五十四話
そんな道中での戦闘を合間に挟みつつ村などに立ち寄ったりして、俺達は目当ての鉱山近くの村に辿り着いた。
一応、今の俺達だと苦戦しそうな魔物と何度か遭遇したんだけど、セリスさんを先頭にアルリーフさんの魔法のお陰でサクサク殲滅して進んでいく事が出来た。
そのお陰か、道中の道だけで俺はLvが4も上がった。
出来る様になった事だと、軟化毒の凝縮時間が早まったり、軽度では無い麻痺毒の生成が出来る様になった。
どれだけ魔物が強いんだろうか?
ちなみにこの鉱山に基本職で来るにはLv45は必要なんだそうだ。
いやぁ……なんか凄いって言葉しか出ない。
来るだけでそれって事は奥に行くのにもっと必要ってことでしょ? そう考えるとしんどそう。
『ちなみに小娘に聞いたのだがな。汝が日課で通っていた沼地は推奨Lv35だぞ』
……思ったよりも厳しくない?
『状態異常も視野に入れるとな。そもそも汝は動きが見えておるだろう。この辺りの魔物でLvが上がりやすいのは魔素の密度が濃いからに他ならん』
ああ、瘴気じゃなくて魔素が多い地域って事?
『そうだ。しかも汝は小娘の毒料理のお陰で経験値増加の効果を受けている。上がりやすくて当然であろう』
なるほどなー。
一応背伸びしているけど、そこまで強い魔物じゃないって事ね。
「では早めに行くとしよう」
一応、鉱山前には村があって、宿泊所になっている様だ。
冒険者から鉱石を買い付けに来ている買い取り商人なんかもいて、一定の賑わいがある。
「本来はここで購入してすぐに帰るのも手であるが……やはりLv上げはして行かねばな」
「ええ」
良い装備品があれば効率は上がるかもしれないけど、セリスさんがいるなら問題ないはず。
そもそもウェインさんから武器は借りているし。
そんな訳で俺達は村での補給もそこそこに鉱山にあるダンジョンへと挑む事にした。
鉱山って話だったから火山帯なのかと思ったけど、岩がむき出しの禿げ山って感じだ。
『そう言った鉱山もあるが、この辺りは違うというだけであるぞ』
まあそうなんだろうけど。
そんな鉱山を登る道中では、鉱石の魔物が無数に出てきた。
浮かんで突撃してくるだけの岩型の魔物、ウィスタリアロックや完全に岩の巨人としか言いようがないボルドーロックゴーレムとか。
その敵の全てをセリスさんとアルリーフさんが素早く殲滅してくれて、俺達の出る幕はほとんど無い。
一応、後方で援護射撃はしているけど、俺が居なくても問題ない位、楽に戦えている。
Lvの恩恵って凄いなぁ。
『この程度で感心するのもどうかと思うがな』
本来のステータスが高いヴェノからしたら低いLvなのかもしれないけど、俺からすると凄いの。
「うう……」
そこで担架で運ばれて行く冒険者が見えて来る。
「一体何があった?」
そっと近づいてセリスさんが尋ねる。
「ああ、運悪くガス溜まりに入っちまってさ。どうにか退避出来た奴がいたんだが、症状が重い奴がな……」
ガス中毒って奴か。
大変だな。俺は毒吸収の所為で気にしなくても良いみたいだけど。
それにヴェノの感知範囲って結構広いからすぐに気付けるし。
『そうであるな』
「あの」
とりあえず手当てが出来るか確認しよう。
「なんだ? 急いで近くの村に戻って解毒と治療をしたいんだが。俺達の魔法じゃ治療出来なかった」
「私達は薬の心得と少しばかりなら回復魔法が使えます。ちょっと見せてください」
「それは助かる!」
そう言って担架で運んでいた冒険者は仲間を俺達に見せてくれた。
俺もヴェノから色々と教わって来たので確認する。
見た感じだと……証言通り中毒症状を起こしているな。
呼吸障害を起こしているのか、息が浅い。
これは……火山ガスの類なのはわかるけど、ここは普通の岩山のはずだよな?
二酸化炭素中毒にしては症状がおかしい。やはり異世界独自の中毒だろうか。
ヴェノから教わった物からありえそうなのだと……。
「気化バシルウータ中毒だ。まずは呼吸を安定させるために新鮮な空気を吸わせて風属性の回復魔法を使ってください。即効性を求めるならウインドカッセとブルーライブアクアを煎じた薬を服用すれば早く治ります」
気管支に毒素が吸着して呼吸がし辛くなる中毒らしい。
さっきからヴェノが火山で起こる中毒症状例を俺の視界に浮かべて話をしていたから覚えていた。
『うむ。間違いない。汝も覚えるのが早いな』
そりゃあ暇さえあればブツブツとうるさいドラゴンがいるからな。
イヤでも覚える。
「ウインドカッセ……あるか?」
「コレですか?」
アルリーフさんがポーチの中から乾燥させたウインドカッセとブルーライブアクアを取り出してきた。
「ありがとう」
俺はアルリーフさんからもらった薬草でヴェノの指示通りに薬を作って服用させる。
その間にアルリーフさん達は金銭のやり取りを終えた様に見えた。
で、ヴェノの指示した通りに調合して水薬にして倒れている冒険者の口に少しずつ含ませる。
効果はすぐに現れた。
青かった顔色が徐々に良くなってきている。
「ムウ!」
「はい。ムウちゃん。手伝ってください。アロマヒール」
アルリーフさんがムウを触媒にしてアロマヒールを施す。
するとみるみると倒れていた冒険者は回復し、意識を取り戻した。
「ここは……」
「目が覚めた様だな」
「おお! 凄い! こんなに早く手当てが出来るなんて!」
「助かった!」
「ありがとう!」
仲間の冒険者達は揃って俺達に感謝の言葉を投げかける。
「応急手当はしましたが、大事を見て一度安全な所に引き返した方が良いと思います。他の方々も症状には出ていませんが中毒になっている危険性がありますので」
俺の言葉に冒険者達は一同揃って頷いた。
「ありがとう。俺達は君達の言う通り、一度村に戻ってしっかりと治療をする事にするよ」
「ええ、しっかりと新鮮な空気を吸えば自然と抜けていくので安静にしてください」
「ああ! それじゃあな」
そんな感じで通りすがりの冒険者の手当てを終えた。
「ふむ……コーグレイが名のある薬師なのは間違いない様だ。さあ、進もう。先ほどの中毒に私達も掛からない様に注意しなくてはな」
「そこは大丈夫ですよ。俺が気付きますので」
「本当にコーグレイ殿は詳しいな。そういう者が居ると非常に助かる」
そこまで褒められると照れてしまう。
まあヴェノの知識なので自慢にはならないから、すぐに冷めてしまうんだけどさ。
とはいえ、やっと役に立った様な気がする。
しかし……解毒魔法でも解毒出来ない奴があるんだな。
『物によるとしか言いようがない。今回の場合は解毒するにしても魔法由来でも生物由来でもなく、鉱物由来であるからな。中級以上の魔法を長く使用せねば治療出来ん。そんな暇があったら薬で治した方が早いのだ』
そんなものかね。
とりあえず俺達は雑談交じりに岩山を登るのを再開した。




