物売り少女
ある所に『彫刻が得意な少女』がいた。その腕前は木彫りの鶏を動かせる程ではあったが、作った物が売れなく、いつも困窮していた。その為、少女は家財を売り払いながら生活していた。その光景を見た街の人々は、彼女を『物売り少女』と呼んだ。
ある冬の日、彼女が氷を売っていると、一人の少女と一頭の白虎がやってきた。物売りの少女は二人に声をかけた。
「氷はいりませんか」
「いらないわ」
と、少女は言った。
物売りの少女は諦めずに商いを続けた。
「この氷はとても冷たくて、体を冷やすことも出来ますよ」
「必要ないわ」
と、少女は言った。
物売りの少女はそれでも諦めずに商いを続けた。
「とても美しい氷の彫刻もありますよ」
「それでも、私達に必要のない物には変わりはないわ」
と、少女は言った。
このままでは食べる物も買えないと思い、物売りの少女は、
「この氷を持っていればどんな願いでも叶いますよ」
と出任せを言った。
「なら他人に売らずにあなたが持っていればいい」
と言うと、少女はさっさと歩いていった。白虎も後に続いた。
ひらひらと雪が舞い散る寒空の下、物売りの少女は寒さに堪えながら氷を売り続けた。しかし、道行く人は皆慌ただしく、彼女を相手にする人は誰もいなかった。
その後、彼女がどうなったかは、それはまた別の物語。




