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四十七話


 その後、箱を開ける直前に出会った下水道のボスであるプレイグポイズンブラックキングボスラットの死骸も確認したぞ。

 その表情は苦悶とも恐ろしい物を見たとも言える様な、泡を吹いたままの姿で倒れていた。

 腹が少しばかり膨れているな。

 アルリーフさんの料理が結構入っていると言う事なのか……?

 それともアルリーフさんの料理がボスラットの腹部で変異しようとしているのか。

 ……とりあえずヴェノ、収納をしてくれ。


『わかった……く、レジスト効果が高い。ふん!』


 ヴェノが力を入れてどうにかボスラットを収納する事に成功した。

 ドチャっとボスラットの胃の内容物の一部がその場に現れる。

 ボスラットの腹の中で混ざったアルリーフさんの料理は異臭を放っているなぁ……。

 ……なんか、鼓動している。これが膨らんでいたんだろう。

 剣で突きながら解すことで鼓動は収まった。


『他の個体では確認出来ていない現象だ。この魔物だけであると思いたい所だな』


 変異して下水道から飛び出して人々を恐怖のどん底に落とす様な事態にはならない事を祈る。


『汝の世界の創作物に似たシチュエーションなのは認める。とはいえ、ムウも似た様な出生なのを忘れない様にな』


 ムウが心外だって怒りそうな事だぞ?

 だが、これは確かに恐ろしい。


 そんな訳で俺は下水道内を数日探索し続ける事になった。

 水音以外しない静まり返った不気味な下水道は一人だったらおかしくなってしまっていたかもしれない。

 幸いな事にヴェノがマッピングしてくれていたお陰で隈なく回る事が出来たと思う。

 とんでもない事になったもんだ。


『小娘が十分強くなって来ておるではないか』


 ああ、そう言えばここ二日でアルリーフさんがウェインさんの家の扉を二枚ほど壊しちゃっていたね。

 急激すぎるLv上昇で力加減が出来なくなってしまっているらしい。

 ムウが対抗意識を燃やしていた。

 下水道内を探索していると、ネズミ共の巣を発見……なんとなくボスラットが寝床にしていたっぽい場所まで見つけた。

 のは良いのだが……。


『下等なネズミの分際で宝集めをしておるとはな。冒険者共からはぎ取った物もあったのだろう』


 巣の中にはガラクタと呼べるような代物以外に金貨や銀貨、金の延べ棒とかが積んである。

 他に調度品や酒……は劣化が激しくて使い物にならなかったが。

 それ以外だと白骨化した人骨とか……身なりからして冒険者にしては軽装な物が転がっている。

 錆びてるけど良さそうな短剣や壊れた杖まであってヴェノが興味を持っていたぞ。

 あ、カビた所為で性能が落ちた潜伏のローブと同じデザインの物がある。


『身なりからしてレンジャー……にしては近接寄りな出で立ちだったのはわかるぞ』


 うーん……なんだろうな?

 とりあえず悪いと思いつつ人骨を動かしてローブをちょっと拝見。


 暗殺者のローブ+5 品質 破損 暗殺者専用 必要装備Lv 50

 付与効果 クローキング 解析抵抗(強) 気配遮断 足音遮断 不意打ち補正

 迷彩効果のある暗殺者用のローブ。一般人に偽装する為に織りなされた品。

 隠蔽能力の高い名のある魔物の皮が使われている。解析魔法に耐性を持ち、偽装出来る。


 ヴェノが持っていた奴よりも元の品は良さそう。


『専用装備か……これは該当する職業群でないと性能を十分に発揮できない代物だぞ』


 そんな物もあるのか……とは言ってもこんなの専用じゃない限り使いこなせないのも納得だ。

 これだけ良い品を持っていたこの人骨の生前は一体何者なんだろうか?


『当然、暗殺者だったのだろう。大方下水道を住み処にでもしていたが、ネズミ共の襲撃に遭って殺されたのだろう』


 世知辛い話だ。しかも似た様な人骨が何個も転がっているんだ。

 となると人知れず運営されていた暗殺者の拠点が潰れていたって事か。

 壊れた杖とかも確認。


 黒き聖職者の儀式杖+3 品質 破損 悪魔信仰者専用 必要装備Lv45

 付与効果 闇魔法威力向上 儀式魔法出力増強 サクリファイスパワー 

 邪教に属する者が力を増幅させるために血を吸わせた悪しき木から作り出した杖。

 血を捧げることで力を増していく。


 凄い禍々しいフレーズだ。


『暗殺者の拠点ではなく、邪教のアジトか何かだったのか? 性能は悪くは無いが、壊れているのが頂けんな』


 何が幸いするのかわからないけど、こんな発見もあるんだな。

 ちなみにこれはどれくらい前の事なんだろうか?

 少なくとも人骨やガラクタの風化具合から最近では無いのはわかる。


『これも人の世の闇と言う事だな』


 なんて感じに漁っていると……人骨の影からアルリーフさんのサンドイッチがこんにちは。


「おっと」


 手で叩き潰して絶命させる。

 弱っていても地味にすばやくて潰すのが大変だ。

 潰しても動いて来るから厄介なんだけど……。

 ちなみに失敗すると口に向かって突撃してくる。

 俺以外は即死かな?


『小娘の料理は暗殺者よりも、暗殺者であるな』


 否定できない。

 と、とにかく、この装備類はどうするべきか。

 修理とか出来て、売れば結構な金になりそうだけど、これってギルドに届けなきゃいけないのか?


『着服するのも手であるが、汝は暗殺者になりたいのか? 毒使いという職業上、共通性はあるかもしれんが』


 うーん……生き残る為に必要だったらなっても良いだろうとは思うけど、今は不要だ。

 装備出来ても性能が引き出せないし、破損品故に今の装備よりも性能は劣化しているだろう。


『とりあえず報告してどうするかを問えば良いだろう』


 そうだな。じゃあ、見つけた怪しげな品々も回収だ。

 なんて感じで俺達は下水道の正確なマッピングを終えたのだった。

 一応、別の洞窟っぽい所に繋がる道とかもあったっけ。

 ルリカさんから聞いた町の歴史でも、地下洞窟を利用する形で下水道が作られたらしいので、あるのは当然か。


 下水道とは作りが異なるので、地図にはこの先、洞窟って感じでヴェノが書き記した。

 回収した膨大な魔物の死骸の山を収納したのでヴェノの倉庫もさすがにかなり圧迫してしまっているそうだ。

 塵も積もれば山となる。

 一応、ヴェノが皮剥ぎをした後、肉は空間内で燃やして炭にしてはいるらしいけどさ。

 後々捨てに行く事になりそうだ。


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