第十八話 少女と主と四枚の翼
久しぶりに目を覚ました気がしますね。
「あれ?」
私は森の家の自分のベッドで横たわっていました。私のまわりは綺麗に整えられ、花や綺麗な石、森の市場で売っているらしい綺麗な布やリボンでいっぱいです。何でしょうか。まるでお葬式のようです。失礼な。
あ、でも、私、何かに襲われたんでした。もしかすると、死んだと思われたのかもしれません。
「リージンさんはどこでしょうか」
それに、森の方もいつもより静かです。ベッドの上の物を落とさないように、起き上がりました。背中に違和感。見ると、びっくり。大きな灰色の翼、しかも四枚。
『仕方あるまい。本来お前が持っているものが再生した上、我がお前の中にいるのだからな』
頭の中に灰色の人の声が聞こえます。とうとう私は人間を辞めてしまったようです。どうしましょう。
『待て待て。我もお前もまだ人間だ。というか、灰色の人とは何だ。失礼な奴だ』
あら、考えていることが分かってしまうのですか。面倒くさいですね。灰色の人と言う以外何があるんですか。人という字が入っているだけましじゃないですか。面倒くさいですね。
『何度も面倒くさい言うな。ジルバラと呼べ。昔我が使っていた名だ。今では"始まりの異端"とか呼ばれているようだがな』
分かりました。じゃあそう呼ばせていただきます。
さて、とにかく外に出てみましょう。
無数の足跡。誰のものか確かではないけれど、森のみんなのものだと思います。ずっと向こうまで続いているようです。
『時が来たのか。アリス、急いだ方が良い』
「どういうことですか」
『異端とヒトの戦いが起きる。急げ! このままでは全てが命を落とす!』
気づけば私は飛んでいました。そのまま足跡を辿ると森の出口の方へ向かっていることが分かりました。
「結界が……」
出口には結界の残骸と踏み荒らされた跡。今まで森を覆っていた結界が跡形もなく壊されていました。リージンさんは、あの結界は俺でも近づけないほど強力だ、と言っていました。結界が前のままあったなら、森のみんなは近づけなかったはずなのです。思い当たる節は……、ありました。そういえば、さっき母に会ったのでした。母は変わり果てていましたが、私の憐れな愛しい母のままでした。そうですか、母が外から入ってきてしまったからなのですね。
「今はとりあえず、リージンさんたちを追いましょう」
大好きなみんなを守るために。