表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/26

第二十話 猫

 アタシは生まれた頃からの記憶がある。むしろ、何度も生まれ変わった記憶がある。姿を変える者、それがアタシ。ギルディが爪と牙を持つ者だということは分かっていたし、憎きマジョラン家当主が主を裏切った声で魅了する者だということも分かっていた。

 簡単に言えば、もう疲れたんだ。何度も生まれ直し、主が現れるのを待った。その度にマジョラン家、奴に殺された。

 奴は死んではどこかの赤ん坊に乗移り、その赤ん坊の家族を言霊で洗脳してその子のことを忘れさせた。町の人にはマジョラン家の子として紹介させた。それを繰り返して生き長らえていた。奴は家族というものが嫌いらしい。だから誰とも結婚しなかった。つまり、マジョラン家など存在しなかった。

 今回は前回までとは違う。奴は、完全体の奴、ではなかった。さらに、奴は結婚していた。極めつけは、リージンからも奴の気配を感じた。何がどうなってるんだ。

 とにかく、アタシは諦めることにした。主はもう現れないのだ。今回生きた中で唯一、アタシを癒してくれたアリスもいなくなってしまった。無惨な姿で何者かに殺された。もう良いじゃない、終わらせよう。奴は主を裏切ったけど、主もアタシらを裏切ったんだ。

「リージン、全部終わらせよう」

「あぁ。もう、失うものはない」

マジョラン家当主とリージンが戦うということは、奴の魂同士が戦うということ。何が起こるか分からないけど、とんでもないことになる予感。でも、どうでもいいや。


 辺りは火の海。アタシを包む全てが赤い。この辺りのヒトは倒してしまった。まだ死んでないのがほとんどだと思う。どうしても、加減してしまった。

他所では戦いは続いているらしい。

 何かが吼えた。たぶん、リージン。空に飛び上がる。ドラゴンになれば、一蹴りで高く上れる。リージンが怪物化していた。一度見ているから驚かない。でも、マジョラン家当主も厄介なことをしている。マジョラン一族に心酔するヒトたちを、怪物化させている。化け物の集団。本物の異端とは似ても似つかない。マジョラン家当主を守るように、リージンを囲い、次々と襲いかかっている。止まらない戦い。他の異端たちも化け物になったヒトと戦っている。辺りは火の海。地獄絵図。

「うわっ」

何かが、化け物がアタシの足を掴んだ。考え事をしているうちに高度が下がっていたのか。次から次へアタシに飛び付いてくる化け物。アタシを引きずり落とすつもりか。抗っていたけど、もう無理だ。アタシの背中を覆うように無数の化け物が乗っている。それら全てが爪を立てたり切りつけてきたり噛みついてきたり、たまったもんじゃない。地面に落とされたアタシに群がる化け物。怖いよ、本当は死にたくなかったんだ。今までも、今も、死にたくなかったんだ。何度も死ぬ瞬間に主を呼んだ。でも主は来なかった。今回だって来てくれないんでしょ。何で、希望を持たせるようなことを言ったんだよ、主。


「あれ、何……」

意識が朦朧としてきた時、化け物の隙間から空が見えた。何かが飛んでいた。

 何度も待って裏切られた。今回もそうだと思った。涙が視界を遮る。その姿、久し振りの気配。もっとちゃんと見ていたいのに、よく見えない。

「待たせて、すまない」

「貴女をずっと待っていたんだ」

我が主。

今更な登場人物紹介

リージン

森の主。

アリスの育ての親で思い人。アリス大好き人間。

若干話し方が軽い。どこか普通じゃない。

兄弟がいる。本名 リージン・クロスロード。

注:アリスが好きだが、決してロリコンではない。


アリス

リージンが拾った子。

家事なら何でもこなす良い子。

リージン大好きっ子だけど、ツンデレ気味。

森の住人に好かれている。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ