剣と盾
本人は詩のように意識していませんがそれに似たような文面になってました。読みにくかったらすみません…。
私は剣を持っている。どんな盾をも破壊する鋭い剣を。
私は盾を持っている。どんな剣からも私を守る強固な盾を。
この二つを持っている限り私は負けない。どんな盾をも破壊し無傷で勝利を得る。
そして周囲の人々は私の元に集う。そして私はより強固な盾を得る。
私は自らが王のように思えた、軍を率いて他国を侵略する暴君のようだと。周囲の状況も私にそう思わせるのに十分だった。
日が経つごとに私の国は大きくなっていく。盾はより強固に、剣もより鋭く。もうすぐ世界を支配できる、そう思っていた。
しかし…。
いくら時代が変わろうと絶対的な君主がいようと反旗は翻る。
そして私の盾に初めて亀裂が生じた。
ある日、国に遠方の地から1人の女が移住してきた。
国に移住して来た者は初めてだったので皆その者に興味津々だった。しかしその者は誰に話し掛けられても誰とも話そうとしなかった。
それを見兼ねて私が直々に話し掛けたのだが同じく無言だった。
私はその後も何度か話し掛けてみたのだが何度話し掛けようとも何の反応も返してこなかった。
日を重ねるごとに私はその者に対して苛立ちを感じていった。
この国の王である私を無視し続けるとはどういうことだ。どんな馬鹿でも場を読み返事ぐらいはするだろう。
私という絶対的な存在を理解できないとでも言うのか。
周囲も飛び火を避けるように女と私に対して距離を置くようにしていた。
苛立ちを日々募らせながらも私は耐えていた。孤独に耐え兼ねていずれあちらから謝罪してくるに違いない、そう思っていた。その時に奴の盾を一度壊してやろう、と。
しかしいくら待っても女は私はおろか誰1人とも話そうとはしなかった。
そして耐え兼ねた私はついに女に対して剣を向けた。
周りは巻き添えを恐れ逃げるように距離を置いた。
そしてそれを見た血の気の多い他の者も女に対して剣を向けた。数の上では圧倒的だった。その時私は勝利を確信していた。
―――だが、
私はおろか誰の剣でも女を貫くことはできなかった。
何故だ?私は、最強の剣を持っているはずなのに…。
剣が効かない、それだけではなかった。
今度は次々に盾を破壊していったのだ。
その光景には容赦というものが感じられなかった。
このままでは私もやられてしまう。盾を!誰か私の盾を早く!
誰も応えない。女に盾を破壊された者、この場の光景に逃げ出す者達ばかりで誰も私の声を聞かない、いや聞けないのだろう。
私は自分の盾を必死に探した。このままでは私もあの女に…。
「教えてあげましょうか?」
後ろから女の声が聞こえた。澄んだ綺麗な声だったがそれが私にはひどく恐ろしく聞こえた。
盾を、私の盾をどこにやった!
「あなたは初めから盾なんて持ってない」
え…?何、だと…。
「あなたが盾だと思っていたものは周囲の人達。決してあなたの盾なんかじゃなかったのよ」
嘘だ…、私は初めから剣と盾を持っていた…。どんな剣からも身を守る盾とどんな盾でも破壊する最強の剣と盾を…。
「そうやってあなたは周りを盾にしてきた。あなたは他人を傷付けて自らはその他人から身を守ってもらっていたのよ」
違う!私は私の強さで、
「くだらない、とんだ腑抜けた王様ね。…もう私に構わないで。王様ごっこは他でやって」
それだけ言うと女は最後に冷めた視線で見つめ、立ち去っっていった。
―――私は初めて敗北を知り、全てを失った。
一度の敗北が私をここま貶めるとは思ってもみなかった。私が負けたと知った者達は手の平を反したように私のことを蔑むのだった。
今まで築き上げて来た国は簡単に崩れていくのだなと呆気にとられた。
皆にとって私は何だったのだろう。私にとって皆は何だったのだろう。
考えても考えても私は答えが見つけられない。考える時間ばかりが過ぎていく。
…もう私はここにいるべきではないな。私にこの場所は…辛過ぎる。周りもいつまでも私に居られては嫌だろうしな。
そう決心した私は簡単な身支度をして帰ろうとした。
…でももう一度ぐらいあの場所によろうかな…。と、少し心が揺らぐ。
もう来ることがないのならせめて最後にあの場所にもう一度。
自然と足は帰る方向とは違う方向に向かっていた。すでに心はあの場所の情景を描いている。
この世界で最も空を近くで感じられる場所。私のお気に入りの場所だった。
その場所に付くとどうやら先客がいるようだった。誰かが先にいるのなら私は帰った方がいいだろう。今は誰にも会いたくはないし、あちらの方も私に会いたくはないだろうから。
少し後ろ髪を引かれる思いだったが私は大人しく帰ろうとした。
「ちょっと待って」
後ろから声がした。どうやら私に気付いたらしい。振り返るべきか迷っている私に対して声の主は、
「私は気にしないから入って来ていいわよ。元王様」
私だと分かっていながらなぜ呼ぶのだろうと疑問に思いながら私は振り返り歩を進める。
そこにいたのはあの女だった。
「こんにちは、元王様。元気にしてた?」
毎日顔を合わせていただろう、元気かどうかなどわざわざ聞くことでも…。
「顔色伺っただけじゃ元気かどうかなんて分からないわよ。それにあなたいつも顔伏せてるし」
私の顔など見えない方が皆気楽だと思ってな。私も…あまり顔を合わせたくない。
「それは残念。私はあなたともっと話をしたいのだけど」
話?今更話す事なんて何もないだろう。それに私は今日で国を出ていくのだから。
「それじゃあ今日限りって事?なら今日会えて本当に良かった」
だから私は話す事などないと…。
「私と友達になってくれません?」
…何だと?私と友達に?
「えぇ、あなたと。きっと素晴らしい関係になれると思うんですよ」
と満面の笑みを浮かべた。
こんな笑顔を見たことがなかった。
今まで女はどんな時でも無表情でそして冷めた印象が強かった。
今はそれが嘘のように感じられた。
私はこの変化に戸惑いを隠せずにいた。
そんな私に女は手を差し出してきた。
握手、のつもりなのだろうか。
私はその手をずっと見つめることしかできなかった。
夕日を背にして手を差し伸べる女は私が見てきたどんな女性よりも美しかった。
読んでいて読みにくいと思った方…たぶんあなたの考えは正しいです。私も読んでてさっぱりわかりませんから。
一応補足しますと『剣』を『言葉』(ここでは誹謗・中傷のような言葉の暴力の意)に、『盾』を『心』または『人』(集団でいることの安心感?のような意)に。そして『国』を学校のクラス、と変換すると…学園もののような話に!(…なったかな)
そのあたり意識して読んでもらえれば多少はマシになるはずです、…恐らく。