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二十七話

 死へ誘う料理……あ、物凄く空気が重くなってきた。

 何その直球なスキル名。

 暗にこの世界を創造した存在に、お前は料理をするなと注意されている様な物じゃないか。

 自覚のある料理下手は許されるべきじゃないのか?

 まあ……そんな料理でパワーアップ出来る俺もどうかと思うけど。


「教会の神父様から教わった話だと、良い才能を授かった代わりのその分のマイナスの加護も与えられたのでしょうと……」


 アルリーフさんも俺と同じく重たい物を背負って生きているんですね。

 普段はそれを感じさせない位、真面目で一生懸命で他人に優しい人なのに……。


「コーグレイ! さあ! そこは俺に任せろと家の娘を慰める所だろ。君の料理を毎日食べたいんだと言え!」


 父親! アンタは黙ってろ! そんなに食べたいならアンタが食え。

 アルリーフさんの母親はムウの頭を撫でつつこっちをニヤニヤしながら見いてる。

 いや、夫を止めてくれませんかね?


「えーあー……別に薬師のままでも良いと思うけど?」


 正直、別にアルリーフさんが仲間になってくれるとしても、俺達がこれからする事に変化は無い。

 まあ、アルリーフさんに何か……才能がある魔法職に就いてもらうのもありではあるが。


「ですが……」

「と言うよりも、俺もそこまで厳しい所に潜る気はないんです。もう少し様子を見てから何の職業になってもらうか考えるのはどうかな?」


 薬師の上位職とかあるんだよな? ヴェノ。


『我もまた聞き程度しか知らんが学者や錬金術師等に転職できると聞くぞ。おそらくこの娘の父親は錬金術師に就いていると見て良いであろうな』

「俺と一緒に居て薬師の上位職を目指すって手もある」

「……わかりました。じゃあユキヒサさんと一緒に行動して、何になるかを考えますね」


 俺の頼みを聞いてくれたアルリーフさんは改めて頷いてくれた。

 そんなこんなで和やかな昼食を御馳走になり、俺はアルリーフさんの家である薬屋から出る事にした。


「じゃあコーグレイ。アルリーフを任せたぞ」


 薬屋のカウンターでご機嫌に酔っ払ったアルリーフさんの父親が見送りとばかりに手を振っている。

 この野郎、覚えてろよ。


「ユキヒサさんはこの後、何か予定がありますか? 出かけるのでしたら教えてください」

「一応、これから沼地の方へ狩りに出ようかとは思ってるよ。ただ、何だかんだあって依頼もない状態で行く事になるけどね」

「それなら私も同行します。ユキヒサさんの戦いを拝見したいですし、家で買い取り出来る品かどうかも判断できますから」

「うん。それじゃあこれから行ってみようか」

「ムー!」


 と言う訳で俺達は沼地の方へ狩りに行く事にした。


「なんなら家に住みこみで生活するかー?」


 アルリーフさんの両親がニヤニヤしながら提案してくる。


「申し訳ないですがアルリーフさんを蔑ろにしないで頂けないですかね?」


 こう……アルリーフさんの家である薬屋に厄介になると、案内されたベッドがダブルで枕にLOVEとか書かれてそうで困る。

 そりゃあアルリーフさんは美少女だし付き合いたいとは思うけど、アルリーフさんの意志を尊重すべきだ。

 何だかんだ言って俺達は知り合ってそんなに日が経っていないんだ。

 せめてデートとかしたり、色々と段階を追って仲良くしたい。


『汝も面倒な性分を持っておるな。いっきに襲いかかっても良いのではないか?』


 何だろう。ヴェノに言われると物凄く腹立たしい。

 と言うか周りが強引にアルリーフさんとくっつけようとしてきて、逆に手を出し辛くなる。

 考えを戻そう。

 親にチャチャを入れられて恥ずかしげにしているアルリーフさん。


「……自立を視野にLv上げも考えて行きましょうね」

「……はい」


 なんとも気恥ずかしい感じがしながら俺達は村から早めに出発した。


 

 沼地近くまで来るとアルリーフさんは安全のためにガスマスクを装着した。


「考えてみればユキヒサさんと魔物退治に行った事がありませんでしたね」

「そう言えばそうだね」

「ムー!」


 ムウがやる気を見せつつ斧を素振りしている。

 ちょっと危ないからやめなさい。


「まずはパーティーを組んで……フォーメーションはどうしましょうか?」

『我が申請の送り方を教えてやろう。まずステータスを出す。そしてムウのステータスを確認する要領で、この娘へ編成を申請するのだ』


 ヴェノの指示通りにアルリーフさんに編成を送る。

 するとアルリーフさんに届いたのか頷かれ、編成の許可が出た事が表示される。

 えーっと……アルリーフさんの体力と魔力的な何かが少しばかり分かりやすくなった気がする。

 これがパーティーを組んだって事なんだろう。


「普段通りの陣形で行くからアルリーフさんは俺の近くで見ていて欲しい。それから考えるというのはどうかな?」

「そうですね……ユキヒサさんとムウちゃんの戦いの邪魔になる様な事はしない様にしなくちゃいけませんし」


 そんな訳でムウが前衛、俺が後衛、アルリーフさんが俺の近くで待機、という陣形で魔物退治をする事にした。


「ムー!」

「お? 出てきたか? 今日は幸先良さそうだ」


 テラコッタポイズンゾンビドッグが群れでこっちを察知するなり駆け寄ってくる。

 あまり毒の効き目は良くないから避けたいけど、アルリーフさんに俺達の戦い方を見てもらう為にやるしかない。

 まあ、最近ではLvも上がって来て、ムウだけでも対処が出来る魔物なんだけどさ。


「ムウウウウウ!」


 ムウがウォークライを発動させて叫び、力を増強させつつ斧で叩きつける。


「ギャン!」


 テラコッタポイズンゾンビドッグの胸の中心に土煙が上がり、数匹が衝撃で薙ぎ払われる。

 直撃した一匹は一発で絶命したっぽいな。


「よし! 俺も負けてられないな!」


 クロスボウで狙いを定めて体勢を立て直そうとしていた二匹のゾンビドッグにボルトを射出して足を縫いつける。

 何か集中力が上がった様な気がする。思いの外上手く思った所に命中した。


「ムー!」


 縫い付けられて動きが阻害されている二匹に向かってムウが即座に飛びかかって斧で叩きつけてトドメを刺す。


「バウバウ!」


 その隙とばかりに俺の方に残ったゾンビドッグが突撃してくるのを、接近され切る前にクロスボウを上下させることで即座にリロードして毒付与……鈍足毒を使用して射出する。

 ドスドスドスっと三連射したボルトがそれぞれ命中。

 更に動きの遅くなったゾンビドッグへ追撃とばかりにムウが駆けつけてトドメを刺す。

 割とあっさりゾンビドッグの群れを全滅させる事が出来た。

 お? 経験値を確認すると普段の倍近く増えている。

 アルリーフさんの毒料理は凄いな。


『経験値増加の援護効果は正確には吸収量増加であるな。どんな生き物でも仕留めた際に多少、吸いきれない魔素が漏れてしまうのだ。それをこの援護効果で吸収量が増加する事で増えた様に感じられる訳だ』


 ヴェノが補足する。

 ゲームとかでは経験値増加アイテムが登場する事があるけど、この世界ではそういう理屈らしい。


『そう言った補助をしてくれる高額のアクセサリーがあるぞ。永続的に効果を出す物ではなく、高価な消耗品であるがな。それを疑似的に簡単に再現出来るのは驚異的であるな』


 アルリーフさんの料理さまさまだな。

 ちなみに料理の効果時間がどれくらいなのかも検証中だ。


「まあ、こんな所かな?」


 と、話した所でアルリーフさんが何かに気付いた様子で言った。


「あ、スプレイグリーンモスキートの羽音が聞こえますよ。気を付けてください」

「ああ、そっちは大丈夫。アルリーフさんは口を押さえて吸いこまない様にして」


 割と死角から隙を窺う様に飛んできたり、蚊柱となって群がって来るか、のどっちかで攻めて来る事の多いスプレイグリーンモスキートは、今の俺達からすると雑魚であり、カモでしかない。

 プーンと音を立てて俺達の方へスプレイグリーンモスキートが飛んで来た所で、ムウがボフっと胞子を飛ばす。

 直後に胞子を吸ったスプレイグリーンモスキートがフラフラと怪しげな挙動を描きつつ墜落した。

 俺達も強くなったよなー……などと改めて実感する。


「ま、こんな感じなんだけど、どうかな?」


 いつもはこの陣形で戦っている。

 負傷した場合は各々回復するまで待ってから活動を再開。

 俺は毒の沼に入り、ムウは自己再生。

 なので割と万全な状態で常に戦う事が出来るのが、今の俺達の良い所か。


「話を聞いていた通り、ムウちゃんが前衛で、ユキヒサさんが後衛……魔法職ではなくレンジャー寄りなんですね」

「実は解毒の魔法はまだ使えなくてね……」


 正直、ヴェノの考察や講義が無い訳じゃないけど、センスが得られない状態では魔法の習得は諦めるべきでだろう。

 状況を楽しんでいる訳じゃないけど、俺も生き残る為に魔法の習得は是非ともしておきたい。

 ヴェノの話では俺みたいな特殊な職業でも覚える機会はあるだろうって話だし。


「この陣形に私が加わる場合は……」


 アルリーフさんがブツブツとどうすべきかを呟き始める。

 かなり真面目に俺の手伝いをしようとしてくれているんだなぁ。


「ユキヒサさんとムウちゃんに戦闘中だと魔法で傷の手当てとかを考えていましたけど、二人ともセルフリカバリー能力が高い様です……かと言って攻撃魔法を覚えた場合でも……」

『まあ、少人数での編成という点で言えば、汝とムウである程度どうにかなってしまうのが困りものなのであろうな。この娘の悩みもわからなくもないぞ』

「ここは思い切って私も前衛になってユキヒサさんへ敵が接近しない様に務めるのも手かもしれません」


 妄想の中にあったナイフ使いのアルリーフさんが自己主張を始める。

 バトルモノに登場するアサシンスタイルだ。


「あ、あんまり思い詰めなくても良いからね? 後方で手数で勝負するのも良いんだし」

「凄く悩みますね」

「採取や調合、販売担当でも良いよ?」


 薬師な訳だし、そんな無茶を前提に奉仕させるのも間違いな気もする。


「私が嫌なんです。とは言っても上位職になる為に今の内に上げるのも悪い手では……お母さんみたいに治療師を目指すのも……」

『ちなみに治療師は薬師と僧侶をそれぞれ経験した者が至れる上位職だぞ』


 ヴェノの補足は有り難いけど、アルリーフさんがどう言った立ち位置になれば良いか悩んでいる。


『更に悩ませる方法としては薬師には戦闘能力こそ低めであるがロッドセンスという刃の無い長柄武器の資質があってな、近接も出来なくはない。何よりメディカルセンスの影響で薬物を投擲する後衛も可能なのだ』


 ヴェノの補足をアルリーフさんに説明したら更に悩んでしまいそうだ。

 薬師って割と器用貧乏な職業なのだろうか?


『非戦闘職なので本職には及ばんぞ?』



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