正式加入
第六話。ヒロインが正式に加わります?
森の中の集落――技巧の町ネプトン。狼刀は再びこの町を訪れていた。
出迎えたのは鎌を持った二体の骸骨――死霊騎士。鎌の間合いは広く、二体同時に攻められて、狼刀は防戦一方だ。だが、狼刀は焦ってはいない。チャンスが訪れるであろうことを知っているから。
前回と全く同じ攻防ではなかった。
それでも、チャンスは訪れる。
片方の死霊騎士のが振り下ろした鎌が、地面刺さって抜けなくなったのだ。その一瞬の隙をついて一体を消滅させ、もう一体の背後に回り込む。振り返る暇は与えない。
背中に向けて、竹刀を振り下ろす。
「ほう。死霊騎士を倒せる人間がいるとは驚きましたねェ」
二体の魔物を倒すと、聞き覚えのある声がした。
両手に大きな剣を持った体長二メートルを超える鮫のような魔物――カイザーシャークだ。現れた場所は前回と異なるが、狼刀は気にしなかった。
「魔王軍では、カイザーシャークと呼ばれています。以後お見知りおきを」
カイザーシャークは丁寧に自己紹介をする。
「降伏する気は……ないようですねェ」
降伏を促そうとするカイザーシャークに対し、狼刀は竹刀を構えた。カイザーシャークは狼刀の意思を理解すると、残念そうに首を振る。
「では、倒されてください」
言い終わるより早く、カイザーシャークは狼刀へと突進。狼刀はその攻撃を躱し、カイザーシャークの体へ竹刀を突き刺す。カイザーシャークの体は水になり、水溜まりになった。
狼刀は茂みに向かって――そこにいる人物に声をかける。
「いまだ、ドルフィン!」
「りょーかい」
軽い調子で返事をすると、ドルフィンは旱の杖を天にかざした。背後――厳密にいうなら後ろにあった池から姿を現しつつあったカイザーシャークは、池の水とともに蒸発した。一体も残ることなく三体同時に。同時に、狼刀の前にあった水溜まりも消えた。
「ほう。私の分身たちを倒せる人間がいるとは驚きましたねェ」
狼刀の側方――近くにある民家の中から声がした。ゆっくりと扉が開き、何度も見てきたカイザーシャークが現れる。
ただし、全く同じというわけでない。
体長は三メートルを超えているし、武器は大剣ではなく、大きな三叉槍――トライデントとでもいうべき武器だ。両手で持っていることから、かなりの重量があると思われる。
「魔王軍では、カイザーシャークと呼ばれています。以後お見知りおきを」
本体なのだろうが、名乗りは分身と全く同じだった。
トライデントを構え、刺突を放つ。その姿はまさしく獲物に襲い掛かる鮫であったのだが、旱の影響か、速度は分身よりも遅く、そんな攻撃をよけるのは狼刀にとって造作もないことであった。――竹刀の一撃をその背中に叩き込むことも。
「ぐわぁ……」
短く呻き声をあげカイザーシャークは消滅した。
この町は、ワラフスとは違い住人が一人も居ないということはなかった。見えることろに居なかったのは、全員が地下室へと避難していたからだ。
狼刀は住人から話を聞き、宿屋で眠りについた。
ここで狼刀の聞いた話をまとめると、
技巧の町ネプトン。ここでは、魔王軍の幹部の一体で完全防御の盾を持つ魔物を倒すための研究をしている。
魔王を倒すための研究も行っており、魔王にもっとも警戒されている町とされていた。研究結果は今のところ、絶対攻撃の矛だけだあるということ。それも大きすぎて簡単に持ち運ぶことはできず、実用レベルとは言えない代物だということだ。
絶対攻撃の矛はどこかで役に立つのだろう。と考えて、狼刀は覚えておくことにした。
そして夜が明けた。
狼刀はドルフィンをおいて町を出る。目的地は北の洞窟。この大陸ですることは終わったとの判断だ。
「ちょっと! 待ちなさいよ!」
突然の大声に狼刀が振り返ると、町に置いてきたはずのドルフィンがいた。手には、身体よりも大きな武器を持っている。
狼刀が不思議に思って尋ねると、
「あたしを置いていくとは何様のつもりよ! あたしは天空民の誇りにかけて魔王を倒してみせる! そのあたしを置いていくなんて、許さないわよ!」
ドルフィンは怒気をはらんだ声で応えた。
「は、はい」
狼刀が頷くと、ドルフィンは満足そうな笑みを浮かべた。
てってけてー
天空民の最後の生き残り、ドルフィンが仲間になった。
所持アイテムは、天空民族衣装――見た目は白いワンピース、旱の杖、|カイザーシャークの武器、破魔の指輪。