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校門をくぐって学校の中へ。
確か、新入生は講堂に集合って言ってましたね。人が集まってる場所があります、あれがそうなのでしょう。
人の流れに乗って中へと入ります。わあ、薄暗い。鈍臭い人は転んでしまいそうです。
私? 大丈夫です、夜目が利きますので。薄暗くてもへっちゃらなのです。
確か、先日送られてきた書類に私のクラスが乗ってましたね。1ーAだったと思います。クラスごとにまとまるので、私の席はこの辺ですかね。
取り敢えず、張り紙に従って席に座ります。
なんと言うか、浮ついた雰囲気がありますねえ。あれです、新しい学校で不安と期待に胸を膨らませウンタラカンタラ。祝辞とかの常套文句ですよね。
けれど実際、その通りだと思うんです。環境が変わるのって期待ありまくりですけど、やっぱり不安もあるんです。私の場合は特に、これまでとは全く違う環境になりますので。
……ちょっと寂しくなってきました。たまには、お師匠様の所にも顔を出してあげますかね。
おっと、先生がやってきたようです。入学式の始まりですね。
『皆さん、ご入学、おめでとうございます』
そんな言葉から始まった校長の挨拶。大人って何で退屈な式が好きなんでしょうか。アメリカみたいに楽しい式にすればいいと思います。卒業式に帽子と制服を放り投げるとかやってみたいです。
長い長い挨拶の後、何度かの起立礼を繰り返し、入学式は終わりました。
退場はクラス順なので、私たちが一番初めです。
『A組、起立!』
担任の先生でしょうか? 若い女性の声に合わせて立ち上がります。
おや、隣の子が眠っていて、気が付いていませんね。起こしてあげましょう。
方を軽く叩いてあげると、その子は目を覚まし、周りの生徒が立っているのに気づいて慌てて立ち上がりました。私の方を見て申し訳なさそうな顔で両手を合わせています。舌がちろりと覗いていますけど。面白そうな子ですね。
軽く手を振って返事の代わりにして、移動です。
遠いです、遠すぎです。私たちのクラス、講堂から見て反対の棟の最上階なんですよ? 四階まで階段を上ると、インドアな私は息がゼイゼイです。ヘロヘロになってしまいました。
「大丈夫?」
制服を引かれ、声を掛けてくれた子がいます。振り返ると、先ほどの居眠り少女でした。
「はい、疲れただけなので気にしなくてもいいですよ」
そう返事をすると、にっこり笑ってくれました。
……すげー可愛いです。
いや、本当に。襲いたくなりそうです。
フワッとした茶色の髪に白い肌。目はくりっとしてして、スッとまっすぐに伸びた鼻筋、ピンク色でぷるんとしている唇。身長は小さいのもあって、コロコロと変わる表情はまるで小動物のように魅力的です。
「私、真里亞といいます。よろしくね」
「こちらこそ♪ 私は菜摘春奈です」
いきなり友達ができてしまいました。幸せすぎて死んでしまいそうです。