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自己紹介が終わったので、今日のすることは終わりです。でも、終業のベルが鳴っていないので解散はできません。
この時間で、明日やる予定の係決めをしてしまうクラスもあるそうですが、響先生はそうはしないようです。
「互いのことを大して知らないのに、クラスの係なんて決められないだろうからな。これからの時間は自由だ。隣のクラスに迷惑がかからない程度に話したり騒いだり、好きにしてくれ」
「「「おおーっ!」」」
おお、この先生良い人です。
先生の言葉に、クラスが沸き立ちました。そしてら向かう先は……え? 私?
「さあ、質問タイムだーー!」
「「「おおーっ!!」」」
男子も女子も一箇所に集まり、男子生徒が叫びを上げます。
ええと、彼は確か……杉下巧くん、でしたか。野球部希望だったと思います。
「まずは俺からだ! 春奈さん、真里亞さん、彼氏とかいる?」
ゴクリ。そんな音が男子生徒の間から聞こえます。
な、なんでしょうか、この静かな威圧感は。真里亞さんなんて気圧されて涙目ですよ。
「いませんよ」
「い……いない、です……」
でも私には効きません。お師匠様はの威圧はもっと凄いですからね。さらりと否定を返します。
しかし、真里亞さんでも恋人っていないんですねえ。アレでしょうか、高嶺の花すぎて誰もが手を出せない、みたいな。
私たちが答えた瞬間、男子たちが叫びます。
「ウォォーー! 野郎共、勝鬨だあ!」
「「「ウォォーー!!!」」」
女子は女子でホッとしてます。何なんでしょうか。
「真里亞さんでも恋人っていないんですねえ」
「は、春奈さんこそ」
もじもじしてる真里亞さん、激かわヤバス。何ですかこの可愛い生き物。恋人がいないんでしたら私と付き合ってください。
「では、次の質問だぁ! 二人とも、好きな異性のタイプは!?」
清々しいほどに直球ですねえ。下手に取り繕うよりは好感を持てますよ。
「そ、そんなの、答えられませ」
「一緒にいて楽しい人ですね。巧くんなんてポイント高いです」
「春奈さん!?」
あっさりと答えた私に真里亞さんが慌てています。そして巧くんは何やら絶叫。男子から射殺さんとばかりの視線が突き刺さっています。
そんな状況を作り出した私と言えば、真里亞さんを愛でていました。
「春奈さんと真里亞さんって仲良いよね。知り合いだったの?」
男子の惨状を傍目に話しかけてきたのは、鈴木清香さん。艶やかな黒髪の、和服の似合いそうな大和撫子です。
「いえ、今日が初対面ですよ」
「嘘!? 全然そんな風に見えない」
清香さんの周りの女子も同じように驚いています。
「そこはほら、真里亞さんが可愛いからですよ」
「ふぇえ!?」
「ほら、こういうところです」
「なるほどねー」
「これは可愛いわ〜」
「私も触りたいっ」
「ダーメ、真里亞ちゃんは私のですから」
「ふぇぇえええ!?」
ひし、と真里亞さんを抱え込みます。あ、頭がちょうど胸のあたりにやってきて撫でやすい。素晴らしい抱き心地ですね〜♪
「春奈さん、表情が崩れてるよ」
「でもそんな春奈さんも綺麗〜」
「む。私、レズは受け入れてませんからね!?」
「私もだよっ!」
あはは、と笑い声が漏れます。
みんな、いい人で良かったです。楽しい学校生活になりそうです。
これから一年、よろしくお願いしますね!