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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第二章 邪悪な神々
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まさかの展開

第一話。魔王に関して衝撃の真実が明らかに。

 思わず叫んだ狼刀(ろうと)だったが、周りの反応は一切なかった。何も言わないだけではない。訝しむような視線もひとつも感じないのは、少しおかしいのではないだろうか。

 狼刀は不思議に思い周りを見渡し、あることに気が付いた。

 時間が止まってるかのように、誰も動いていない。否、狼刀以外の時間は、本当に止まっているのだろう。集団ドッキリという可能性もあるが、このタイミングでやる必要などまったくない。


「そんな簡単に終わるわけないじゃない」


 真後ろから声がした。

 ドルフィンかと思って振り返る狼刀だが、そこにいたのは純白の天使マナティだ。背景はどこまでも続く白い空間となっており、城の面影はなくなっていた。

 転生の間。そこはそう呼ばれる空間だった。

「いつの間に?」と狼刀が口にするより早く、マナティが「魔王を倒しに行って」と言う。

 狼刀の頭に疑問符が浮かんだ。

「……倒しに行く? この紙に描いてあるのが魔王だろ。これなら、倒したよ」

 狼刀はイラストをマナティに見せながら、説明した。自分が転生した場所のこと。倒した敵のこと。

 マナティはつまらなそうに話を聞いてから、深々と溜息をついた。狼刀にも聞こえるような、わざとらしいため息だ。

「はぁーあ。それは、この場所を支配していた魔王、の絵」

「だから、魔王だろ?」

 マナティは小さく首を横に振った。

「……魔王が一人だなんて、誰が言ったのよ?」

「は……?」

 狼刀の口から、間の抜けた声がでる。

 マナティは気にせずにつづけた。

「というわけで、次の魔王倒しに行って」

 その言葉を言い終わると、マナティの姿は白い空間に溶けていった。純白に塗り潰された世界の中で、狼刀の頭の中にマナティの声が響く。


「次にいくところは、今のお城からさらに西にあるお城。もともとは盛んに交流してたんだけど、互いに敵の侵攻を受けて、今は関所で行き来出来ないようにしてるの、人も魔物も。で、こっち側は救ったわけだから、あっち側も救おうと。そうしたら、大陸全体救えて(ドルフィン)は完全に安全だし。あ、起点は更新するから安心して。それくらいかな、うん。じゃあ、頑張ってね」


 一方的なマナティの説明が終了すると、白かった世界は色を取り戻し始める。

 城だ。だが、サンライト城(さっきまでの)とは違う。マナティの説明にあった、西にある城、だろうか。

 こうして、無双剣士(結城 狼刀)の第二の魔王討伐は始まった。


 ◇


「こぉの城でぇ、一番強えぇやつを出せぇ」

 王の間に殴り込んできた青年は開口一番に言い放った。

「なんじゃ? お主は」

 王が不愉感を隠すことなく、語りかける。

 まあ、知らない男がいきなり入ってきたら不愉快に感じるのは当然の流れだろう。

「俺ァブラスト。まぁ、知るだけ無駄だぁがな」

 青年は獰猛な獣のような笑みを浮かべた。

最強(さぁいきょぉ)を、連れてこい。そいつとぉ俺がぁ勝負してぇ、勝ぁった方がこぉの城をぉ自由に出来るぅ。それでぇどうだぁ?」

「ふむ。良いだろう」

 王は知らなかった。ブラストがここに来るまでに多くの兵士を蹴散らして来たことを。その中に、エース城で最強と言われる近衛兵長がいたことを。

「でぇ、どぉんなぁやつなんだぁ?」

 胡座をかいて、ブラストは座り込んだ。

 彼は知らなかった。自分が蹴散らしてきた雑魚の中に、この城で最強の男がいたことを。彼にとっての強さの基準は、この城とは桁が違っていた。

「敵襲です!」

 遅すぎる報告をした兵士は、ブラストに気づいていないのか、真っ直ぐ王に向かって走っていく。

「敵は邪神教(じゃしんきょう)! 近衛兵長様が応戦しましたが、敗北! 早くお逃げくだっ!」

 兵士はブラストの膝にぶつかって転んだ。

 ブラストの視線が兵士に突き刺さる。

「ひっ……」

 振り返った兵士が息を詰まらせた。

「失ぅせろ」

 ブラストが冷たく言い放つと、兵士は一目散に逃げ出した。王を守らなければ、などと考える余裕はない。大事なのは自分の命なのだ。

「でぇ、どぉんなぁやつなんだぁ?」

「呼んで来ますので、お待ち願えますでしょうか」

減速魔法(ネギア)

 ブラストは錫杖を後ろに向け、魔法を放った。

 今にも王の間から飛び出そうとして兵士が動きが止まる。正しくは止まって見えるほどに遅くなった。

「あぁいつにぃ、連れてぇこさせぇろ」

 王は首が取れそうなくらい激しく首肯した。

 ブラストが満足げに笑うと、兵士が動き出す。話は聞こえていたはずだが、兵士は振り返らない。

「ま、待つのだ!」

 王が慌てたように叫ぶと、兵士はようやく立ち止まった。

「こちらへ来い」

「はっ……」

 兵士はブラストを避けるように大きく部屋の縁を通って王のもとへと来る。ブラストはその様子をつまらなそうに眺めていた。

 ようやく目の前に辿り着いた兵士に王が耳打ちする。

「先程の報告は事実か?」

 兵士のほうも王に合わせるようにして、耳打ちをする。不敬罪と言われてもおかしくないような行為だが、今は気にしている余裕などない。

「事実です。近衛兵長様は敗北しました」

「うむ」

 王は静かに目を伏せる。

 報告を最初に聞いた時は驚きのあまり愕然とした表情を浮かべてしまったが、ブラストに見られなかったことが幸いした。彼はまだ、最強を倒したことに気づいてない。

「誰でも良い。生きてる者を総動員し、強き者を連れてこい」

 王はそう耳打ちすると、兵士の背中を押した。

「わかったな?」

「はっ!」

 兵士はしっかりと返事をし、逃げるようにして王の間を脱出した。それから、ブラストに襲われなかった人や傷の浅い人に声をかけ、捜索を開始した。

 いるかもわからない最強探しを。

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