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無双剣士の異世界魔王討伐  作者: 紫 魔夜
第一章 冒険の始まり
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姫の救出

第十九話。お姫様を救います。

「あれ? もう終わっちゃった感じ?」

 遅れて、ドルフィンが部屋に入ってきた。

「ああ、終わった。次は姫だ」

「なに! 姫の居場所を知っているのでありますか!?」

「ああ、ついて来ればわかる」

 わいわいと話しながら、三人は姫のいる洞窟へと向かった。


 その後。

 天軍師を名乗っていた魔物が倒されたことを知った町の人たちは喜び、宴を開いた。だが、ほとんどの人は、誰が倒したのかを知らない。それでも、倒されたことは事実なのだし、本物の天軍師が生きていたこともあり、気にする人はいなかった。

 そんなことになっていたと狼刀(ろうと)達が知るのも、しばらく経ってからのことだった。


 ◇


 アレスコから南下し、南の大陸へと繋がる洞窟へ。ベリムト達には、魔王軍の幹部が言っていたということで説明が済んでいる。

 ベリムトは内容を半信半疑、ドルフィンは出来事を半信半疑といった様子だったが、今は大人しく狼刀のあとに続いていた。

 ほどなくして、三叉路にたどり着く。

「右よ、右」

 ドルフィンはどっから来ようとも、右へ曲がりたいらしい。

 こちらから来た場合は、左がドラゴンだ。

「左だ」

 狼刀は、右に行きたがるドルフィンを引っ張って、左へと向かった。一度通っているから、正解はわかっているはずなのだが。

「グルルルル……」

 ほどなくして、巨大な石竜子(とかげ)のような見た目で背中には小さな羽を生やした緑色の魔物――ドラゴンが現れた。

「死になさい!」

 ドラゴンを認識するとドルフィンの態度が急変した。勢いよく飛び上がって、三叉槍(トライデント)をドラゴンに突き刺す。

「グルアアアア」

死絶魔法(ラサース)

 死神神官(べリムト)はお得意の死絶魔法を放った。

 ドラゴンはどちらの攻撃にも、怯むことなく雷撃を放ち反撃。ドルフィンは、翼に雷撃を喰らいながらも突き刺さったままのトライデントを抜き、距離をとって着地。ゆっくりと翼を動かして、飛び上がる。

 べリムトは、手を突き出して、防盾魔法(シルカンサ)と呟いた。雷撃はベリムトの手前で弾け、消える。

 しばしにらみ合う三者。その沈黙を破ったのは、狼刀だ。

「ドルフィン。トライデント(それ)を地面に突き刺して離れててくれないか」

 ドルフィンに向けた一言は、前回とほぼ変わらない。

 しかし、ドルフィンは狼刀の一言を無視し、ドラゴンに向かっていった。

「お、おい、ドルフィン」

 狼刀の声が届いていないのか、ドルフィンは振り返る素振りさえ見せない。

 仕方なく、狼刀は次の策を考える。

 ドルフィンは被撃していたが、ベリムトは素手で受け止めていた。魔法か何かではあるのだろう。だが、考えていても魔法の種類はわからない。

 そもそもこの世界にどんな魔法があるかさえ知らないのだ。

 魔法が見えてない(・・・・・)立場で考えて、結論を出すことは不可能だった。

「べリムト。さっきの雷を防いだ力は、他人に対しても使えるのか?」

 狼刀は無駄に考えることをやめて、本人に直接確認する。

「使えるのであります」

「なら、俺が突っ込むから、雷が来たら防いでくれ」

「わかったのであります」

 返事を確認した狼刀は、ドラゴンに向かって走り出した。

 ドラゴンがどんな攻撃を用意してるかはわからないが、雷以外なら(かわ)せる自信が狼刀にはあった。雷はべリムトが防いでくれる。前回の作戦とは違うが、狼刀がドラゴンに向かって突っ込んでいくのは、無謀ではない。

「グルウ」

 ドラゴンは向かってくる狼刀を見つけると、狙いを狼刀へ変更。口を開き、雷撃を放つ構え。しかし、頭の上から振り下ろされたトライデントにより、口が閉ざされた。

 雷撃は口の中で炸裂。口の隙間からプスプスと煙が吹き出している。

 その間に狼刀はドラゴンに肉薄し、最初にトライデントがつけた大きな傷跡に、竹刀をねじ込んだ。

「グ……プスァ……」

 小さな呻き声をあげ、ドラゴンは消滅した。

 ドラゴンが消えたことを確認すると、ドルフィンはトライデントを持ち上げ、狼刀に突きつける。

「あたし、役に立ったでしょ?」

 そう尋ねてくるドルフィンの真意はわからないが、狼刀は素直に感想を述べた。

「ああ。すごく助かったよ。ドルフィン」

 ドルフィンは笑顔になり、トライデントを(おろ)した。

「それでいいのよ」

 狼刀からも、笑みがこぼれる。

「あの、助けてもらってありがとうございます」

 狼刀とドルフィンの空気を壊したのは、ドラゴンに囚われていた姫。黄色いドレスを(まと)っており、赤髪に映える銀の髪飾りが印象的だ。この前の姫と同じで間違いない。

 違っても困るのだが。

「姫様! ご無事で何よりであります! 姫様にもしものことがあっては、このべリムト……」

「べリムト。心配をかけたましたね。さあ、お城へ帰りましょう」

「はい、姫様! どこまでもお供するのであります!」

 そういうと、神官と姫は二人だけの空気を作り出す。残る二人には目もくれずに出口へと向かった。

「俺たちも城に行くか」

「うん」

 狼刀も遅ればせながら王と約束していたことを思い出し、城へ向かって歩き出した。


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