強敵突破
第十八話。ついにあの敵を……。
そして夜が明けた。
ドルフィンが寝ていることを確認し、狼刀はひとりで鍛冶屋に向かった。あとで起きてくるかもしれないが、起こしてまで連れていこうとは思わなかったのだ。
「よ、待ってたぜ。兄ちゃん」
テッチリが完成した杖を掲げる。
「持ってきな。あたしたちの最高傑作さ」
テッカは誇らしげに笑った。前回は寝ていたはずだが、同じような行動をしていても変わることはあるのだろうか。
狼刀は鍛冶屋親子にお礼を言うと、
「この町に平和を取り戻して見せますよ」
そう言い残して、鍛冶屋を後にした。
宿屋でちょうど目覚めたドルフィンと合流し、天軍師のいる屋敷へと向かっていると、予想通りの人物が姿を現した。
「待つであります」
浄衣を着た神官――ベリムトだ。
「あんた何よ」
ドルフィンは軽く飛び、見下ろすようにベリムトに問う。
「僕はべリムト。サンライト城の神官であります」
ビシッと音が聞こえそうなくらい勢いのある敬礼。その動きは、サンライト城で見た兵士と同じだった。
「姫を探してこの町に来たのはいいが、閉じ込められてしまい困っていたのであります」
べリムトは前回とまったく同じことを言う。
「それで? 俺たちは天軍師の屋敷へ向かうが?」
「僕も連れて行って欲しいのであります」
「わかった。一緒に行こう」
狼刀は、予定通り、べリムトを連れていくことにした。ただし、
「天軍師相手に、死絶魔法とかいうのは使うなよ」
一応、釘はさしておく。
てってけてー
サンライト城の死神神官、べリムトが仲間になった。
所持アイテムは聖浄衣《緑》、裁きの杖、制裁の腕輪、清水。
かくして、三人は町で一番大きな屋敷へと向かった。
「行くであります!」
ベリムトが勢いよく屋敷の扉を開けると、大量の虫が襲い掛かってくる。
「死絶魔法」
ベリムトは魔法で撃退。目の前に迫っていた大量の虫がほぼ消滅した。予定通りの展開だ。
狼刀はそれを確認すると、残党を消滅させながら屋敷の中へと入っていった。
べリムトも、巻き込む可能性があっては魔法が放てないのか、慌てて追いかける。
ドルフィンはしばらく動けずにいたが、二人に遅れて屋敷へと入っていった。
目的地は悩むまでもない。廊下の突き当り、美術館のような部屋だ。
「天軍師!」
シルクハットに燕尾服、右手には杖を携えた男――天軍師がそこにいた。
「やあ、ようこそ。二人とも、どうかおかけください」
「その必要は無い」
天軍師の誘いを突っぱねて、狼刀は太陽の手鏡を取り出す。
「……太陽の手鏡ですか」
「どうして、それを!?」
天軍師とべリムトが反応を示すが、狼刀は答えることなく、太陽の手鏡を天軍師へと向けた。
「ぐわ! 何をする!」
天軍師の目の色がわずかに変化する。それから、白々しいセリフと共に、全身が変化を始めた。燕尾服は黒い肌へと、顔面は血の気が失せ、青白く。体が二倍ほどに膨れ上がり、悪魔のような翼と尻尾が皮膚を突き破るように飛び出した。
「ガァァァ!」
右手に持っていた杖は、巨大な棍棒のような武器へと変わっている。
「よくも。よくもォ! やって、くれたな! くたばれ! 勇者ども!」
叫び、悪魔は棍棒を振り上げた。もう、そこに強敵だったころの面影はない。狼刀は攻撃を躱すと、竹刀でその体を真っ二つにした。
「く、ふぅ……」
天軍師が消滅する。
「呆気なかったな」
「……君は一体……?」
ベリムトは狼刀に訝しむような視線を向けた。彼にしてみれば、自分の魔法を知ってた上に、天軍師の弱点をつくアイテムを持っていて、一撃で倒せる実力を持つ人なのだ。
異様な存在に映ったとしても不思議ではない。
肝心の狼刀はそんな視線に気がついていないのだが。




