舞いくらい一緒に行ったって良いはず。
もちろんヴェノに全ての病を治せるとは思わないが、ちょっとした病気であれば可能だろう。
「正確には病ではないのだが……気持ちは受け取ろう。コーグレイ達が良いのならば、私も話を付けて来よう」
セリスさんはそう言って仲間の元へ行き、事情を説明してくれた。
仲間の人は快く了承してくれて、俺達も一緒に向かう事になった。




