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五十一話


「話を戻すぞ。まあ、クロスボウは確かに修理した方が良い位には傷んでいる。元々複雑な構造で動かしているからな。金が掛かる様に作ってある。その辺りの問題は解消しておいてやる」


 貴族様用に作ったからって事かな?

 定期的に修理する事を前提……修理で金になる様にしてあったんだろう。

 ならギミックはそのままに自分で修理しやすい様にしてくれるだけでも良いな。


「他も似た様な代物ばかりだな。改修もしておいてやろう。そこのキノコとアルリーフの装備品もだったか。かなりオマケして予算内で用意してやる」

「ありがとうございます!」

「ただし! 素材になりそうな物は、ワシが弄っている間に調達して来い。もしくはいらない素材を出せ。それを下取りしてやる」

『いらない素材とな? 丁度良い。文字通り山の様にあるゴミ毛皮を出してくれる!』


 なんかヴェノが余計な対抗心を燃やして下水道で収集したネズミの皮を山の様に出現させる。

 文字通りボンって感じで出てきたぞ。


「よくもまあ、こんなに貯め込みやがったな」

「えー……リフエルの下水道掃除で得た魔物の皮です」

「……ラットバスターってお前等は囁かれておるぞ」


 既にその名前が知れ渡りつつあるんですかね。


「皮の処理は適切にされてるな……鍛冶場や道具職人の見習い共に使わせる練習用の皮に買い取るのが相場って所だか……これだけあればある程度オマケ出来るな」


 ああ、確かにそんな感じで使ってもらうのが良いか。

 下取り扱いでそこそこ無理な要求が通りそうな気がする。


「このデカイネズミの皮とワニ皮は使えそうだな……ところで毒旦那は装備すると状態異常に掛かる方が良いか?」

『ふむ……確かにそう言った考えが妥当なのは間違いない』


 いや、まず毒旦那って俺を指して言う事になんか突っ込めよ。


「えー……毒旦那とは?」

「そりゃ、アルリーフの飯を食べられる奴だったらそう呼んだ方が早いだろ」


 ……ああ、そうですね。親戚内でも有名な事ですものね。

 暗喩で呼ぶならこれこそ相応しい呼び名はないのかもしれない。


「武具に関して何だがな、本来ならそんな事にならない様に弄って作るもんなんだが、面倒な処理をしない分、早く作れる」


 それは良いかもしれない。

 装備しているだけで毒の沼地にいるのと同等の効果が得られるなら利用しない手は無いし。


「おそらくこの皮を使えばそんな感じの防具になるだろ」


 ウェインさんはエルバトキシンの皮を指差して答える。

 まあ、コイツはね。

 どっちかと言うと細菌を使役している気もするけど、毒も使っていたっけ。


『奴の毒素を補充出来れば乱用も出来る。悪くは無い』


 確かにそう言った使い方もあるな。

 どんな法則で倒した奴の毒を補充できるのかわからないけど。


『ん? そんなもの魔力で奴の死んだ皮膚に干渉して毒素を生産するに決まっているではないか』


 毒腺とかに干渉して生前と同じ様に生産させるって事なんだろうけど……魔力って万能だな。


『汝の元々居た世界には無いようだが、この世界には存在するのだ。しっかりと受け入れて行かないと病むぞ』


 はいはい。

 ただ、問題は俺が大丈夫なのは毒限定だって事は知ってもらわないといけない。


「俺が平気なのは毒だけなので、そこは注意をお願いしますね」

「ああ。まあ、この家で出来る鍛冶は限られてるから丁度良い。使える品にはするから我慢してくれ」


 なんて話をしているとカーンと来客の呼び鈴が鳴った。

 毎度思うけど、ちょっと変な呼び鈴だな。


「はーい」


 黙って成り行きを見守っていたルリナさんが応対に出る。

 貴族って訳じゃないから孫娘が出るのかな?

 お手伝いが出ても良い様な気もするけど……とはいえ、その家の方針って奴もあるか。


「おじいちゃーん! セリスさんが来たわー」


 で、話を続けようとするとルリナさんが来客が誰かを教える。


「……む」


 ウェインさんが俺と玄関の方角を交互に見て迷う様な顔をしている。

 割と真面目な人な様だから商談中は後回しにするはず。

 なのに迷っていると言う事は相当に恩があるって事で良いのかもしれない。

 気にせずどうぞと暗に顔を向けて微笑む。


「しかし……」


 義理堅い性分なのはわかっているけど、そんな人が悩むくらいには恩のある人なのだろう。

 待たせる方が忍びない。

 ブラック企業にいた時、クライアントが三日ほど音信不通で、しょうがないから別の取引先に連絡をした途端、いきなり割り込んで来た時の様な酷さは無い。


「こちらがお願いしたい事は概ね理解してもらえていますから、来客の方が帰ってからでも大丈夫だと思いますよ?」

「……そうか。すまん」


 俺の提案にウェインさんは手短に答えて立ち上がって歩いて行く。

 一週間前との違いにお手伝いもどことなく表情が明るい感じに見える。


「良かったですね。色々と作ってもらえそうで」

「そうだね。後はウェインさんに任せて俺達はしばらく魔物退治に出かける?」


 問題はクロスボウを修理に出したら使える武器の質が格段に落ちて戦い辛くなる訳だけど……そこはアルリーフさんとムウにがんばってもらえば良いのか?

 ヴェノ、何か良い武器持ってない?


『繋ぎ用の剣くらいなら数本ある。もう少し接近戦の経験を積んでおくのも良いかも知れん』

「そうですね」


 色々と活動するのに悪くないタイミングだ。

 武具を弄ってもらっている間に今後の活動資金も集められるしね。

 いい加減、俺のLvも上げたい。


「ムウ!」


 ムウも最近、暴れ足りないと言った様子だったので丁度良いだろう。


「――なんと! ここまで治療出来るほどの方なら是非とも紹介してほしい!」


 なんか玄関の方で世間話的な会話が聞こえてきた。

 そこから足音が近づいて来るのがわかる。

 戻ってきたのかな?


 なんて思いながら扉の方を見ているとウェインさんが、なんか女戦士って出で立ちの人を連れてやってきた。

 髪はポニーテールで纏めている。

 かなり美人な顔立ち、アルリーフさんが可愛い系だとするなら、こっちはクール系。

 武人で清楚って雰囲気だ。

 年齢は……俺と同じか少し下かな?


「貴殿がウェイン殿の病を治療した親戚の婚約者と言う者か」


 誰が婚約者ですかねー?

 ウェインさんの方を見ると若干誇らしげにしている。


「私の名前はセリス=アーノル。名工ウェインと懇意にして頂いている戦士だ」



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