第五話 マジョラン家
近頃、アリスを子供として見られなくなってきた。そりゃもちろん、アリスは可愛い娘だと思っている。しかし、あの子の成長ぶりは凄く、今では大人の女性のような一面も見せるようになった。もうあの子は16歳。美しく成長してしまったあの子にどう接したらいいものやら。
この気持ちを世間ではなんと言うか、それぐらいは知っている。だてに長生きしていない。しかし、本当の親のように、兄のように、無邪気に完全な信頼を寄せてくるアリスの気持ちを踏みにじることはできない。それに、あの子の時間と俺の時間は相容れないものだから、あの子をこんな俺が縛りつけてしまうべきではないから。だから、今はこの気持ちに名前はつけない。
森の外……
“歴史的に古いこの地域は国でも、首都に次いで2番目の広さを誇る。そして、この地を代々治めているのがマジョラン家の一族である。温厚な者が多く、住民の要望や相談、提案にも耳を貸し、住民から厚い信頼を得ている。その様子は度を過ぎたものでは、最早信仰に近い。
そんな彼らが唯一嫌い迫害している者たちがいる。その者たちは様々な能力を持っている者、身体の一部または全体がふつうの人とは異なる者の2つにだいたい分けられ、異端と呼ばれる。初代マジョラン当主が異端に殺され、それ以来マジョラン家の一族は異端を嫌悪している。住民は異端をマジョラン家の敵と見なし、徹底的に差別するようになったのだった。――――とある魔術師の手記より”