表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第一章 冒険の始まり
5/132

転機

第四話。ついに流れが変わる。

「ここは……?」

 目を覚ました狼刀(ろうと)が発の第一声は、相も変わらず場所を確認するものだった。

 闇の中に感じる複数の視線。視界は優れないが、狼刀は状況を理解していた。始まりの場所――廃城に、三度(みたび)訪れたのだと。

「よくきた。ゆうしゃよ」

 低く威圧感のある声がした。その姿は見なくてもわかる。二度にわたって倒してきた老魔法使いだ。

「おまえに……」

 狼刀の経験からして、彼を倒すことには苦労しない。廃城内の敵は竹刀で一撃だし、聖水さえ手に入れれば、あくまのきしも簡単に葬れる。

 初期装備は、普段着と愛用の竹刀。これも変わらない。

「おい、きいているのか。ゆうしゃ」

 あ、また忘れてた。目立つ容姿をしているのに、なぜ忘れるのだろうか。

 そう思いながら、狼刀は愛用の竹刀で老魔法使いに攻撃を仕掛ける。

 魔物は、時々何かを呟きながら杖で応戦するが、防ぎきれなかった一撃が――面ではなく胴に――決まった。

 狼刀が掛け声を出すことはなかったが、老魔法使いの体はしっかりと斬り裂かれる。まもなくして、その体が溶けるように、消えた。

「き、貴様!」

「おのれぇ!」

 周囲にいた魔物達が、雄たけびを上げ、狼刀に襲い掛かった。

 狼刀は今までと同じように魔物たちの攻撃をかわし、あるいは受け流し、竹刀で魔物を倒していく。

 最後に残ったのは狼刀一人だけ。

 口角がわずかに上がっているが、狼刀が意識してやっていることではなかった。


 狼刀は城内で回収しなければいけないアイテムを回収。所持アイテムは竹刀、皮の帽子、伝説の聖水、薬草――魔物から入手――と小さなコイン。アイテムの確認を終えると竹刀と聖水はふくろにしまい、城の外に出た。


「貴様。どこから」

 鎧を(まと)い、手には斧と盾。今までと同じように、あくまのきしがそこにいた。狼刀は、セリフの途中であったが、聖水をアンデッド・あくまのきしにふりかける。

「――――」

 声にならない悲鳴をあげ、あくまのきしは消滅した。

 ここまでは問題がない。

 狼刀は負けイベントの町――ネプトンとワラフス――を確認してから、それ以外の町を探した。しかし、ここから見える範囲内には他の町は存在しない。

 最初に行くべき町が、遠くにあるっていうのは珍しいな。

 それだけ思うと、北北東に向けて――他の方向は海だった――狼刀は動き出した。


 狼刀は三番目の町――というよりは、要塞(ようさい)――を訪れていた。入口の前に、岩の巨人がいて中に入ることはできていないが。

 戦うしかないのか。ここもはずれなのか。

 近くには洞窟があるだけで他の町はない。洞窟というのは往々にして次のステージへ行くものだ。つまり、この場所ですることが終わってから行くべきであり、よって今は関係ないと狼刀は判断した。

「シンニュウシャ――ハイジョスル」

 狼刀がそうこう考えているうちに、岩の巨人――便宜上ゴーレムと命名――は狼刀に襲い掛かってくる。狼刀を狙って放たれたゴーレムの拳は、狼刀に(かわ)され地面に当たり、その衝撃で地面が割れた。

 直撃してたら、ひとたまりもなかったな。狼刀はそう思いながら、ゴーレムの後ろに回り込みその背中に竹刀を突き立てた。

「グオォォォォォー」

 叫び声をあげ、ゴーレムは砕け散った。


 町に入った狼刀を出迎えたのは、一人の老人だった。白髪に白い髭、腰がくの字に曲がっていて、杖をついている。

 普通に、ゲームの長老のような老人だった。

「ようこそ、旅の方。あのゴーレムを倒してしまうとはお見事です。是非とも、この町の守護者(しゅごしゃ)になってもらえませんか」

 これまたテンプレ(ありがち)な展開である。

 狼刀が耐えきれなかったかのように、吹き出した。

「な、なにか……」

「いえ、なんでも」

 笑ったせいで不審がらせてしまったらしい。

 狼刀は努めて真面目を顔を浮かべ、深々と頭を下げた。

「申し訳ありませんが、私には魔王討伐という目標があるので、お引き受けすることは出来ません」

 RPGにおける主人公は、魔王討伐のために断るのだ。老人――長老や村長は残念がりながらも、もてなしてくれる。

「そうですか。ではせめて今は、この町でゆっくりしていってください。お礼の品も用意しますゆえ」

 狼刀の予想通りの展開であった。狼刀は雰囲気を壊さないように、笑いをこらえて――まじめな感じで答える。

「心遣い感謝いたします」

 笑いを堪えきれなかったのか、狼刀はしばらく頭を上げなかった。


 その夜。町では宴が開かれた。

 狼刀が聞いた話によると、

 ここ、要塞都市サタナキは魔王軍の進軍から町を守るために、守護兵器(ゴーレム)を造り出した。ゴーレムは期待通りに魔王軍を寄せ付けず、サタナキを守っていた。攻めあぐねた魔王軍は、幹部の一人である天軍師の呪術(じゅじゅつ)によりゴーレムを倒そうとしてきた。その結果、ゴーレムが倒されることはなかったが、魔物も人間も区別なく襲うようになってしまい、サタナキの人たちは困っていた。

 ということらしい。

 ゴーレムにまつわる話を聞き、狼刀は静かにゴーレムの冥福を祈った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ