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何も無い一日
ある所に『不毛な地』があった。そこでは植物が育つことはなく、『無用な土地』と呼ばれ、敬遠されていた。そんな地に一人、立つ者がいた。少女である。見回りから戻ってきた白虎はその姿を眺め、こう尋ねた。
「…何してるんだよ」
「何もしてないわ」
と、少女は答えた。
「何かしろよ!」
「なぜ」
「なぜって言われても…」
「何もしないことが私には寛ぎなのよ」
「そうですか……」
と、疲弊して白虎は言った。
「それはさておき、一通り見て回ったが誰も居なかったぞ」
「そう」
辺りを見渡し、白虎は言った。
「しかし本当に何も無い所だな」
「あら、あるわよ。立つのに必要なこの大地と、存在するために必要な『無』という空間が」
と、虚空を眺め少女は言った。




