ヒロイン?視点
私には、前世の記憶があるの。
ここは乙女ゲームの世界!
そして私はそんなゲームのヒロインなの♪
いろんなイケメン達に愛されて愛されて愛されるの!
この事実に気がついたのは、小学校入学したてのころ。
今までに読んできた小説のように、高熱を出したときにその記憶もよみがえってきたの。
さっすがヒロインよね!王道だわ!
その事実に気が付いてからは、そりゃあもうレベル上げに勤しんだ。
だって、いざというときにレベルが足りなくて失敗するなんて目も当てられない。
ここは、ゲームじゃなくて現実。
エンドの続きだってあるのだから魅力的な女の子にならなくっちゃね♪
現実だからこそ、ゲームの中でもイチオシだった蒼大さんに私のものになってもらうことにした。
逆ハーも捨てがたいけど、現実で逆ハーは無理だろうことも私はちゃんと分かってるから、狙うは蒼大さん一人よ!
頑張った結果、元々可愛かった顔は、メイクやおしゃれも頑張ったおかげで、すごく可愛くなった。
さすが乙女ゲームのヒロイン!
清純な顔立ちかつ、メリハリのあるナイスボディ。
大好きな甘味を控えて、バランスばっちりの食事をとった甲斐があったわ。
もともとこの体に素質があったのか、スポーツも万能だし、頭もよし!
人間やればできるものよね。
これで蒼大さんは私のもの!
蒼大さんは、顔は極上、スポーツ万能で、大きな財閥の跡取り。勿論頭もきれるし、恋人にはとってもあまあまなの。
頑張っておとす価値はあるわよね!
実は蒼大さんにはライバルキャラもいるんだけど、全然大したことないのよね。
求められるレベルが高いのは大変だけど、自分のレベルさえあげておけば、ライバルキャラには簡単に勝利できちゃうの。
レベルが高いほど、蒼大さんの好感度もあがりやすいから、今の私ならすぐにクリアできちゃうわ♪
ライバルキャラは、見た目は悔しいけど結構可愛いの。
でも本当に何にもできない女の子なの。
はっきり言ってバカで、勉強は全くできない。
運動も全くできなくて、何にもないようなところでも転ぶの!あざといわよね!
性格も天然といえば聞こえはいいけど実際にそんな女がいたらうざいわよ?空気は読めないし、無意識に人の勘に障る行動をとるし!
なんで蒼大さんと付き合っているかというと、幼なじみだから!
頼りない幼なじみを蒼大さんは放っておけなかったの。
幼なじみとしての情もあるし、蒼大さんはそれを愛情と勘違いしていたのよ。
でもでもっ!そこに現れたヒロイン!つまり私と出会って蒼大さんは本物の愛を知るのよ!
あ~楽しみ♪
蒼大さんと出会って、私は順調にイベントをこなしていった。
選択肢もバッチリよ。
なのに、なにかおかしい気がする。
イベントはちゃんとこなしているのに、イベントが終わっても蒼大さんとの距離が縮まらない気がするの。
もう笑顔を見せてくれたり、蒼大さんから近づいて来てくれたりする時期のはずなのに…?
ゲームと違って好感度を数値で見ることは出来ないから、どうなっているのかもよく分からなかった。
でも、前のイベントが成功しないと起こらないはずのイベントたちもちゃんと起こったから、少し安心した。
蒼大さんは恥ずかしがりやだからあまり面に出さないだけで、きっと私のことを好きになっていっているはずだって。
なのになのになのに…全イベントを網羅して、好感度が最大になっているはずなのに…何故か最後の告白イベントだけが起こらなかったのだ。
花が咲き乱れるイングリッシュガーデンの前で、普段は温厚な蒼大さんから、情熱的に愛を告げられ、その告白を受け入れたら、長いキスをされて、幸せな日々が始まるはずなのに…。
なんで!?
…不思議に思っていた私は蒼大さんを探してみた。
…もしかしたら私を見つけられないのかもしれない。
やっと見つけた蒼大さんは、幼なじみの女の子の荷物持ちをさせられていた。
…ああ…あの女が邪魔しているから蒼大さんは私のところにこれなかったんだ!
可哀想な蒼大さん。
そうだよね。優しい蒼大さんだったら、自分から言いづらいよね。
大丈夫。私がちゃんと伝えてわかってもらうから!
「ねえ、ちょっと話があるのだけど…。」