第十二話:KY
久々の更新です。
「マサ男」各話のサブタイトルはいつも漢字二文字にしていたのですが、今回は思いつかなかったのでKYになってしまいました。
一応二文字なので許してください…
では、期待をビンに詰めて海に放り投げた人は、本文へどうぞ。
前にも言ったはずだが、アサコウの球技大会は全競技トーナメント形式で行われる。
バスケ・サッカー・バレー・ソフト。この4競技は、午前中に準決勝までやってしまい、昼食をはさんでから決勝が行われる。
テニスだけは、他の競技の決勝が終わった後に第1試合が開始される。そして決勝は、全校生徒が観戦する中、熱戦が繰り広げられるのが恒例である。
さてさて、俺たちのクラスは第2試合だ。しかも、しょっぱな3年生が相手である。対戦相手はくじ引きで決めるのが、これまた恒例なので仕方がない…
たしか幸のバレーが第4試合、アリスのソフトが第7試合だったはずだ。つまり、俺のバスケが一番最初ってことで…2人が応援に来るってことで……
べ、別にかっこつけるわけじゃないよ!! でも…やっぱり…ねぇ?
ギンジと一緒に体育館に入ると、既に第1試合のクラスの練習が始まっていた。
「いいね〜こうゆう雰囲気! なんか燃えてきた〜!!!」
「はいはい」
俺は久しぶりにギンジと口で会話をした。
苦笑とともにそっけなく相槌を打ったものの、内心俺も結構気分が高揚している。
ついに始まるのかぁ、なんて考えていると後ろから声がした。
「やっほー、エックン! 試合頑張ってね、応援してるから!!」
幸が見惚れるぐらいの笑顔で言ってきた。
「エイタ〜、私のために絶対勝ってやぁ!!!」
アリスも魅力的な笑顔で言った後、ウィンクまでしてきた。
「えっと…栄太さん…頑張ってください!!」
なぜか3人目の声がした。
すると幸とアリスの背後に、顔を真っ赤にしながら真剣な眼差しを俺に向けている紫苑がいた。
「な、なんで紫苑がここに!? 自分の試合は大丈夫なの?」
ビックリした俺は、かなり動揺した声で尋ねた。
クラスが違うため、紫苑の試合情報を俺は知らなかった。
「えっと…私のバレーの試合は第5試合なんで大丈夫です。…すいません、私が応援に来るの嫌でしたか?」
へぇ紫苑はバレーで第5試合か、なんて思っていると、なかなか返事をしてこないことを肯定の意と感じたのか、紫苑が俺たちに背中を向けそそくさと立ち去ろうとしていた。
そんな紫苑を引き留めるために声をかけた。
「いやいや! そんなことないから、大丈夫だから!! むしろ…喜んでるし……」
喜んでるし、ってところは恥ずかしさから小さな声になったが、ちゃんと(?)聞きとってしまったようで、紫苑が詰め寄ってきた。
「本当ですか!?? 私応援してもいいんですね!??」
「お、おう。よろしく頼むよ」
それからしばらく2人で見つめ合っていた俺の顔を誰かが殴った。
それは幸とアリスだった。
「い、いきなり何すんだよ!?」
大丈夫ですか、と紫苑が詰め寄ってきたことで、さらに2人の顔に激怒の色が増した。
「浮気はダメですよ?」
顔は笑顔なのだが、ピクピクと眉毛が吊り上っている幸が言ってきた。
「愛の鞭や、気にせんといて」
アリスにいたっては笑顔でもない。しかし怒った顔でもない。無表情である。その無表情がかなり怖いです…
「す、すいません!!!」
なんかヤバそうな状況なので一応謝った。
そんな中、呑気なギンジの声がした。
「俺を応援してくれる人はいないわけ?」
KY野郎に、今度は俺を含めた3人で声を揃えて殴った。
「「「お前はだまっとれ!!!」」」
「ふぎゃふ〜!!!!!!!」
その様子を不敵な笑みで見ていた紫苑が一番怖いと思ったのは俺だけだろうか………
感想・評価、アドバイスなど随時受け付けています。厳しいお言葉で結構です。
だからと言って「つまんない、つまんない、つまんない」とかはやめてください、かなり傷つきます。(一回だけありました…)
それでは、第十二話を読んでくださった読書の皆様への無上の感謝を、次回まで。