表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集~物語の1ページ~

魔王と勇者が地球に来た。

作者: 一月睦月

『異世界の魔王と勇者が地球で戦い始めた!』


 そんなニュースが穏やかなある日、世界中に駆け巡った。出現した場所は日本の首都『東京』。これにより、世界中は混乱と恐怖、そして好奇心が錯綜した状態となった。


 主に世界中の人たちはショーや見せ物だと思っていた。だが、異世界召喚物語に馴染みがある日本人は恐慌状態になっている。首都圏に住んでいる人たちは地方に避難を始めた。何せ街のど真ん中で魔法バトルが繰り広げられているのを見てしまったからだ。


 今のところ国は魔王と勇者に止めてくれるように頼んでいるが、全く言葉は通じない。ついには街への被害を少なくするため、自衛隊に出動要請が来てしまった。



「魔王! 何をした!?」

 金髪碧眼の勇者が叫んだ。正義感は強そうな優男風の青年である。


「簡単なことさ。空間移動魔法の上位版『異次元移動』をしただけだよ」

 黒髪黒眼の魔王が嘲笑する。顔は少年のような童顔だが、禍々しい雰囲気と人には無いねじれた角を持っていた。


「な……地球に来てどうするつもりなのか!?」

「そう、地球だ。我らの世界ではお前たちが言う数々の英雄たちはこの地球から転生や転移した者たちばかりだ。言わば我らの敵の故郷でもある。お前の父親もこの世界から来たのだろう? 敵地は早めに潰しておくのが戦術というものだ」

「絶対に壊させない!」

「ハッ! ほら、建物が一つ吹き飛んだ」

「止めろ!」

「そうだ。お前のその苦しそうな顔が見たかった」



 戦い初めて数時間。周りの被害は甚大。唯一死傷者が出なかったのは幸いであった。



 今年で御年六十五歳。青森県在住の田中(たなか)仁吉(じんきち)はその様子をテレビで見ていた。ふと思った彼は手に魔力を込め、東京に向けてその魔法を放った。

「あなた! 急に魔王と勇者が消えましたよ!」

 今年で御年六十五歳の田中仁吉は得意魔法は空間移動魔法。勿論『異次元移動』は使える。彼は四十五年前に異世界に召喚された勇者だった。

「争うなら巻き込まないでくださいね」

 彼はポツリと呟いた。


――世界に平穏が訪れた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ