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四十四話


 道中……ヴェノが新しい魔物を発見してくれる。


 ポイズンブラックラット

 ポイズンアサシンブラックラット

 パラライズポイズンブラックラット

 ヴェノムロータスピンクスパイダー


 レッサーが取れたブラックラットが居る。

 他に状態異常や暗殺者っぽいネズミ。

 ヴェノムロータスピンクスパイダーは言うまでもなく蜘蛛……ムウ並みに大きくてさすがの俺もビックリした。

 いや、あんな大きな蜘蛛は不気味過ぎて怖いわ。


 クロスボウで遠くから射抜いたり、近づいて来たら鈍足毒を付与したボルトを放って足止めをしつつムウに斧を振るってもらって仕留める。

 一応、単体だとそこまで驚異じゃないし、毒も俺からしたら回復と強化こそするけど弱る事は無い。

 しかも話の通り、毒の沼地に匹敵する位には毒素が強い。

 下水道全体で有毒なガスが発生している様だ。


 俺の毒を感じる部分が凄いフローラルでリラックス出来ると感じているのだから間違いない。

 瘴気じゃない所が皮肉な所らしいけどさ。

 とはいえ、その毒素に負けない程の異臭を放っている魔物避けの香も凄い。


『ふむ……この辺りで良いのではないか?』


 ヴェノが表示させる地図を見ると下水道の中でも大分奥の方にまで来た事がわかる。

 道中、下水を潜って通路の扉を開けに行かなきゃ行けない所とか色々とあって散々だった。

 しかもどこの都市伝説だって感じで巨大なワニの魔物も居たぞ。

 滝の様になっている下水道の下に居たからどうにか遭遇せずに済んだけど、ヴェノの話じゃ毒とかを使用しない場合、エルバトキシンよりも単純な強さは上の敵だと言う位だ。

 名前は……ホワイトリリークロコゲーターだったか。


「ムウウウ!」


 ムウも体に着いた汚水を不快そうに振るっている。

 さて、荷物を下ろしてっと……。

 と、荷物を下ろしたその時、水路の奥からネズミ達が……なんか熊よりも大きいサイズのネズミを引き連れてやってきた。


「ヂュウウウウウウウウウ――」


 プレイグポイズンブラックキングボスラット。


 なんか凶悪そうな名前だな。


『ふむ……親玉の様だな』


 おい……この前、エルバトキシンと戦ったばかりなのにこんな奴と戦う事になるのか?

 と言うか会話出来る訳?


「ヂュウウウウウ! ヂュウウウ!」

『いや、そこまでには至って居ない様だ。だが、ネズミ共の群れを統括し、やがては死の病を振りまく存在に至るのに、そこまで時間は掛からない位の存在であるのは間違いない』


 つまり問題を起こしそうな魔物に遭遇したって事で良いのか。

 と言うか……下水道にこんな化け物が生息してるなんて、なんかイヤだな。

 この辺りまで来ると結構魔物も強いしさ。


「ヂュウウウ!」

『……どうやら久々にやってきた獲物と評して汝を甚振ろうとしている様だぞ。そのような言葉を発しておる。弄ぶ予定なのだろうな』


 そうか……とはいえ、どうしたものか。

 ここは大人しく撤退すべきか? やるべき作戦はもう達成した様な物だし。


『そうだな。ここを巣にしておるようだし、エルバトキシンの様な姑息な真似は出来ておらんだろう』


 了解。じゃあ撤収だ。


「ムウ、口を閉じておけよ。それと俺の背中に乗って絶対に放すんじゃないぞ?」

「ムー!」


 と言う訳で俺はボスラットとネズミ共を無視して荷物を広げて……蓋を外す。


「ヂュー!」


 同時にヤレーっとばかりにボスラットの命令でネズミ共がこっちに向かって駆け出した。

 だが……奴等の突撃は俺の開けた代物によって完全に防がれた。

 挙句、返り討ちに遭う。

 ワラワラと一つ開けた箱から……今回の切り札が出て来て、他に詰めてある箱を開け、全部の箱を開封してからネズミ共に向かって突撃して行き、その快進撃はボスラットにまで及ぶ。


「ヂュ!? ヂュウウウウ! ヂュウウウウウウウ! ヂュ――ヂュウウウウ!?」


 ボスラットはその群がる切り札に襲われ、口に切り札が入りこんで恐ろしい事態を把握して逃げようとしたが時すでに遅し、群がられてビクンビクンと痙攣しながら一歩でも逃げようとして失敗して虚空に手を伸ばし……動かなくなった。


「「「ヂュ!? ヂュウウウウ!」」」


 後に続くのは蹂躙だった。

 統率者を倒されたネズミ達は命がけで逃げようと試みるがそれは叶わず、下水道の中は俺が放った切り札によって、無数に存在する魔物達は立ち所に殲滅されて行くのだった。

 俺? もちろん蓋を開けた直後から鈍足毒等のバフを掛けて全速力で逃げた。

 一旦脱出しないとどうなるかわかったもんじゃなかったしね。


『これは凄い事になったものだな』

「毒も使いようなんて言うけど、さすがにな……あんな化け物を事前に仕留められるなら儲け者か」

『心残りだと言うのなら賞金首になって居なかった点か』

「ギルドに駆けあってみれば良いんじゃないか?」

「ムウ!」

『そうだな。それが良いかも知れん。まあ、まずはどれだけ魔素を稼げるかを楽しもうではないか』


 その日……リフエルの町ではちょっとした異変が観測された。

 各々の下水路から魔物の助けを求める悲鳴らしき物がしばらくの間、響き渡ったとの事。

 他、一部の魔物が下水路から飛び出して退治されたとの話だ。

 まあヴェノの読みだと、この下水道の最深部、強い方の魔物共は奥の方に居たはずなので外に逃げられたのは雑魚だけらしい。


 さて……俺がムウと一緒に運んで来た品がなんであるのか……。

 まあ言うまでもなくアルリーフさんの料理だ。

 弁当箱の中で冗談でも比喩でも無く文字通り運動会が出来る奴等だ。


 ヴェノはそんな毒料理を見て、思考し、研究をした結果、今回の作戦に採用する形となった。

 提案当初、アルリーフさんは物凄く渋い顔をしていたのを覚えている。

 ギルドの休憩所に腰かけて、ヴェノが作戦を提示した。


『小娘の料理にだな。本格的に殺意を込めて毒を混ぜつつ動ける代物を作らせるのだ。そしてそれを下水道の深い所で解き放ち魔物達を襲わせる。そうなったらどうなるか?

 と思わんか』


「いや……さすがにそれは……」

『多くなり過ぎて生活に支障が出かねない程の問題になっておるのだろう? 自らの住処を守るのは生き物として当然の役目。その仕事を少しばかり我らがしたとて何も問題はあるまい』

「そんなに上手く行くもんかね……俺が毒素を凝縮して適当な所から下水に流した方が早いんじゃないか?」

『それも手ではあるがな。生憎と広大な下水道内の全てを満たすほどにはならんだろう。しかも耐性を持たれた経過があるとするなら尚更だ』


 うーん……なんか酷い話になっている様な気がしなくもない。


『より効率的に致死性が高い毒を広範囲にばら撒ける事が重要なのだ。耐性を持つ個体が生き残るなんて出来ない程に強い毒をな。今の汝ではそこまでの毒は出せないだろう』


 それよりも酷い毒を作れるアルリーフさんは何者なんでしょうね。


『騙されたと思って実行してみるのだ。もちろんギルドに話を通してからだがな。これも町の問題を解決するためだぞ小娘』

「……わかりました。が、がんばります」


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