魚を待つ鳥
ある所に『努力家な鳥』がいた。その鳥は決意したことを必ず断行していたので、周りから『頑固鳥』などと呼ばれ、揶揄されていた。
ある時、頑固鳥が道を歩いていると、魚が落ちていた。それを見つけた頑固鳥は道に印をつけ、魚をぱくりと食べてしまった。そして、
「ここに巣をつくればまた魚を手に入れることが出来るだろう」
と言い、頑固鳥は印の近くに生えていた一本の木に巣を作った。
「よし、これで後は待つだけだ」
頑固鳥が連日魚の出現を待っていると、一人の少女と一頭の白虎が頑固鳥の前にやってきた。少女は尋ねた。
「何をしているの」
「魚が降るのを待っているのです」
「へえ、ここでは魚が降るのか」
と、驚嘆して白虎は言った。
「見たことはないのですが、そういう噂があります」
「…ただのほら話じゃないのか」
と、落胆して白虎は言った。
「いえ、大勢の人が同じことを言っていますし、実際ここに魚が落ちていました」
と言うと、頑固鳥は印を指さした。白虎はその印を一瞥するとこう聞いた。
「それで、いつになったら降るんだ」
「分かりません。九日間は待っていますが、まだ降っていません」
白虎は呆れて言った。
「…それなら川にでも行って魚を捕ったほうが早いだろうが」
頑固鳥は真剣な顔付きで堂々とこう言った。
「それでも一度待つと決めた以上、途中で止めるわけにはいきません。それが僕の信念ですから!」
「そう、なら私達はもう行くわ」
と言うと、少女はさっさと歩いていった。「あ、おい」と言いながら白虎も続いた。頑固鳥は二人を見送り、大声で、
「いい旅を!」
と告げた。
少女に追いつくと、白虎は少女にこう尋ねた。
「いいのか?あのままだとあいつ死ぬぞ」
「あの人がそれを望むなら、私はそれを尊重するわ」
「まあ俺はどっちでもいいけどな。誰が死のうが生きようが、世界が成り立つことには変わりないからな」
空を眺め、少女は言った。
「魚、降るかしら」
「さあな」