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四十三話

 じゃあ治せないって事か?


『いいや? 正直、そこまで難しく考える必要は無い。遠回り過ぎる。金も時間もだ』


 何か策があるのか?

 正直、下水道の件で不安はあるが、教えてくれ。


『毒を使えば良いのだ。まあ薬でもあるのだが、ここまで頑固だと薬と呼ばれる程度の毒では効果が無い』


 ん……?


『わからんか? 汝が美食と称して移動中も桶に入れてある毒があるではないか』


 もしかして軟化毒? 確かに効果がありそうだけど、それで治せるのか?


『イボは根とそこに生息する菌を殺せば治る。問題は一箇所を削っても他の箇所から移動して元の木阿弥になるだけなのだ。体全体を漬けろ。軟化毒も出来る限り凝縮して出せ』


 ……とりあえずやって見るか。


「シュノーケル……潜ったまま息が出来る道具を用意してください。それと浴槽の準備をお願いします」

「は、はい!」


 俺の言葉にルリカさんが部屋を出て行った。


「治せるのならばやって見るが良い」

「とりあえず数日、俺が用意した薬の中に浸かっていてください。失敗しても代金を要求はしないので安心してください」

「ワシはケチではないぞ。騙そうとする者が許せないだけじゃ」

『それと回復、治療魔法はNGだ。イボや細菌まで一緒に回復してしまう』

「ええ、それで良いですよ。上手く言ったらお礼を下されば結構です。あと、回復魔法の使用はしないでくださいね」


 俺はLvの力で得た力を使っているだけだ。

 努力して身に付けた訳じゃない。

 出来る事をしているだけなんだから、無駄働きとは思わない。

 成功して欲しいって願いだけなんだ。

 それから俺はルリカさんと家のお手伝いが用意した浴槽に軟化毒を凝縮させた物を並々と、生成した限界まで出して軟化毒で作られた浴槽を作り出した。


「こんな風呂に浸るだけで治ったら苦労しない。く……沁みる! くううう……」

「悪いけど、我慢してください」


 で、数時間したら浴槽から出てもらって全身を軟化毒で浸した湿布を貼る事にした。

 これを一日に四回程繰り返す事にさせ、俺達はしばらくウェインさんの家で厄介になった。



 とりあえずウェインさんの治療は経過観察の状態を維持し、ギルドでの仕事を俺達は翌日取りかかる。

 とは言っても……不安はぬぐえない。 

 なんにしても本当に上手く行くのかねー。

 と言うか、イヤな仕事で辞退したいんだけど、ヴェノの話では物凄く経験値の入りが良いはずとの事で、やる羽目になった。


「ここが下水道の入り口ね」


 町はずれの下流へ続く道の途中に設置された石造りの地下入り口に立って呟く。

 一応、何か不測の事態が起こった際に、即座に通報できる様に役場には話を通してきた。

 そして、アルリーフさんはルリカさんと一緒に下水道の毒性の関係で厳しいだろうとの事で町で異変が起こった場合に備えて待機して貰っている。

 ウェインさんはこのリフエルの町では結構有名な人でその孫であるルリカさんも相応に発言力が高いそうだ。


「ムーウ!」


 もちろん、町の中からでも下水に入る事は出来るけど、現存する地図の範囲だと俺が今いる地点が一番、下水道内を移動しやすいんだそうだ。

 なんでもこの町が出来る前から洞窟があり、そこを拡張工事等をして作り上げた下水道でその後も整備などもされたりして半ば迷宮化している所もあるのだとか。

 磁場等の影響でダンジョンになっていた時期もあったそうだ。今は無いらしい。

 よくもまあそんな場所の上に住んでいられると呆れるものだが、そんなものなのかもしれない。


「よし、じゃあ行ってみますか」

「ムー!」


 俺はアルリーフさん特製の魔物避けの香を焚いてから下水道内に入る。


「アルリーフさんが持っている魔物避けの香の効果は凄いな……魔物が近寄って来ないぞ」


 入ってすぐ、少し離れた所に光る眼を見つけ、ヴェノが鑑定を行う。


 ポイズンブラックレッサーラット


 この暗闇で黒いネズミって地味に厄介だな。ニスア村近くにもネズミの魔物はいたけれど……種類が違うようだ。

 小さくチューチュー聞こえるぞ。


「松明の明かりで下水内を進まないとな」


 言うまでも無く下水道は暗いので松明を掲げて入る事になりそうだ。


「ムウ! ムウムウ!」


 ここでいきなりムウが俺の前に出て任せて欲しいと胸を張って小さな手で自らの胸を叩く。


「ムー!」


 そして……何か傘の部分から淡い光が漏れ出したぞ。

 結構明るい。松明並みには辺りを照らしている。


「ムウ?」


 どう? っと言った様子で傘を斜めにしてムウが尋ねて来る。


「ああ、助かるよ。だけど……こんな事が出来たっけ?」


 なんとなくムウのステータスを確認する。


 ムウ ミューテーションマイコニド 戦士 Lv27

 所持スキル 胞子散布 自己再生 スタミナ回復速度アップ(中) タフネス キノコ解析 ライトキノコ 毒使いの配下 転職可能 ウォーリアーセンス ウォークライ アックスマスタリー6 薪割りクラッシュ5 トルネードストライク3 バッシュ3


 この前の戦闘以降、よく確認していなかったけど、ムウも地味に成長しているな。


『おそらくキノコ解析というスキルで光りキノコの特製を得たのだろうな。暗い場所で発光するキノコがあるのだ』


 なるほどなー……便利だと思うけど、何か消耗しないのか?


『そこに生息するだけで光るキノコが大半であるからな。特に消耗も無いだろう』


 便利な事で。

 ちなみにムウは出来る限り鼻をつまむ感じで、傘の部分の口が思いっきり閉じている。

 ムウもアルリーフさんが焚く魔物避けの香の匂いが苦手だからな。

 料理を作ると叫ぶし。


「じゃあ、松明で片手が塞がる事は無いから……この荷物をしっかりと背負って行くとしよう」


 俺は今回の作戦の為に用意した荷物を町で売っていたリュックに入れて運ぶ。

 この荷物が少々持ちづらいと言うか、よく揺れるので運ぶのに一苦労しそうだ。


「あまり戦闘にならない事を祈るばかりだ」

「ムウ!」


 と言う訳で地図を片手に俺達は下水道の奥へ奥へと移動を開始したのだった。


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