プロローグ
プロローグ
急な話だった。
僕は新学期に備えての準備に余念がなかった。昨年度、新任でこの第三小学校に赴任してきた。やんちゃ盛りの三年生の担任になった。今の学年をそのまま持ちあがる予定だった。一年間一緒に過ごしてようやく個々の特徴を掴めたと思った矢先だった。僕は校長室に呼ばれた。
「失礼します。野村です」
「どうだね?教師としてのこの仕事にはもう慣れたかね?」
校長は窓から外を眺めながら話し掛けて来た。
「ええ、今のクラスはそれなりに問題もあるけれど、その分やりがいもあります」
「そうか…。じゃあ、次の学校へ行っても頑張ってくれたまえ」
「えっ?次の学校?」
「私も驚いたんだが、上(教育委員会)のお達しでね。君をどうしても第五小学校へと言うもんでね」
「転任ですか?第五小学校へ?」
「ああ、確か君は第五小学校出身だったね」
こうして僕は新学期を母校である第五小学校で迎えることになった。
新年度になり、僕は赴任先の第五小学校へやって来た。校長から辞令を受け取り、職員室へ向かった。僕と入れ替わりに第三小学校へ赴任した前任者の席が僕の席だった。
自分の母校で教壇に立つことは僕の夢だったとはいえ、まさかこんなに早く赴任してくることになろうとは…。
そして、ここには僕だけしか知らないある事実がある。あの子は今どうしているのだろうか…。